皆さんは「障害者雇用制度」をご存じですか?これは障害者手帳や療育手帳を持った障害者が一般企業で配慮を受けながら働く、という制度です。私も事業所に入る前には障害者雇用制度を利用してアパレル会社で働いていました。その体験も交え、障害者雇用とはどういったものか解説したいと思います。
■障害者雇用制度とは?
障害者雇用制度とは、簡単に言うと「障害のある人が障害のない人と同じように、それぞれの特性と能力に応じた働き方ができるように一定の割合で事業主や自治体などが障害のある人を雇用する」という制度です。
障害者雇用制度には「法定雇用率」というものが定められており、従業員の数等に合わせて障害者を雇う割合が定められています。
「法定雇用率」とは、すべての事業主に対して「一定の数の障害のある人を雇用する」ことを義務付けたものです。
平成30年4月1日から、民間企業では障害者法定雇用率が2.2%国・地方公共団体等の雇用率が2.5%、都道府県等の教育委員会の雇用率が2.4%となりました。
対象となる障害としては身体障害・知的障害に合わせて精神障害者(精神保健福祉手帳をもっている方)も加えられています。
また、この平成30年の改正に伴って、障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が、常時雇用者50人から45.5人に変更が行われました。
障害者の雇用率未達成の企業には、不足した従業員数に応じた障害者雇用納付金の納付義務(障害者雇用納付金制度)があったり、ハローワークからの直接指導が行われることがあります。
それでは、障害のある人が障害者雇用制度を使って働くには、どうしたらいいのでしょうか。
■障害者雇用を利用するためには
障害者雇用を使って働くには、原則手帳を持っていることが必要です。手帳とは、「身体障害者手帳」、「療育手帳」(自治体によっては呼び名が異なる場合があります)、「精神障害者保健福祉手帳」の3つのことを指します。
それぞれ申請方法や申請先は異なってきます。身体障害者手帳では、「疾病によって障害が永続し、生活動作が不自由であること」が証明されていることが取得条件となります。指定医に診断書をもらい、各都道府県に申請することで交付されます。
次に療育手帳については、「知的障害あり」と認定されることが取得条件です。知的障害の判定は知的障害者更生相談所または児童相談所で行われ、判定後は都道府県知事または指定都市長に申請して取得します。
精神保健福祉手帳については、精神疾患及び発達障害がある方が取得できる手帳です。申請先は都道府県知事または指定都市長となります。
手帳を取得した後、障害者雇用を利用したいなぁと思ったら、まずはハローワークの障害者窓口を訪れてみましょう。
そこには障害について専門知識を持った担当者がいるので、そこで自分はどんな仕事がしたのか、どんな求人があるかなどを相談できます。
また、「長時間勤務は無理だなぁ」や「〇〇という特性があるからこういう仕事がしたいなぁ」などといった障害の特性や悩みなどに合わせた求人を紹介してもらうこともできます。
そして、実際に障害者雇用制度を使って働く場合、「合理的配慮」がなされます。合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と一緒に働く場合に、より働きやすくする調整や変更のことを言います。
例えば、
・肢体不自由で移動が困難な人のためにスロープや手すりを設置する
・複雑な指示の理解が難しい人のためにイラストやメモを活用する
・疲労、緊張が大きい方のために休憩スペースを設けたり勤務時間を調整する
などです。
障害がある人でも「一般企業で働きたい!」という方はたくさんいらっしゃいます。そういったひとのための調整や変更が「合理的配慮」なのです。
次章では、筆者が障害者雇用制度を使ってアパレル会社で働いていた時の体験を綴ってみようと思います。
■障害者雇用体験記~アパレル会社編~
私はA型事業所に務める前は、アパレル会社で働いていました。ハローワークで紹介を受け、約3年間お世話になりました。
その会社はスタッフさんの雰囲気も良く、アットホームでとても働きやすい環境でした。もちろん障害者枠で入社したので、私が統合失調症であることは皆さん知っていました。
しかし偏見などは全くなく、私が働きやすいように店長などが様々な配慮をしてくださいました。
例えば、
・お客さんが並ぶとパニックになるかもしれないため、レジには入らなくて良い
・感情が昂って頭がパンパンになってきたらバックヤードで休憩してもいい
・口頭指示が苦手なため、メモを取り理解するまで説明をしてくれる
・診察日の遅刻・早退は認める
などです。
私がやっていた仕事内容はというと、
・服のハンガーかけ
・服をたたんで段ボールに片づける
・値下げシール作成、貼り付け作業
・服や靴の品出し、整理整頓
・値下げ、値上げ伝票の記入
・マネキンの服装のコーディネート
などでした。特にこれといって難しいものはなく、わからないときは近くにいる同僚に聞いたり、上司に聞くことでことでミスのないよう努めました。
また、聞いたことはしっかりメモを取り、忘れないようにもしておきました。このような対策もしましたが、最初のころは緊張してしまいお客さんに対して「いらっしゃいませ」も言えませんでした。
しかし、次第に周りの方々の協力もあり仕事を楽しめるようにまでなりました。お客さんともやり取りすることができるようになり、コミュニケーション能力も培いました。この会社ではたくさんのことを勉強させていただいたなぁと感謝しています。
自分が障害者でも、健常者の人と一緒の仕事ができるというのは大きな喜びでした。同僚も「障害者だから」といって腫れ物に触るような態度をとることもなく、「ごく普通に」接してくれたのもとても嬉しかったです。
私はそういう偏見のないお店に出逢って幸運だったのかもしれません。しかし、私の働いていた頃と比べれば今はさらに障害に対する理解も深まっていると思います。
「一般企業で働きたい!」と少しでも思っている方は、まず自分の障害特性を理解したうえで職選びをし、また働ける時間や環境などもしっかり考慮してから自分に合った仕事を探してみてください。
■障害者雇用についてまとめ
今回は、「障害者雇用制度」について触れてみました。私の記事や体験記を見ていただいて、少しでもチャレンジしてみたいと思われる方が増えれば幸いです。
もし「一般企業は難しそうだなぁ。。。」と思われる方は、
・就労移行支援事業
・就労継続支援A型事業所
・就労継続支援B型事業所
などの「福祉的就労」を視野に入れてみるのもいい手かもしれません。こちらについては他のコラムでも紹介させていただいているため、詳しくは割愛させていてだきます。「福祉的就労」について知りたい方はそちらもご覧頂けると幸いです。
皆さんが「自分に合った」働き方を見つけられ、輝いていけることを願います。
こちらのコラムでは、障害者がハローワークで受けられる支援を紹介しております♪⇩
著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。