自閉症スペクトラム第2章~どう支える?幼少期から青年期まで~

発達障害

自閉症スペクトラム(ASD)第1章では、その特徴的なこだわりや、コミュニケーションの取り方など症状について主に掲載しました。

今回は自閉症スペクトラム(以下ASD)第1章に続き、ASDがある人が〝生きやすく〟なるための、自律スキルやソーシャルスキル、療育などの対策についてまとめました!

視覚化(見える化)で身に付けよう!自律スキルとソーシャル・スキル

ASDがある人が身に付けておくと将来役立つスキルがあります。それは、「自律スキル」と「ソーシャル・スキル」です。

「自律スキル」というのはASDがある人が〝自分が得意なこと・苦手なこと〟を自覚し、得意な事をさらに伸ばしていく力を言います。

そして、自分が苦手でできない事ははっきり「できない」と言えるようになる事も大切です。

それができる事で、周囲にできない事を手伝ってもらったり、アドバイスをもらう事ができます。

そして、できる事はどんどん伸ばしていく事によって、「自分でもできた!」という成功体験を沢山積み、自己肯定感を上げていくのも自律スキルに入ります。

そして「ソーシャル・スキル」とは、社会で生活を送っていく上での最低限のマナーやルールを身につける、という力の事です。

例えば会社や学校のルールを守ったり、自分の分からない事や困った事に対しては他人に聞く力が必要です。

また、「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」を身に付ける事も大事です。「一人でできる」事も大切ですが、「他人に相談できる」「必要最低限の事は連絡、報告する」スキル、つまり〝社会性〟をに付けていくのが大切なのです

この能力を活用することによって、自分一人ではできなかったことが、他の人と一緒に取り組む事によってできるようになる事もあります。

そういった体験をし、「他の人との協同作業によって、協調性を養う」事もASDがある人が成長していく為には必要だと思います。

療育って何?どんなことをするの?

さらに、「療育(治療教育)」を受ける事もASDがある子の成長にとっては必要です。

療育とは?」というと、

〝すべての障害がある子どもたちに発達を促し、自立して生活できるように支援する事〟です。

その子の特性に合ったプログラムに取り組むことにより、できることを増やしていきます。

療育のプログラムにはどんな種類のものがあるかというのを2つ紹介したいと思います。

まずは「TEACHH(ティーチ)

これは、自閉症のコミュニケーション障害がある子どもやその家族に対する療法です。自閉症の子一人ひとりの個性を認め、受け入れていく事により、それぞれの得意な所・優れた部分を更に発揮できるよう導いていく事をいいます。

例えばこの療法では、

「パーテーションや仕切りを置いて、集中しやすい環境を整える」

「何をするかを写真や図、絵を使って表す」

等の構造化(「今、何が起きているか」「次に何が起きるか」「自分は何をすればいいか」を明確にする事)が大きな特徴です。自閉症の子どもは耳で聞く情報よりも、目で見る情報の方が理解しやすい特徴を持つ為、絵や図、または写真を使用します。

次に「認知行動療法

これは、認知(ものの考え方、感じ方)に働きかける事や、行動を変えていく療法です。認知の歪みを修したり、気持ちを楽にする事や、トレス耐性を強くしていく事を目標としています。

これまでに紹介した療法等で社会性を養うとともに、学校や家庭でのルールを「見える化」することによって、それを守れるように教えていく事が大切です。

ASDがある人は耳で聞く情報より目で見てわかる、具体的な情報であればより理解しやすいと言えます。

もしルールの変更等がある場合は、急に変更するとパニックになったりする為事前に余裕をもって伝えておきましょう。

ASDの「特性」は「個性」~周囲がしてあげられること~

「ASDである」という事が早く分かれば、その特性を親等が早いうちからより深く理解できるというメリットがあります。

しかしASDは乳児期に見逃されることもあり、成長してから診断が下り、親がショックを受けてしまうという場合もあります。

しかし、ASDだったからといってマイナスにとらえてばかりでは、その子のプラスの面を見逃してしまう可能性だってあります。

ASDがある子は苦手な事を克服しようとしても、時間がかかってしまう場合もありますが、それを「その子なりのペース」として見てあげる事が出来れば、温かく見守ってあげる事もできると思います。

また、幼児期から成人期を通して、親等の身近な人が特性を理解している事は、親は私の事をわかってくれている」という安心感に繋がります。

特性を理解している親から教師へ、また就職する際は会社の上司へとASDの特性を詳しく説明することによって、周囲の理解が進み、本人にとって過ごしやすい環境が整います。

就職はどうする?~自分の特性・個性を活かそう~


職場を選ぶ際は、自分のASDの特性をきちんと説明し、同僚や上司となる人の理解を得る事が必要です。自分で説明するのが難しければ、今まで自分の周りにいてくれた人(親や教師等)に力を借りるのもいいでしょう。

特性を理解してくれる職場であれば、特性を活かした仕事を回してもらったり、何かトラブルが起きた時に助けてもらいやすいというメリットがあるからです。

また、「こだわり」を活かせる仕事を探すのも良い方法です。例えば数字や機械に強ければ、プログラマーやエンジニア、また機械の豊富な知識を持っているなら、〝家電量販店の店員〟等もお勧めです。

ただ、どのような職に就くにしても、自分の得意な事・苦手な事をしっかり理解し、その特性に合った職場選びをしていく事が大切です。

もし「どうしてもこの仕事がやりたい!」という職があるけれど、自分の特性について不安がある場合、ハローワークを利用するのも一つの手です。

ハローワークでは障害者用の求人も募集しています。専門窓口に行けば、自分が働きたい職場について障害に対する配慮はしてもらえるのか、環境整備はしてもらえるのかといった詳細を問い合わせ、教えてくれます。

また、面接を受けることになった場合も、希望すればハローワークのスタッフが同行してくれます。

これまで書いてきたように、ASDの特性を持っていても、周囲の助けを借りたり、自分の適性を見極める事によって、特性を持っていても自分らしい人生を送ることは可能なのです。

ASDは確かに「障害」でもありますが、言い換えれば「一つの個性」です。

それに、得意な事・苦手な事があるのは皆当たり前のことです。「障害だから」と言って下を向くばかりでなく、自分の自信があるところに視点を置き、胸を張って人生を送ってほしいと願っています。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。