コミュニケーション術~話し上手は聞き上手~

HSP
Trương Hoàng Huy NgânによるPixabayからの画像

筆者は過去の経験と、もともとの引っ込み思案の気質から周りの人と打ち解けるというのが苦手です。仕事場でも自分から誰かに話しかける、などということは滅多にありません。

話しかけられれば答えるのですが、緊張してしまってしどろもどろ……。
しかも筆者はHSP気質を持っているので、周りの人の表情や場の空気などを他の人が「そこまで気にしなくていいのに」というくらい気にしてしまいます。(HSPについてはコチラ!)

そのため集団の輪の中には入れません。気疲れしてヘトヘトになってしまうからです。周りから「肩の力を抜いて」と言われるのですが、それができないのです。このコラムを開いてくれたということは、筆者と同じような悩みを持っている方なんだと思います。

また、ASDADHDといった発達障害がある故に、その特性から他人とコミュニケーションをとることが難しい、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、コミュニケーションをとるといっても「自分から話しかける」だけがコミュニケーションではありません。「聞き役」がいなければ、コミュニケーションは成り立ちません。

そこで、今回は‶話しかけられやすい人〟(聞き役に向いている人)になるにはどうしたらいいか、また‶自分から話しかけたくなったらどうするか?〟の基本についてまとめました。

■話しかけたくなる人ってどんな人?~表情やオーラ、言葉遣い~

人から話しかけられる人は、その人に話しかけたくなる‶何か〟を持っています。
例えばいつもニコニコしている、穏やか、言葉遣いが丁寧など……。とても些細なことなのですが、人を惹きつける‶何か〟を持っているのだと思います。

そこで、この章では「どんな人に話しかけたくなるのか」「どんな人が話しかけられやすいのか」を見ていきたいと思います。

★いつもにこやかに話を聞いてくれる人★

いつもどこか微笑んでいるように見えたり、話しかけると「うん、うん」と話をさえぎることもなく、楽しそうに聞いてくれる人だったら「どれだけでも話したい!」と思いますよね。

人はみんな自分の話を聞いてほしいもの。そんな中で穏やかに、にこやかに話を聞いてくれる人がいたらその人は必ず「話しかけたくなる人」になります。

まずは‶表情作り〟から。ニコっと笑うのが苦手なら、鏡を見て口角を挙げる練習をしましょう。一旦口角を上げて、5秒ほどキープしてみる。また、出勤する時に鏡を見て、笑顔の自分を作ってから出かける。それだけでも効果はあると思います。

そして、穏やかな人は行動もゆっくりで丁寧です。ドアを開け閉めする音が静かだったり、話し方もどことなくゆったりとして落ち着いていたり。

言葉遣いだけでなく行動からも‶穏やかで落ち着いている人〟に映るので、なんとなく「この人なら話を聞いてくれるのではないか」と思われ、話しかけられやすいのでしょう。

その点ADHDがある人は不注意や衝動性、多動といった特性からちょっとバタバタしていたり、落ち着きがなかったりします。そういう場合は、前述のような人のまねをして、まずは「ゆったりと話せるようになる」「行動も落ち着いてする」ということから始めてみてはいかがでしょうか。

★相手を主人公にして話す★

発達障害がある人は「自分から一方的に話してしまう」という特性もあります。自分の興味のあることならなおさらです。そういう時は自分でも‶自分ばかり話すのではなく、相手の話す時間もきちんと作る〟とこころに置いてコミュニケーションを楽しみましょう。

前述しましたが、人は誰も「自分の話を聞いてくれる人」が好きです。そこで‶聞き上手〟になるには「相手の話を深掘りしていく」ことです。例えば相手が「あの映画面白かったなー」とポツリとつぶやいたら「それはどんなストーリーなんですか?」「どんなところが面白かったですか?」など話を芋づる式につなげていくのです。そうすれば相手は‶この人は自分に興味を持ってくれた!〟と思い、気分よく話してくれることでしょう。

ここで発達障害がある人が気を付けなくてはいけないのは「自分には興味がないから」といってすぐ違う話題に移ってしまわないようにすることです。
ASD・ADHDがある人は自分の興味のあることはとことん追求しますが、興味がないこととなると全くと言っていいほど関心を示しません。これでは話している相手も「この人と話していてもつまらない」と思うことでしょう。

例え自分があまり興味がないことでも、聞き上手・話しかけられる人になりたければ相手の話にきちんと耳を傾けることです。もちろん「興味がない」ということを表情に出すことなど絶対にNG。相手の目を見て「ちゃんと聞いていますよ」という態度をとりつつ、適度に相槌を打ちながら相手との会話を楽しめるようになるといいですね。

もう一つやってはいけないのが、先ほどの映画の話で言うと「あ、それ私も観たんだけどね」などとすぐ会話の主人公を自分にすり替えてしまうことです。でも相手が「こういうところが面白くてね」と言った時に「あ、そこ私も面白いと思った!」というのは相槌に近いものなのでOK。そこから会話が弾む可能性もあります。相手の話をさえぎったり、他の話にすり替えたりすると、不快に思う人も多いことでしょう。ですから、誰かと話すときは「相手を主人公にして」コミュニケーションをとることが大切です。

■話しかけないでオーラを出していませんか?

筆者は、仕事場ではほとんど人と関わりを持ちません。前述のように過去の体験と、もともと引っ込み思案な気質、HSPの気質から、自分から発信するということができないのです。しかも聴覚過敏のためヘッドフォンをしているので、たぶん周りから見たら「話しかけないでオーラ」満載なのでしょう。

筆者も「誰かと話したいなぁ」と思う時もあるのですが「今話しかけていいのだろうか」「私なんかと話したくないかな」とネガティブに考えてしまい、結局誰とも話せず終わる、という日々が続いています。

それに集団の中での緊張感や圧迫感につぶされまいと自分のこころを支えるのでいっぱいいっぱいなので、余計「話しかけづらい人」になっていると思います。

こんな風に「話しかけないでオーラ」を出していると、相手も「あの人とは何を話せばいいかわからない」「なんか声をかけづらい雰囲気」と思ってしまいます。わざわざそんな人に話しかけようとする人は稀有な人でしょう。

‶話しかけやすい人〟は常に自分をひらいていて、「誰か話せる人はいないかな」「仲良くできる人はいないかな?」というアンテナを張っています。

だからこそ、相手も話すきっかけがつかみやすく、良いコミュニケーションが取れるのでしょう。

筆者のように自分から関係をシャットダウンしている、という人だけでなく、例えば休み時間にはいつもスマホを触っている、机に突っ伏して寝ている、など自分の世界に入っている人には話しかけづらいものです。

「誰かと話したい!」と思ったら顔を上げて、周りを見渡してみてください。あなたと同じように話し相手を探している人がきっといます。

「声をかけたいけど何を話せばいいかわからない……。」という人でも大丈夫。
今日は暑いですね」や「今日のお昼は何にしますか?」などと軽い話題から入ればいいのです。声をかけられたほうも話し相手を探していたなら「ほんと、暑いですね。嫌になります」などと会話が続いていくと思います。

ここでASD・ADHDの人が気を付けて行わなければならないのが、空気を読むことと自分の話ばかりしないこと。いくら相手が話し相手を探していたとしても、こちらばかり話していたら相手もつまらなくなりますし、不快な思いをさせかねません。


そして‶何かをしている人〟の気持ちを読まずにいきなり話しかけないこと。いくら休み時間だと言っても、会議が迫っていて資料を読んでいる人もいるかもしれません。

ここではきちんと相手の様子をうかがって「話しかけても良いか・悪いか」を判断しましょう。相手が忙しそうなら声をかけるのは控え、もしその人と仲良くなりたいなら別の機会を待って声をかけてみましょう。

■仲良くなりたい!を叶えよう~円滑なコミュニケーションのコツ~

★初対面の人と話す時は名前を呼ぼう★

「初対面なのに名前を呼ぶなんて失礼じゃない?」と思った人もいるかもしれません。
でも、実は話しかける時に名前を呼ぶことには「あなたと仲良くなりたい!」という気持ちがぎゅっと詰まっているのです。例えば初対面の人と話す時に「どちらから来られたのですか?」と聞くより「○○さんはどちらから来られたのですか?」という方が、何となく親近感が湧きませんか?

質問をするときも「○○さんはどう思われますか?」と言ったほうが、親しみを込めた感じに思えます。名前を呼ぶということは‶大勢のなかの一人〟というよりは一人の‶個人〟として認めていることにもなります。

「あなたと仲良くしたいんです!」というアピールにもなります。また、自己紹介し合ったり名刺交換をして名前がわかったら「素敵な名前ですね」「初めて聞く名前です」など‶名前について〟話題を膨らませてもいいでしょう。

仕事場だと苗字を呼ぶ方が適当だと思われますが、プライベートだったら思い切って下の名前で呼んでみるのもアリです!(もちろん相手がOKならですが)‶下の名前+さん〟などと呼べれば、グッと距離も近くなります。

ここでASD・ADHDの人が気を付けなければならないのが、間違った距離の取り方。
空気を読めない、人との距離の取り方が分かりづらいという特性があるため、気を付けなければならないのです。


かなり目上の人に対して「○○(下の名前)+さん」などという呼び方をすれば失礼千万。
相手と自分の立場を考えて、「苗字+さん」で呼ぶのがいいのか「下の名前+さん」で呼んでも良いのか判断してから呼びかけるようにしましょう。

また何と呼べばいいか迷った時には「なんとお呼びすればよろしいですか?」と聞いてしまうのが手っ取り早い方法です。

★質問をするときは相手が答えやすいように★

‶相手に話しかけることができない〟という理由の一つに「反応が鈍かったり、悪かったりすると気になる」ということがあります。

つまり「相手に興味を持ってもらえなかったらどうしよう」という恐れと「相手から自分はどう思われているか」ということが気になっているのです。しかし、周りは自分が思うほど自分のことばかりを気にしていません。


「自分がどう思われているか」気になる人は自意識過剰な傾向があるのでしょう。

これを解消するには「自分より相手に関心をもつ」こと。


「あの人はどんな人なんだろう?」と思った時は‶相手のことがよくわかる質問〟をしてみるのをおすすめします。

しかし、漠然と‶質問をする〟といってもわかりづらいですよね。ここは「相手がすぐ答えをくれそうな質問」をしてみましょう。

1.質問の内容の幅を狭める
「好きなものはなんですか?」というのはあまりにも答えの幅が大きすぎて‶趣味のこと〟なのか‶好きな食べ物〟のことなのか相手も困惑してしまいます。

そこで、例えば「休日は何をして過ごすのがお好きですか?」と質問の範囲を狭めてみましょう。
そうすれば「お気に入りのお店にランチに行くことですね」など具体的な答えが返ってきます。そうしたら「へぇ、そのお店はどこにあるんですか?」「ランチは日替わりなんですか?」などと話を広げやすくなります。

2.質問を二択にする
これも「質問の幅を狭める」方法です。例えば「犬と猫、どちらが好きですか?」「和食と洋食、どちらがお好きですか?」などです。これなら相手もそこまで深く考えなくてもパッと答えてくれることが多いでしょう。


「洋食が好きですね」と返ってきたら「洋食派ですか!ちなみにどんな料理が好きなんですか?」などと話が膨らみます。

少し質問の幅を狭めるだけで、相手も答えやすくなり、話が膨らむ可能性も高くなってきます。しかし、質問攻めはいけません。例えば初対面の女性に年齢を聞いたり、住んでいるところを聞いたりするのはご法度。

ASD・ADHDの人は「空気を読む」「人の気持ちを察する」ことが苦手なため、いきなりこういう質問をしてしまうこともあるかもしれません。


‶あの人にこれを聞いてみたいな〟と思った時に、一度胸の中で「これはしてもいい質問か?失礼に当たらないか?」を考えて、「これなら大丈夫だ」と思ったら質問を投げかけてみましょう。

思った事をパッと口にするのではなく、いったん飲み込んで、妥当かどうか判断してから発してみるASD・ADHDの特性で衝動性がある人もいますが、それを抑えるコミュニケーション法をしていくことが大切です。

★笑顔で‶ゆったりした話し方〟になるように★

これは「話しかけたくなるの人」の章でも書きましたが、話をするのが上手な人は、いつも笑顔でいることが多いです。初対面の人でも、職場の人でも、笑顔で話しかけてくるのとむすっとした表情で話しかけてくるのでは、だいぶ印象も異なりますよね。


むすっとしている人がいると「あの人怒っているんだろうか」とか「機嫌が悪いんだろうか」とちょっと嫌な気分になります。

笑顔で話しかけてもらえれば「私は受け入れられているんだ」「私という存在を認めてくれているんだ」と思えます。笑顔だとどことなくやわらかい空気をまとっている感じがするので、みんなが「あの人と話してみたい」と思うのでしょう。

そして、相手と話す時に気を付けたいのが‶ゆったり、落ち着いた口調で〟話すこと。
早口でまくしたてられると、なんだか怒られているようで萎縮してしまいます。

その逆で笑顔でゆったり話してもらえれば、なんだか心にも余裕ができて会話を楽しむことができます。笑顔は「あなたに気を許しています」「あなたと関わりたいと思っています」というサイン。

さらにゆったり、穏やかな口調で話せば相手もこころを開いてくれると思います。もし「誰かと話したい」と思った時は、優しく、穏やかな気持ちで相手のこころのドアをノックしてみてください。

■コミュニケーションまとめ

「話しかけられやすくなる」方法と「話しかけたいと思ったらどうするか」の基本をまとめましたがいかがでしたでしょうか。
話しかけたくなる人、話しかけたいと思った時に受け入れられる基本は‶笑顔〟です。今はコロナウイルスの問題のせいもあり、みんながマスクをしているのでなかなか表情全体は見えませんがマスクの中で口角を上げるだけで目も笑っているようにみえるはずです。

コラムの前半でも紹介したように‶笑顔の練習〟をしてみてください。きっと話しかけられる回数も増えるでしょうし、こちら側から話しかけた時も良い印象を持ってもらえると思います。

筆者にとっても人間関係を築くのはかなり難しいですが、少しずつでも周りと打ち解けられるよう、努力していきたいと思います。一緒に頑張りましょう!

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。