仕事の優先順位の付け方を解説!~発達障害の特性も踏まえて~

発達障害

上司から「ごめん、これ急ぎの仕事なんだ。やってもらえないかな?」と声をかけられるも、自分には自分の仕事がある。

「今、報告書を書いていて……」というと上司は「そんなものいつでもできるだろう!こっちは急ぎなんだよ!」と怒ってしまった。何故だろう?

そんな経験がある方もいらっしゃるかもしれません。発達障害(主にASD、ADHD)の方は優先順位をつけたり、段取りよく仕事を進めるというのが苦手な傾向にあります

マルチタスクが苦手、という特性も相まって「どれからやればいいんだろう……?」と混乱してしまうこともあるでしょう。

筆者もASDがあるのですが、何かやっている時に他のことを頼まれると頭が混乱するということがよくあります。

優先順位もなかなか決められません。

このコラムでは、優先順位の付け方や優先度の把握の仕方などについてまとめました。よろしければご覧ください。

■優先するものと後回しにしてもいいものって?


自分が何か仕事をしている時に、上司や同僚から「これも頼むよ」と仕事をお願いされてしまうと「どっちを先にやればいいんだ!」と焦ってしまう人もいるかもしれません。

「上司に頼まれたからこちらをやらなければならないのかな」
「でも今自分はコラムを書いているし、考えが飛んだら嫌だな」

などといろいろな考えが頭の中を巡ります。

結局どうすればいいかわからなくなって、周囲の人に優先順位をつけるのを手伝っていただくこともあります。

仕事の優先順位といっても、基準があるわけではありません。それぞれ個人がどの仕事が大切か選んで、それからこなしていっているだけです。

基準もないのにどうやって優先順位をつけるのか?

これが大きな問題です。例えばASDがある人には、マニュアルや指示書があればその通りにきちんと仕事をこなすことができる人もいます。

「何を」「いつまでに」「どのように」やればいいかはっきりしているからです。

しかし、何個もやるべきことがあって「急ぎ」と言われただけでは、どれに一番にとりかかればいいのかわからなくなってしまうのです。

日付の順、なら分かります。日付は明確で分かりやすいルールだからです。しかし「重要な仕事」と言われても、何をもって重要とするのか分かりかねる場合があります。

その仕事にかかりそうな時間も分かりません。

発達障害の場合、その時の調子や気分によって仕事や学業にスピードの差が出てしまう為、今までで似た仕事にどのくらい時間がかかったか、というのは参考にならないのです。

そのため、かかる時間で優先順位を決めるということも出来ず、途方に暮れてしまいます。

それでは、どうやって優先順位をつけていったらいいのでしょうか?

■優先順位の付け方

優先順位をつける場合、考えなければいけないことが2つあります。

1つ目は緊急性。2つ目は重要性です。

緊急性というのは‶どれだけ急いでやらなければならないか〟ということです。

例えば一番緊急性があるのは「接客」でしょう。お客様がいらっしゃっているのですから、急いで対応しなければなりません。

他の仕事でいうと「締め切りの近い仕事」です。例えば明日必要な書類を今作ってくれと言われたなら、それは緊急性があると言えますよね。

重要性というのは、会社やお客様にとってどれだけ重要な仕事であるか、ということです。

会社の存続や発展に必要な仕事との場合、重要性はかなり高いです。

それ以外にも「かなり上の上司からの指示」や「会社のお金に関わる仕事」なども重要性が高いと言えます。

この2つの要素から考えると、

1.緊急性が高くて重要性も高い仕事
2.緊急性は高いが重要性は低い仕事
3.緊急性は低いが重要性は高い仕事
4.緊急性も重要性も低い仕事

の4つに分けて考えることができます。

例えば人の命に関わる仕事となればもちろん1番ですよね。ケガや病気などで苦しんでいる人を救わなければならないとなれば、緊急性も重要性も高いです。

迷うのは2番と3番です。

日報などの仕事はたしかに毎日締め切りがありますが、重要性はそれほど高くはありません。その日の終わりまでに書けばいいわけですから、他の仕事が入ったらそちらに回ってもいい仕事です。

では、次の仕事のための準備はどうでしょうか?こちらは重要性は高いですが、緊急性は低いです。

どちらを優先してやればよいのでしょうか?

これは人それぞれ違ってくると思いますが、筆者は緊急性が低くても重要性が高い仕事には結構な割合で時間を使っています。

主な作業は
・SNSの更新
・コラム書き
・kindle記事作成&校正

などです。

SNSの更新は、やらなければならない日はその日の朝いちばんに行います。

コラム書きやkindleの記事作成に入ってしまうと、なかなかキリが付かずやる時間が無くなってしまう恐れがあるからです。

次にコラム書き。今読んで頂いているようなコラムを書く作業を2時間ほど行います。

ただ、今はkindleの原稿が完成し、校正をしていく段階であるので一気にはできませんから、コラムを優先させています。

しかし、kindleの記事作成が始まれば時間は逆転します。

kindleの記事作成には情報収集も必要ですし、本になるのですから正確な情報を集めなければなりません。これは自分にとっては1番に入るからです。

コラムの方は上司からも「自分のペースで」と言われているので、緊急性は低いです。

しかしkindleの校正となると、一度自分で書いた文章を再確認していくわけですから、情報の正誤性を確かめたりおかしな文はないかと脳をフル回転させることになります。

その作業を2時間やらなければならないというと障害の特性上集中力が続かないため、いつもは1時間程度としています。

このように緊急性は低いけれど重要性が高い仕事には毎日一定の時間を組み込んでいくことをお勧めします。

もちろん、他の仕事との兼ね合いで半日できる日があったり、10分しかできない日があっても良いです。ただ、継続してやっていくことが大切だと思います。

■重要性の判断は?

仕事の重要性の判断としては次のように分けられます。

1.会社の存続やお客の都合に直接的に関わる仕事
2.お客様との約束、上司に「優先的に」と言われた仕事
3.自分の主な業務、急ぐ同僚の手伝い
4.自分の主な作業ではない仕事
5.いつやってもいい雑務、自分の勉強

前述したように、どの仕事に重きを置くのかは人によって異なってくるでしょう。

しかし、覚えて頂いてほしいのは「重要性の低い仕事」は後回しになっても良いですが「やらなくてもいい仕事」ではないということです。

例えば自分のキャリアアップのための勉強は後回しになっても仕方ないですが、やらなければ自分のスキルは上がりませんから、今後成長していくのに支障が出てしまいます。

分類的には5番に入りますが「やらなくてもいい仕事」ではありません。基本的に、仕事をしていく上で「やらなくてもいい仕事」はないと思います。

また、同じような優先度なら、緊急性を基に判断していくといいでしょう。

例えば自分の仕事で締め切りが迫っている場合と、同僚の切羽詰まっている仕事を比べるなら、自分の仕事をとっていいと思います。

そしてもし自分の仕事が終わったなら、同僚の助けに入りましょう。

同僚の仕事が急ぎならば、自分の仕事がどれくらいで終わりそうか考え、実行したうえで時間があったら、ヘルプに入りましょう。

ただ、自分も緊急性がある仕事をしているのですから、まずは自分の仕事をきっちりやりましょう。そのうえで同僚を助けるか考えるべきです。

判断がつかない場合は、上司に判断を仰ぎましょう。

■緊急性の判断は?

緊急性の判断の仕方として、3つの例をあげましょう。

1.今すぐに対応しなければならないもの
2.締め切りが早いもの
3.締め切りに余裕があるもの

1番の例としては接客、上司に「優先して」と言われた仕事などがあてはまります。またお客様と会う時間が決まっているものも当てはまります。

2番は「〇日までにやって欲しい」などとはっきり締め切りを伝えられたものが入ります。

「〇日まで」と言われていれば、発達障害がある人でも意識して仕事に取り組むことができると思います。その日から逆算して作業を進めていけば間に合います。

3番は「いつやってもOK」と言われているものです。1番や2番の仕事が終わり、手が空いたときにやるといいでしょう。

ただ、前述したように「やらなくてもいい仕事」ではないので注意しましょう。

緊急性が高くなる場合は比較的重要性も高くなってくるので、まずは緊急性があるかどうか考え、それから重要性で判断を行うのをお勧めします。

■自分のやっている仕事の記録をつけよう

優先順位をつけられるようになるには

自分はこの部類の仕事にどれくらいの時間がかかるのか

を把握しておくことも大切です。

仕事時間の見込みを付けられる人は、今までの経験則で「このくらいかかるだろう」と判断できます。

自分の仕事の速度が分かれば、その仕事にどれくらいの時間がかかるのか予測することもできます。そうすれば、優先順位もつけやすくなります。

それを可能にするには、Excelのガントチャートを事後記録として付けていくといいと思います。

例えば、日付、仕事内容、かかった時間を記録していきます。

時間感覚が鈍い人であっても、一つ仕事を終えるたびに「1時間くらいかかった」「20分くらいかかった」などといったことは時計を見ていれば分かるでしょう。

その記録を付け続けていけば、類似した仕事にどれくらい時間がかかっているのか一目で把握することができます。

把握できていれば「この仕事、どれくらいでできる?」と聞かれた時にも、その記録を基に答えることができます。

このようにして自分なりの工夫をしていけば、だんだん自分でも優先順位が立てられるようになります。少しずつでいいので、練習していきましょう!

■まとめ

以上、優先順位の付け方や重要性・緊急性の判断などについて経験談も交えながら綴ってきましたが、いかがでしょうか?

筆者もASDであるため、マルチタスクや優先順位を立てるのは苦手です。しかし、最初は人の手を借りてでもいいと思います。

現に、筆者も優先順位に迷ったときは周囲に相談しています。

また、仕事の終わりの時間くらいになると次の日に何をやればいいのか書くノートを用意しておき、それにやるべきことを書き込んでいます。

そうすれば次の日に「何からやればいいんだっけ?」となることはありません。メモやスマートフォンの機能を活用することも大切だと思います。

自分なりに優先順位が立てられるように、自分に合ったスケジュール管理ツールを見つけて実践していけると良いですね。

筆者も自分一人で優先順位をつけて仕事を進められるよう、頑張ります。このコラムを読んでくださった方も一緒に頑張りましょう!

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。