「風邪を引いたかな」と思った時、「とりあえず内科に行ってみよう」という方が多いと思います。それと同じで、「こころの調子が悪いな」といった日が続いたら、それはこころが出しているSOSです。そんな時に頼るのが精神科や心療内科。その2つの特徴と便利な制度についてまとめました。
■精神科と心療内科の違いって?
精神科と心療内科、2つとも主に「こころの病」について治療してくれるところですが、具体的にはどう違うのでしょうか?まず、精神科の場合から触れていきたいと思います。
精神科では、例えば
・気分が憂鬱になる、落ち込みが続く
・ほかの人には見えないものが見える(幻視)、聴こえる(幻聴)
・眠れない、寝ている途中で起きてしまう
・ちょっとしたことでイライラが爆発するようになった
・人と会うのが怖い、自分のこと悪口を言っているのではないかと思うようになった
・自傷行為をするようになった
などというこころの症状を診断・治療してくれます。
こころの不調が2週間以上続くようであれば、一度精神科を訪れることをおすすめします。精神科には駅前などにある一見病院には見えないようなところもあります。そういったクリニックなどであれば比較的訪れやすいのではないかと思います。
大きな病院に転院したいなどの希望があれば、医師に診断書や紹介状を書いてもらい、ほかの病院に移ることもできます。
次に、心療内科の特徴を挙げたいと思います。
心療内科では、
・朝、会社(学校)に行こうとするとお腹の調子が悪くなってしまう
・頭痛が続いているが、病院に行っても異常なしと言われた
・血圧が急に高くなることがあるが、病院で検査しても原因がわからない
など「からだ」の症状が出るけれど病院に行っても異常がないと言われる症状を治療していくところだと言えます。
心療内科のベースは「内科」であり、からだの症状の診断と治療を専門的に行います。ただ、その症状の原因が「こころ」である場合、その点も十分配慮しながら治療を行ってくれます。
ストレスと密接に関係がある症状は、「心身症」として、こころとからだ両方の面から治療を行ってくれます。
その為、「この腹痛の原因はストレスからかな?」などと思ったら、普通の内科よりは心療内科を訪れてみたほうがいいかもしれません。
精神科と心療内科の違いについて述べてきましたが、もしどちらの科に行くか判断に迷ったら両方の科を併設している病院もありますので、そういった病院やクリニックを探すのも一つの手でしょう。
■いざ初診! 精神科なんて怖くない!
それでは、実際に受診するとき(初診)はどんな流れで診察が進んでいくのでしょうか?今回は精神科の初診を例に紹介したいと思います。
まず、受診するのに必要となるものは、
・健康保険証
・各種受給者証(医療受給者証・自立支援受給者証など、持っている人)
・前かかっていた病院からの紹介状(持っている人)
・お薬手帳(持っている人)
などです。心療内科などでも同じようなものが必要となってくると思いますが、その病院によっても必要な書類等は違ってくる場合がありますので、受診する病院を決めたらあらかじめ電話などで聞いておくといいでしょう。
また、病院によっては初診は予約制となっているところもありますので、こちらも確認し、空いている曜日や時間などを聞き、都合がいい日に予約を入れましょう。
次は、実際に病院についてからの流れです。まず、初診の方は「問診票」というものを書きます。
問診票には、
・誰と一緒に病院に来たか
・今一番困っていることは何か
・いつ頃から悩んでいるか
・現在飲んでいる薬はあるか
・今までに精神科・心療内科にかかったことがあるか
などの設問がありますので、それに回答を記入していきます。その後、看護師による検温・血圧測定などが行われます。また、インクのシミが何に見えるかなどを問う「ロールシャッハ・テスト」や〝1本の実のなる樹″の絵を描く「バウムテスト」などの心理検査が行われる場合もあります。
初診時は、医師からの質問に答えつつ、問診票に書いたことをもとに「今自分が悩んでいること」について話します。診察にかかる時間は病院によって異なりますが、短ければ5分ほどで終わる場合もありますし、個人病院であれば30分や1時間ほど話を聞いてくれるところもあります。
診察が終了し、継続して通おうかな、と思ったら次回診察日の予約をとります。筆者の通っている精神科では、「初めて診察を受けた日の曜日」によって担当医が配置されており、次回診察もその曜日の空いている時間で、担当医もその曜日の初診時に診察を受けた医師になります。
私の通っている病院は比較的大きな病院ですので、「10時に予約」となっていても「10時」の枠の中に2~3人患者が入れられていて、受付時間が早かった患者から順番に診察を受けます。
その後支払いをして処方箋をもらい、薬局で医師から処方された薬を受け取って終了です。
この流れは筆者の通っている病院をもとにしておりますので、一参考程度にしていただければ幸いです。
筆者が通うような大きな病院ではなく、個人経営のクリニックでしたら自分の都合のいい時間に訪れ診察を受けたり、少々長い時間をかけて悩みを聞いてもらえるなどのメリットもあります。
しかし、患者数が多い個人病院などになると診察までの待ち時間が長くなるなどの面もあります。
それぞれの病院やクリニックによって診療方針や細かな違いがあると思いますので、まずは家などの近くにどんな病院やクリニックがあるのか一度調べてみることをおすすめします。
■医療費自己負担が1割に!? 自立支援医療って何?
精神科に通い始めると、気になるのが「医療費」。月に1回ならまだしも月に2、3回もとなってくると、経済的な負担も大きくなってきます。
そこで医療費を軽減してくれる「自立支援医療」について解説したいと思います。「自立支援医療」とは、心身の障害に対する医療費の自己負担を軽減する制度です。
自立支援医療(精神通院医療)は、精神疾患を持った方が対象であり(一部所得制限あり)、通院による治療が継続的に必要な人々が利用できるものです。
この制度では、通院医療にかかる自己負担額が1割まで減額されるため、何回も病院に通って治療をすることが必要なことが多い精神疾患患者には、経済的負担を軽減してくれる重要な制度といえると思います。
自立支援医療を利用する場合、申請窓口としては市区町村の障害者窓口が受付先となります。
申請に必要な書類としては、
・申請書(支給認定申請書)
・主治医の診断書
・世帯所得が確認できる書類
・健康保険証
・マイナンバーがわかるもの
などがあります。こちらも市区町村によっては異なる場合がありますので、事前に電話等で確認していただければと思います。
こちらの自立支援医療(精神通院医療)は更新制ですので、1年ごとに更新していく必要があります。更新時も窓口は同じです。更新の疑問などについては窓口や電話等で丁寧に案内してもらえますので、問い合わせてみてください。
■障害があっても一般企業に挑戦したい方へ! 手帳の有効活用法
精神障害者の人が持つ手帳を「精神障害者保健福祉手帳」(以下、手帳)といいます。これは、精神障害者の方の社会参加や自立のためのサポートをするためにつくられたものです。
手帳の対象となる方には様々ありますが、
・統合失調症
・非定型精神病
・双極性障害(躁うつ病)
・てんかん
などが一例としてあげられます。
手帳の等級は1級から3級に分かれていて、3級、2級、1級と数が小さくなるごとに重度となっています。
手帳を持っていると、様々な税金の減免やNHK受信料の免除が受けられたり、一般就労を目指すにあたって障害者雇用枠の求人に応募することができるようになります。
手帳を持っている方が一般企業で働く際、「障害者雇用率」の算定対象となりますので企業側にとってもメリットとなると言えます。
そのため、「障害があっても一般企業に就職したい!」という方は、障害者枠での就職などのために手帳を有効活用されることをおすすめします。
「手帳を持っていることを周りに知られたくない」という方もいらっしゃるかもしれませんが、手帳を持っていることで何か制度上デメリットがあるかというと特にありません。逆に税の免除や様々なサポートが受けられるため、取得資格のある方には申請していただいた方がいい制度だと言えると思います。
では、どのように手帳の申請を行うのでしょうか。以下に必要書類を挙げますが、こちらも市区町村などによって異なる場合がありますのでご注意ください。
申請に必要となってくる書類は、
・申請書
・マイナンバーがわかるもの
・診断書(指定の診断書が必要です)
・手帳用の写真
・印鑑(場合によっては必要です)
などが挙げられます。
こちらも更新制で、取得した後2年ごとに更新していきます。障害の程度が変わるなどがあると等級も1級になったり2級になったり、ということがあります。
こちらも自立支援医療と同じで、治療をしていく上での経済的負担を軽減してくれるお助けアイテムと言えます。
精神疾患を通院で治療していくうえで、経済的な負担が大きいと余計な心配事が増えてしまいます。こういった制度を活用することによって、治療に専念したいものです。
■精神科・心療内科についてまとめ
今回は初めての精神科受診の流れや自立支援医療、精神障害者保健福祉手帳などについて触れてきました。
精神科や心療内科は特別なものではありません。風邪を引いた方が内科に行くように、こころの調子を崩したら診てもらうのは当然のことです。
最初に精神科や心療内科を訪れるのは勇気が必要かもしれませんが、あなたの悩みが少しでも軽くなるかもしれません。
「ちょっとこころの調子が変だな」「眠れない日が続いているな」と感じたら、それはこころのSOSです。
そのSOSを無視しないでください。精神疾患は、放っておくと悪化してしまう恐れがあります。
適切な医療機関を受診することによって、あなたに健やかな笑顔が戻ることを願います。
こころの病気を治療するにあたって知っておくべき制度です♪⇩
著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。