過食症、どう治療する?再び食の楽しみを味わう為に

摂食障害

以前掲載した『摂食障害 過食症~止まらない食欲と当事者の悩み~』では、過食症の特徴やむちゃ食い障害、精神症状等について書かせていただきました。

過食症を克服するには、本人の意思も大切ですが、周囲のサポート体制も必要となってきます。

そこで、このコラムでは、当事者の周囲の人や社会資源(施設、・サービス・専門職等)が行える支援などを掲載いたしましたので、興味のある方はご覧ください。

どう対応する? 止まらない食欲と代償行為

拒食症に於いてもですが、過食症は、当事者が「病識(病気であるという認識)」をしっかり持って、積極的に治療に取り組んでいくこが必要です。

・体重がかなり増えたな
・甘いものも結構食べている
・栄養バランスも考えていない
・苦痛に感じるほど食べているのに、過食をしてしまう

・自分で吐いてしまうようになったけど、これって病気なのかな

等感じれば、「病院に行ってみようかな」と自ら病院に足が向くかもしれません。

「食べる➡排出する(自己誘発嘔吐・下剤乱用等)➡食べる

というループに一旦はまってしまうとなかなか抜け出せないため、その悪循環を断ち切らなければなりません。

その為には、当事者の努力だけでなく、周囲のサポートや、社会資源(施設やサービス等)を活用し、当事者も積極的に治療に取り組んでいかなければなりません。

周囲ができる対応は?~本人を否定しない関わり方~

1.周囲(家族・友人等)ができる事

例えば、過食症の人は過食をした後に「代償行為」と呼ばれる行為によって、食べた物を体から外に出そうとします。

代償行為とは、自己誘発嘔吐(指を突っ込んで吐く)や、下剤の乱用等によって行われる排出行為のことです。

例えば、勢いでたくさんの物を詰め込むように食べてしまった後で、

「こんなに食べたら太ってしまうじゃないか!」
「なんでこんな事をしてしまったんだろう」

という自分を責める気持ちから、こういった代償行為が行われるが多いです。

(食べてばかりいて体重を気にしない過食症の人もいます)

しかし、周囲の人(家族・友人等)が過食・代償行為やめるよう言っても、最初は耳を貸さないと思います。また、無理に食べるのをやめさせるのも良くありません。

過食」という行動の背後には、当事者の心の葛藤があります。ストレス、不安、過労、睡眠不足があったり、うつなどの精神障害が隠れていることもあります。

その悩みを一人で抱え込んでしまった為、発散することができず精神的にいっぱいいっぱいになってしまい、食べることに走ってしまうのです

なので、頭ごなしに「食べるのをやめなさい!」と言っても、当然無理な話です。

周囲の人ができる事と言えば、

・相談相手になり「何か辛いことがあるなら話を聴くよ」と伝える
心配している人は大勢いることを伝える
・当事者が病院受診を嫌がっても、本人に起こっていることをきちんと説明し、  

治療の必要性があることを伝える
・当事者の家族も家族会に参加する
周囲も当事者もストレスを感じにくい環境づくりをする
周囲も「自分のせいでこんなことになったんだ」等と自分たちを責めないこと

等です。

過食症5~10年で回復に至る可能性が高いと言われていますが、実は患者全体の0.3%の人が死に至るという報告も上がっています。その為、早めの受診が早期回復のカギとなるので、本人にもそれを説明し、通院につなげられるといいと思います。

病院で行われる治療とは?知っておきたい治療の流れ

2.病院で行われる治療方法
各病院で行っている治療方法は様々ですが、例を挙げると、

・心理療法(カウンセリング・認知行動療法・対人関係療法等)
・薬物療法(抗うつ剤・減量薬・食欲抑制剤などの投与)
・入院治療(症状が著しく重い過食症の人)

等があります。

回復のためには、通院を続けるのも重要なことです。

過食症というのは、一回病院に行っただけで治るものではありません。

医師の指導の下、薬を飲んだり、診察を受け、またカウンセリングを受けることによって少しずつ回復に向かっていく病気なのです。

医師は薬を投与してくれたり、医学的な治療をしてくれます。

カウンセリングでは、カウンセラーに話を聴いてもらったり、様々な心理療法を用いて過食症からの脱出を手助けしてもらいます。

カウンセリングでは、心の中にある「過食してしまう時のストレス」に焦点を当て、その原因にポイントを当てて治療していきます。

なにが過食の原因となっているのか、その「過食という行動に走る引き金(トリガー)」を見つけ、上に挙げたような心理療法を行いつつ、ストレスの原因を突き止め、その問題についての解決策を考えながらカウンセラーと共に治療を進めていきます。

自分でもできる治療~積極的に取り組む姿勢が大切~

3.セルフコントロール
周りの人々や病院などに任せきりで自分は何もしないのでは、治るものも治りません。

周囲の助けも必要ですが、「しっかり病気を治していこう」という固い決心も大切です。

今までは過食によってストレスを解消していましたが、これからは過食に頼って発散することはやめなければなりません。

食べる以外のほかのストレス対処法を見つけることが必要です。

例えば、

・近所を散歩してみる
・友達とドライブしたり、遊びに行く
・家族や友達とだんらんを楽しむ
・気分転換に好きな音楽を聴く

等でしょうか。

また、「自助グループ(自助会や家族会等)」と呼ばれる集まりもあります。

この「自助会」と「家族会」の2つの違いは、

自助会……その疾患を持った障害者自らが活動を行っている。
家族会……身内に精神疾患等を持つ家族が集まり活動している。

など活動の主体だと言えます。

そこでは、同じような悩みをもった仲間と共に交流をしたり、様々なイベント等を行います。

自助グループでは、まず「ありのままの自分」を受け入れることを大切にします。

でも、「自分を受け入れる」といっても難しいものがありますよね。

自助グループにも様々な種類があり、ミーティングで悩みを聞いてもらったり、逆に他の仲間の悩みを聞いたりもします。

また、家族も一緒に普段の当事者の様子等の情報を共有することにより、その問題についての対策を一緒に考えたりもします。

そういう会に参加することによって、

「悩んでいるのは自分だけじゃなかったんだ」
「こんなにも支えてくれる仲間がいる」

「辛いのは自分だけじゃない」という孤独感をかき消すいきっかけになるでしょう。

過食症から立ち直るのは簡単な事ではありません。しかし、医療機関はもちろん家族や友人、自助グループ等様々な人の力を借りることによって、一歩ずつ回復へ向かっていけると思います。

今、過食症を治したいと悩んでいる方、一人で抱え込まないでください。

周りにはあなたの味方がたくさんいます。その人たちと共に、過食症を乗り越えられるよう願っています。

また、食事が美味しく、楽しく感じられるようになるといいですね。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。