周囲の人が知らない 精神障害者が抱える生きづらさとは?

障害
Prashant SharmaによるPixabayからの画像

皆さんは精神障害者の生きづらさについてどの程度知っていますか?
精神障害者やる気が出なかったり朝に弱い、聞こえないはずのものが聞こえてくる「幻聴」など、様々な目に「見えない症状があるからこそ誤解を受ける場合や、偏見にさらされることもあります。ぜひ皆さんには当事者の生きづらさについて少しでも知っていただけたらと思います。
それでは精神障害者が抱える生きづらさとはどの様なものなのでしょうか?

■身近な精神障害~うつ病と統合失調症~

一般に、「精神障害」というと統合失調症精神作用物質による急性中毒又はその依存症知的障害精神病質その他の精神疾患を有する者のことを指します。

そして罹患率が極めて高くよく見られやすい精神障害としては、「うつ病」や「統合失調症」などがあげられます。厚生労働省のホームページによると、うつ病の障害有病率(これまでにうつ病を経験した者の割合)は3~16%とされています。 この罹患率をみると、縁遠いものとは言えない数字であることがわかります。

うつ病の症状としては「朝起きられない」「気分が沈みがち」「やる気が起きない」など、一見すると「怠け」として取られてしまうこともあるような症状も多いのです。

うつ病の症状を大きく3つに分けると、
気分の低下
意欲の低下
身体症状

に分けられます。
気分の低下」としてはやる気が起きない、元気が出ないなど、「意欲の低下」としては注意力や集中力の低下、対人関係を避けようとするなどがみられます。

身体症状」としては、心の不調が身体の不調となって表れる「身体化」という症状があります。多いのが頭重倦怠感睡眠障害などです。

厚生労働省のホームページでは、うつ病についての簡易診断表が載っているため参考にしていただき、ご自分で「ちょっといつもと違うな」「この症状は当てはまるな」と思ったら、思い切って心療内科などを訪れてみてください。深刻な状態になる前に手を打っておくことが大切です 。

次に上にも挙げました「統合失調症」について少し述べたいと思います。
主な症状としては、幻覚・幻聴や妄想がみられます。また、統合失調症の症状は「陽性症状」と「陰性症状」の2つに分けることができます。

陽性症状で多くみられるのが、聞こえるはずの無い音や声が聞こえてくる幻聴と、非現実的なことに思い悩んでしまう妄想です。

幻聴では、自分の悪口が聞こえたり、自分に命令してくるような声が聞こえてきたりします。テレパシーなどといった形で感じることもあります。

妄想では、ありえないはずのことや非現実的なことを信じ込んでしまい、自分は誰かに狙われている、悪口を言われているといった「被害妄想」が最もよく見られます。

陰性症状としては、感情の平板化寡黙などがみられます。喜びや楽しみといったものがなくなってしまい、感情が乏しくなってしまうのです。

また、意欲の低下も見られ、何をするにもおっくうになってしまいます。学校や職場へ行くのも難しくなり、不登校や引きこもりにつながることもあります。

いずれも、放っておくと悪化する一方なので、周囲から見て「ちょっと様子が違うな」と思ったら、声をかけてあげてください。

■見えないからこそ生きづらい

精神障害」といいますと、やはり〝こころのですので、当然目には見えません。症状などは見て取ることはできても、本人の辛さや苦しみは本人にしか分からず、想像を絶する症状に悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

例えば、身体障害の方で車いすの方がいらっしゃったとします。段差があって登れないときなど、車いすを押してあげる人がいればサポートはしっかりできます。

しかし、精神障害というと「何をどうすればサポートといえるのか」「どんなことをしてあげれば安心できるのか」といったことが把握しづらいと思います。これが「見えない病」だからこその障壁です。

目に見えている障害ならば、相手がどんな支援を必要としているか、すぐ見て取ることができます。精神障害者は、助けを求めることが苦手な面もあるので、なかなか「助けて」と言えません。

悩みや自分の言いたいことを自分の中に抱え込んでしまい、それがまた症状の悪化につながるという悪循環に陥ってしまいます。

そんな時、「大丈夫?」の一言がとても大きな助けになります。周囲から見て落ち込んでいるように見えたり、何か悩み事を抱えているように見えたら、一言、その言葉をかけてあげてください。それが精神障害者を暗闇から引っ張り出してくれる糸口になります。

■あなたがそばにいてくれるだけでいい~当事者として~

筆者は統合失調症歴14年です。今はだいぶ良くなりこうしてA型事業所で働いていますが、急性期は大変なものでした。幻聴に命令され自傷行為に走ったり、夜中に家を飛び出したこともありました。

しかし、ここまで回復できたのは、家族の献身的な支えとドクターや医療スタッフ、治療にかかわってくださった方々のおかげです

とまらない幻聴や不安な時、側にいて話を聞いてくれ、ずっとそばにいてくれた母親や、夜中に飛び出したときに一生懸命私を探してくれた父親、そんな人たちがいてくれたからこそ、今の私があると思います。

誰かがそばにいてくれる」「ずっと見守ってくれる」といったことは、精神障害の回復にとても有効なことです。

統合失調症だけでなく、ほかの精神障害についてもいえることだと思います。「辛さに寄り添ってくれる人」がいるだけで、当事者の心は安心します。話を聞いてもらうだけで気持ちが楽になることもあります。

寄り添い温かく見守ってくれる存在がいるだけで、その人の予後は大きく変わっていきます。

■生きつらさについてのまとめ

以上、当事者として「こうしてくれるといいな」「このような助けがあったらいいな」ということを書き出してみましたが、いかがでしょうか?少しでも、精神障害者とのかかわり方や、どうやって支援していけば回復につながるか等ご理解いただけたら幸いです。

普段から家族間や職場でのコミュニケーションを大切にし、「ちょっと元気がないな」と感じたら声をかけてあげたりと、そういった小さな配慮から精神障害の発症は防げると思います。

周りの人との関わり合いを大切にし、心の健康を保てるといいですね。

著者 もち猫
経歴→福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。