自傷行為はなぜ起こる?周囲の適切な対応方法とは?

自傷行為
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リストカット」この言葉を一度は聞かれたことがあると思います。これは、いわゆる自傷行為の一つです。その多くは10代~20代の若い世代によく見られます。なぜ彼らは自傷行為に走るのでしょうか?その際、周囲の人はどのような対応をしていけばよいのでしょうか?

■なぜ自傷行為をするのか

自傷行為」と一口に言っても、種類は多様です。

リストカット、アームカット
薬の過剰摂取
鉛筆など尖ったものを腕などに突き刺す
タバコの火を押し付ける

どれも死に至るほどひどいものではありませんが、周囲から見ると「なんでそんな痛々しいことをするのだろう」と思えてしまうものばかりです。

上にあげた中でも特に多いのが、リストカットアームカットリスカアムカ)です。
リスカとは、カッターや剃刀などで自分の手首を切ることです。

アムカというのは、リスカと同じような方法で、手首より上のほうの腕の内側などを切ることを言います。

これらの自傷行為をする人の中には、「痛みを感じると生きていると実感できる」という人や、「血を見ると安心する」という人もいます。

彼らは、精神的につらいことや行き詰った時などに、そのつらさから解放されるために自傷行為を行います。「苦しみからの一時の解放感」を求めて行ってしまうのです。

また、自己懲罰的に自傷行為を行う人もいます。周りの期待に応えられなかったり、何か失敗をしたときに自分を罰する行為として自傷行為を行うのです。

このように、さまざまな理由で「何とかしたいのだけれどどうしようもない!」と追い詰められた時に自傷行為を行うことが多いです。問題を一人で抱え込み、一人で解決しようとするがゆえに行為を行ってしまうのです。

自傷行為は癖になりやすく、一度や二度行ってしまうと、追い詰められたときに突発的に自傷行為をしてしまったり、自傷行為に依存するようになる場合もあります。

そんな自傷行為の裏には、精神疾患が隠れていることもあります。そういった場合、早期に専門家につなぐことが必要となってきます。それでは、自傷行為を伴う精神疾患とはどのようなものがあるのでしょうか。

■自傷行為と精神疾患

自傷行為は、背景に精神疾患が隠れている場合があります。この場合、「死にたい」という気持ちから大変な自傷行為をしてしまい、実際死に至るケースもありますので、早期発見・早期治療が必要です。

自傷行為を伴う精神疾患としては、境界性パーソナリティ障害、解離性障害、うつ病、統合失調症などがあります。

こちらのコラムでは、「境界性パーソナリティ障害」と「うつ病」を例に挙げたいと思います。

まずは境界性パーソナリティ障害についてです。
主な症状としては、

人に見捨てられるのが怖く、見捨てられないために必死で気に入られるよう努力する
自傷行為や自殺するそぶりを繰り返し行う
対人関係が激しく、両極端でめまぐるしい
いつも空虚感を抱いている
感情のブレーキが利かず、ちょっとしたことで癇癪を起こす

などです。

この病気の患者さんは「見捨てられ不安が強いため、自分の体を傷つけてまで相手の目をこちらに向けさせようとします。そして周りはそんな患者さんに振り回され、疲弊してしまいその人から離れようとします。するとまた患者さんは自傷行為を繰り返すという悪循環が生まれてしまいます。

そういった行為に走らせないためには、「こころの安全基地」を作ってあげることが必要です。こちらについては後ほど詳しく述べたいと思います。また、一時的に愛情を注ぐこともより一層患者さんを追い詰めるリスクになってしまいますので、決して行ってはなりません

次にうつ病についてです。自傷行為、主にリスカをする人の中にはうつ病を発症している方もいらっしゃいます。

ストレスがたまったり、うまくいかないことが多くなったりして、抑うつ気分になり衝動的に自傷行為を行ってしまうのです。

うつ病にかかる人は人一倍真面目几帳面な人が多く、何事も「完璧に」やろうとする傾向がうかがえます。

そんな真面目な人だからこそ、自分の失敗を許すことができず、衝動的に自傷行為をしてしまうこともあるのです。

うつ病の発見が遅れると、回復が遅くなったり、最悪の場合自殺に及んでしまうこともあります。

最近イライラしていることが多いなぁ
気分が憂鬱だなぁ
仕事に行くのがしんどいなぁ
やる気が起きないなぁ

自傷行為がやめられなくなったり上にあげた症状が見られるようになったら、早めに専門外来に行くことを促したほうがいいと思います。

■自傷行為への対応~こころの安全基地~

自傷行為をする人には、悩み事や相談したいことがあっても一人で抱え込んだり、自力で解決しようとする人が多いです。

周りに心配をかけたくない」「自分が弱いからいけないんだ」と思い込んでいる人も多くいらっしゃいます。

だからこそ、ちょっと様子がおかしいな、と思ったら「大丈夫?」の一言をかけてあげてほしいのです。

無理に自傷行為をやめさせようとするのもいけません。自傷行為を行っている人たちは、それによって自分の心を安定させようと必死なのです。

悩みを抱えている人にせよ、また自分を罰したいと思っている人にせよ、自傷行為をすることは「即効薬」となるのです。それを無理にやめさせてしまえば、最悪の事態も予想されます。

周りの人にできることと言ったら、まずはその人の「こころの安全基地」になってあげることが必要です。

こころの安全基地」とは、自傷を行っている人をあるがまま受容し、決して否定せず、その人の存在をかけがえのないものとして尊重する場のことです。

自傷行為をしている人たちは、周りに迷惑をかけたくないという思いとは裏腹にこころはSOSサインを出し続けているのです。

それを汲み取り、あるがままを受け入れてあげる「安全基地」をつくることで、その人は安心することができます。

自傷行為を否定せず、周りは心配していることを伝え、本人の訴えをじっくり聴く姿勢が大切です

今では自傷行為の専門外来もできていますので、専門家につなぐことも自傷行為の解消には役立つかもしれません。

しかし、本人の意に反して無理やり病院に連れていくなどの行為は症状の悪化の原因となりますので、家族や周囲の人とよく話し合い、来院するかどうかを決めるのも大事です。

あくまでも、治療の主体は本人自身です。周りは後ろをそっと後押しするような感じで、やさしく見守り、時には手を差し伸べ、ともに回復の道を歩んでいってください

■自傷行為の対処法まとめ

以上、自傷行為の症状や対処法についてまとめましたが、いかがでしたでしょうか。自傷行為は簡単にやめられるものではありませんし、なかなか理解されるものではありません。だからこそ対処が難しく、誤解や偏見を生みやすいのです。

自傷行為をやめたい、と一番思い悩んでいるのはほかでもなく本人です。その苦しみを家族や周囲で共有しつつ、いずれは自傷行為に依存することなく、ほかの方法でストレスの発散などができるようになれば、と思います。

こちらのコラムでも自傷行為への対処法などまとめております♪ぜひご覧ください⇩

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。