自傷行為に隠されたSOS~当事者のことを考えた援助法とは?~

自傷行為
Tú AnhによるPixabayからの画像

自傷行為というとみなさんはどんなことを思い浮かべるでしょうか?多分、あまりいいイメージはないと思います。しかし、自傷行為をする人は「言葉にできないSOS」を発信しているのです。リストカット経験者の筆者の体験も交えて、自傷行為について触れていきたいと思います。

■自傷行為とはどんなものか

自傷行為」というと、皆さんはどんなものを思い浮かべますか?典型的な例としては、

リストカット、アームカット(リスカ、アムカ)
タバコの火を腕などに押し付ける
鉛筆など尖ったもので腕などを刺す
薬を一度に大量に飲む(オーバードーズ)

などがあります

その中でも特に頻繁にみられるのがリスカ・アムカです。リスカというのは手首をカッターなどの刃物で傷つけるものです。

アムカも同様に刃物で腕を傷つける行為のことをいいます。このような自傷行為は、何か悩んでいるときやモヤモヤしているとき、イライラしているときに発散の方法が見つからずやむを得ず行われることが多いと考えられています

多くの場合、人目を忍んで行われることが多いですが、「周りの気を引きたい」「周りに心配してほしい」という場合は人目をはばからず行われることもあります。

その行為に対して周囲が「どうせ周りの気を引きたいだけだ」「どうせ死ぬ気なんかないくせに」など軽い対応をしてしまうことは大間違いです。

そのような対応をとってしまうと、当事者は「やっぱり周りは自分の悩みを理解してくれないんだ」という思いに駆られ、最悪の結果を招くこともあり得るのです。

実は、筆者である私もリスカ経験者です。次章では、そんな私の経験を綴ってみたいと思います。

■リスカ経験者の私~周囲の協力的態度が大切~

私が初めてリスカをしたのは、中学生の頃でした。その時私はいじめにあっており、それを誰にも相談できずにいました。

そんなときに、インターネットで「リストカット」という言葉を知りました。その時、「自分も切ってみたらスッキリするんじゃないか」と思い、つい切ってしまいました。

その時はあまり深く切りませんでしたが、なぜか気分が落ち着いた気がしました。その後も、何かストレスがたまることがあるとそれを発散するためにリスカをしてしまうようになっていました、

統合失調症を発病したときには、リスカの頻度も増していました。その頃の私にはリスカは精神安定剤のようなもので、不安を取り除いてくれる一種の「即効薬」のようになっていました。

しかし福祉的就労で仕事を始めた今、私のリスカの回数は格段に減りました。なぜなら、周りにはいつも私を応援してくれる方々がいらっしゃり、辛い時や悩みがあるときにはいつも声掛けをしてくださるからです。

その為、「大切な人を悲しませたくない」という思いも生まれ、今ではほとんどリスカという行為に頼らなくなりました。

今自傷行為を行ってしまう方も、こんな信頼のおける存在がそばにいれば自然と自傷行為に頼る回数が減るのではないでしょうか?

自傷行為を辞めるのには周りの協力も必須条件となっています。私のように周りに協力者がいれば、「その人と話をすること」や「触れ合うこと」など自傷以外のストレス発散方法が見つかり、次第に自傷行為から離れられると思います。

自傷行為を行っている人で「やりたくてやっている人」はあまりいないと思います。ストレスにさらされ、頼れる人もいない中、一人で悩んで自傷という行為で苦しみを紛らわしているのでしょう。

そんな人たちを、どう支援するのがいいのか、またリスカ経験者の私が考える「周りの人の自傷者との付き合いかた」について述べていきたいと思います。

■自傷行為を否定しないで!~当事者を傷つけない対処法~

自傷行為をしている人と関わるにあたって、まず自傷行為という行為自体を否定しないでほしいと思います。

いきなり否定されると、当事者は「自傷行為を否定される=自分自身を否定されている」というような感覚に陥ります。自傷行為をしている人は、その行為によってこころの安定を得ているのです。

そこで、望ましい対応としては「自傷行為をしてしまっている当事者をありのまま受け入れてあげることです。

もし自傷行為をしている人がいたらまずは傷の手当てをしてあげてください。そのうえで、「何か悩みがあるの?」と周りが心配していることと、悩みがあったら力になることを伝えます。

当事者が悩みを打ち明けてくれたら、まずは「ありがとう」と勇気をもって話してくれたことに対しての感謝の意を伝え、本人の悩みをじっくり聴く体制をとります。

本人が悩みを語ってくれたら、本人と一緒になって悩み解決のための対策を立てていきます。この「一緒に」が大切です。

悩みを聴いただけで終わるのではなく、解決策まで一緒に考えるという「共同作業」によって、悩みを共有し、当事者の孤立感を解消する効果があります。

自傷行為を行う方の中には、自分の悩みを自ら他人に相談するのが苦手な方が多いように思います。そのストレスが溜まって、自傷行為に走ってしまうのです。

その為、こちらが様子を見ていて「落ち込んでいるかな?」「悩みがあるのかな?」と思ったら、ひと声かけてあげることによって、当事者に「自分のことを心配してくれる人がいるんだ」という安心感を与えることができます。

自傷をする人と接する場合のポイントとしては、「見える傷の裏には見えないこころの傷もある」ということを理解して接することです。例えばいじめを受けていたり、なんらかの精神疾患が潜んでいる、ということがあるかもしれません。

また、援助する側も、ストレスや負の感情をため込まないようにすることが大事です。当事者を支援する側が倒れてしまっては元も子もありません。

その為には、援助する側も1人ではなく様々な人や機関と連携してネットワークを活用しながら支援することが大切となってきます。

自傷行為に対しては「みんなで」対処していくことが大切だと思います

■周囲の人にできることとは?~援助法まとめ~

いかがでしたでしょうか?自傷経験者の私ですが、今では信頼のおける存在がいつもそばにいることによって、リスカはほぼしていないといって良いくらいにまで回復しました。

自傷行為を克服するためには、当事者の努力も必要ですが、周囲の協力も欠かせません。自傷行為を行っている人をサポートする側のポイントとしては、

自傷行為に対して否定的な態度をとらず、受容的な態度で接する
その行為を責めたり叱責しない
悩みを聴いて終わるだけでなく、一緒に「解決策」まで考える
いつも味方でいることをしっかり伝える

などが必要なのではないかと思います。

身近な人には、当事者に寄り添う存在であってほしいと思います。

いつの日か、自傷に頼らず生きていける強いこころを育めるよう心から願います。

こちらのコラムでも「自傷行為と精神疾患」などについて解説しております♪⇩

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。