拒食症第1章では、主に、拒食症の症状や筆者の体験談、診断基準などを紹介しました。
第2章では、拒食症当事者に対して周囲ができるサポートや、治療の基本的な流れなどを紹介していきたいと思います!
拒食症の治療では、本人の自己肯定感を上げることが大切です。自己肯定感を挙げることによって「痩せなきゃ!」という囚われから解放されていきます。
病識がない? 家族や周りの気づきが大切!
拒食症など摂食障害の場合、患者が自ら体調不良を訴えることはほとんど無い傾向にあります。
それは、低体重になっても「自分は太っている」という思い込みなどがあったり、「自分は病気である」という考えが欠けていることが理由だと言えます。
ここで重要になるのは家族など周囲が気づき、適切な治療が受けられるよう本人に病院を受診させることです。
前章にも書きましたが、拒食症は命を落とす危険性がある病気です。
本人の命を守るには、家族や周囲だけじゃなく、社会資源(医療機関・専門機関等)が連携して命を守らなければいけません。
家族の支援だけで症状がなくなればいいですが、専門家ではない人たちが「治癒した」と自己判断するのは大変危険です。
その為、摂食障害を疑う場合は医療機関を受診して、専門的な治療(身体だけでなく心の面の治療も併せて)を行っていくことが必要です。
拒食症の治療はどんなもの? 基本的な流れを紹介!
拒食症の症状がまだ軽い場合は、病院に通院しながら治療を行っていきます。
初めて病院に行った際は、医師による問診が行われます。
まず、どの科で診察を受けるのが良いのかというと、拒食症などの摂食障害の背後にはこころの問題(うつ状態や人間関係のトラブル、自傷行為等)が隠れていることがあるので、心療内科や精神科を受診するのが望ましいと思います。
しかし、
「どうしても精神科(心療内科)には抵抗があるなぁ……」
という人は、まずはかかりつけの身近な病院に相談し、摂食障害に対応する病院を紹介してもらうのもいいと思います。
初めての問診では、
・どのような症状が
・いつ頃から
・どのように変化してきたか
・発症のきっかけはどんなことだったか
・本人の日常生活の様子
等の基本的な質問から始まります。
そして、血液検査などの様々な検査を行います。そのうえで、栄養状態や拒食症が理由で体に悪い影響が出ていないか、摂食障害と似た別の病気の可能性はないか等を調べます。
基本的な治療としては、食事療法・生活指導・心理療法を中心に行います。食事療法では、まず「1日3食、栄養のある食事を摂る」ということを身に付けていきます。
患者本人はそもそも「食べること」に抵抗を感じるので、医師と相談しつつ〝食事の量を決めて、段々増やしていく〟というのがポイントです。
回復に向けて一歩ずつ!~前向きな姿勢を大切に~
その際に、家族等が見守り、本人に対して励まし等の本人がポジティブになれるような声かけ(「頑張って食べているね!」等)をしていくことによって、本人が少しでも食事を食べられるようサポートします。
そして、少しでも食事を摂れたり、またゆっくり時間をかけてでも食べきれた場合には、褒めることが大切です。
褒められれば、本人の自己肯定感もあがりますし、「食事をすることができた!」という達成感も感じられると思います。
この「3食決まった時間に食事を摂る」ことの狙いとしては、
〝3食食べても体重はいきなり増えたりしない〟
ということを本人に理解させ、〝3食食べることが普通〟という意識を持たせることです。
また、食事療法と並行して、心理療法や薬物療法も行われます。摂食障害は、抑うつ症状なども併発することがあります。
拒食症の背後に潜む影 こころの面の治療方法とは?
急に痩せたり、低栄養状態が続くことによって、ホルモンバランスを崩したり、「痩せたい」という強い思いがストレスとなって発症することもあります。そこで、精神面のケアも必要となってくるので、心理療法も併せて行われるのです。
よく行われている療法は「認知行動療法」です。
認知行動療法では、自分の姿に対する歪んだボディイメージや、体重に関わる偏った考えを見直し、こだわりや偏った自己評価を取り除いていくことを目的とします。
その他にも心理療法では、
・動機づけ面接
・対人関係療法
・精神分析的心理療法
などありますが、詳細は割愛させていただきます。
薬物療法では、拒食症に対応する薬もあるものの、これらを服薬しても治療完了を遅らせているだけ、という研究もあります。
そして医師との相談のもと、慎重に、また適切に使うのがよいと思います。
また、精神症状(不安、焦燥、不眠等)を抱えていることもあるため、医師の指示のもと、症状に合った薬を用いる場合もあります。
本人だけの問題じゃない!~周りの協力的態度が重要~
最後に、拒食症患者本人や周囲の人ができることを紹介します。
患者本人が自分の症状で悩んでいる時には、一人で抱え込まず、周囲の人に相談してください。そして、病院等で「拒食症です」と言われたら、それをきちんと受け止め、「自分は病気なんだ」という意識(病識と言います)を持つことが大切です。
「自分は病気なんだ」と認めることによって、自分の症状への向き合い方も違ってきます。自分が病気だということは最初は受けいれにくいかもしれませんが、しっかりと病識を持ち、治療にも積極的に取り組んでいけるようになるはずです。
挫折しそうになる時もありますが、そういったときは、周りを頼りましょう。
周囲の人にも「私はこういう病気なんだよ」と分かってもらうことによって、きっと手を差し伸べてくれる人もいると思います。病識を持つ・周囲に助けを求めるというのは、治療を進めていくうえで、とても大切なことなのです。
周囲にも治療に協力してもらうことによって、「みんなが応援してくれているから頑張ろう」という思いが出てくるでしょう。
しかし、周りを喜ばせようと思って無理に一度に食べたりしなくても大丈夫です。医師に指示された量を、少しずつ食べていけるようにしていれば、だんだん食べる意欲も戻ってくるでしょう。
ここは、自分も周りも頑張り時です。そして最終目標は、毎日3食、医師の指導の下、決められた量を完食することです。
しかし、治療を初めても、そんなに早く結果が出るわけではありません。
医師の指示に従い、薬物療法、食事療法や心理療法を行うなど色々な治療法を組み合わせていくことよって、食べることに関する考え方や食べる意欲が戻ってくれば、みんなと食事を楽しんだり、また家族と食卓を一緒に囲めるようになります。
「食べる」ことに対する喜びが再び感じられるようになれれば、嬉しいですよね。その為には周囲の協力を得ること、やはり一番は本人が前向きに治療に取り組むこと。
「病気を治すんだ!」という強い気持ちをもって、治療を進めてほしいと思います。
もち猫も応援します。健康で元気なからだを取り戻しましょう!
著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。