アスペルガー症候群~生きづらさを理解する~

発達障害

皆さんは、「アスペルガー症候群」という障害を知っていますか?

以前は独立した病名だったのですが、今は「自閉症スペクトラム(ASD)」という発達障害の中に含まれています。

今回は、その「アスペルガー症候群」について解説していきます!

アスペルガー症候群とは?

アスペルガー症候群は、自閉症とは違い言語の発達には特に異常はないため、幼い頃にこの疾患だと診断されないこともあります。

しかし、成長とともにコミュニケーションの障害、対人関係の不器用さ、ある物事へのこだわりなどが現れ始め、診断が下りるという場合もあります。

主な特徴としては、

・人間関係が築きづらい
・コミュニケーションが不器用
・その場の空気を読むのが苦手
・パターン化した趣味や活動
・常同行動(※
)

等があります。

(※ほかの人から見ると意味のない行為に見えるが、本人が不安や怒りなどの
 気持ちを安定させるために行う行動。
)

自閉症と違い言語の遅れはないのですが、場の空気を読めなかったり(いわゆるKY)、分だけが一方的に話してしまい、会話が成り立たないことがあります。

また曖昧な表現がわかりづらかったり、暗黙のルールが理解できないという特徴もあるため、人間関係を築くのが難しくなってしまうのです。

しかし本人に悪気はなく、自分はどうして人間関係がうまくいかないのか理解できないこともあります。

他にもよく見られるのが、「こだわり・常同行動」です。アスペルガー症候群がある人は、何かをするのにいつもと同じ方法で行うことにこだわりを持ちます。

例えば、

・物の置き場所にこだわる
・毎日同じスケジュールで物事が進まないと気が済まない
・作業を進めるときに同じ手順でやらないとパニックになる
・通勤(通学)時に同じルートを通らないと気が済まない

などです。

このようなこだわりを崩されると、アスペルガー症候群がある人は強いストレスを感じ、癇癪を起こしたり、パニックに陥ってしまうこともあります。

また、自分のこだわりを周囲の人にも押し付け、困らせることもあります。

このように物事へのこだわりや、人の気持ちを察することの難しさ、想像力・柔軟性に対しても苦手な部分があるといえます。

このような特徴を持つアスペルガー症候群ですが、周りの人はどうやったら上手く付き合っていけるのでしょうか?

間w来駕当事者を理解する大切さ

まず、本人やその周囲の人たちが、アスペルガー症候群の特性について正しい知識を持つことです。例えば、本人は曖昧な指示が苦手なので、

「これを後でやっておいて」というよりは、

〇時までにこの作業(作業内容も具体的に)をこの部分まで終わらせてね

と言う方がわかりやすいです。

また、子どもでアスペルガー症候群を持っている場合、イラストや写真を用いて説明するのも有効です。

以前筆者が働いていた施設でも、お風呂の時間が変更になった時など、またアスペルガー症候群がある子どもの場合、画用紙に絵を描いてその子がちゃんと理解できるまで根気強く説明していました。

聞いたことを頭の中で処理するのが苦手な傾向があるため、情報を視覚化する方が伝わりやすいのだと思います。

このように、予定の変更があるときには事前に本人に伝えておくのも対策としてできると思います。

働くようになっても、上司からの指示をうまく聞き取れなかったり、一人で黙々と作業をするのは得意としても、会議など集団の中で意見を述べたりするのは苦手、といった方もいます。

アスペルガー症候群の特性を活かそう!

また、アスペルガー症候群がある人は記憶力が優れている場合も多く、特定の分野に対してずば抜けた知識を持っていることもあります。

例えば電車が好きで車両の名前をすぐ答えられたり、歴史上の人物のことをとても詳しく覚えていたりします。

なので、このような得意分野をアスペルガー症候群がある子が成長していく上で有効に使うこともできると思います。

例えば、駅名が好きならその駅名から漢字を覚えるようにしたり、列車の構造から科学的なことに興味を持てないか考えるなど、試行錯誤していくのも一つの手でしょう。

何事にも、その子の「長所・興味のあること」を伸ばせるように、支える側もその子の長所を認めつつ、ポジティブに接していくのが理想的だと思います。

アスペルガー症候群がある人たちは、苦手な部分(特性)が原因で行ってしまった事を叱責されたりする体験を多く経験する傾向があります。

そのためには、やはり子どもの頃からのケアが大切です。

周囲の手助けも大切!

子どもの頃から特性をしっかりと理解し、肯定的な声掛けや、その子の特性を伸ばせるような働きかけをする事を心がけて接する事で社会性のスキルアップにつなげていくことができると思います。

例えば、アスペルガー症候群がある子が成長していくうえで、ちょっと人より苦手な部分があるからといって、できないことを叱ってばかりいるよりは、できることをいっぱい褒めて育てていく

できないことは、少しずつ周囲の協力を得ながら一緒に解決していく。このような周囲のサポートが大切となってきます。

周りも、そしてもちろん本人も、アスペルガー症候群だからと言って悲観することなど全くありません。

アスペルガー症候群がある人が生活を送っていく上では、自身も努力や工夫が必要ですが、周りにも特性を理解してもらうことが大切です

そのうえで、本人の苦手な部分は周りが積極的にサポートしていくのも、彼らがより質のよい生活を送る上では大切なことです。

アスペルガー症候群がある人たちが差別や偏見を受けることなく、堂々と生きていける社会が訪れることを願います。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。