‶プチ虐待・スマホ依存〟~子育てをめぐる新たな問題~

児童虐待
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皆さんは「プチ虐待」という言葉を聞いたことはありますか?これは、諸富祥彦氏によって提唱された言葉です。現代、スマホに夢中で子供が泣いているのに気づかなかったり、一旦怒り出すとどなりつけたり手を上げてしまう親が増加しているように思われます。今回は「プチ虐待」について書いていきます。

■まず知ってほしい、‟虐待〟と言われている行為とは?

この章では、まず‶児童虐待〟について知って頂きたいと思います。

児童虐待防止法によると、児童虐待は

保護者(親権を行う者、未成年後見人等で、児童を現に監護する者)が、その監護する児       
 童(18歳に満たない者)について行う虐待行為をいう

とされています。

虐待の種類は4種類あり

1.身体的虐待…児童を殴る・蹴る等、身体に外傷が生じる恐れのある暴行を加える事
2.心理的虐待…著しい暴言、無視、面前DVその他心理的外傷を加える事
3.性的虐待…児童にわいせつな行為をする事、またはわいせつな行為をさせる事
4.ネグレクト…著しい減食、長時間の放置等の養育放棄

とされています。

平成29年度の厚生労働省調べ、「平成29年福祉行政報告例」等によると、子どもに対する心理的虐待が半数を超え、ネグレクトも前年比増となっています

今、この「ネグレクト」の新しい形が増えています。それは、「スマホ・ネグレクト」です。

スマホの普及により、LINEで友達と会話を楽しんだり、YouTube等で動画を見たりと、一日中スマホを手放さない人もいます。そんなスマホの害を受けるのが、幼い子ども達です

親はスマホに夢中で、子どもは泣いても気づいてもらえない。甘えたいのに親の目線はスマホの方ばかり。そんな風にして、心に傷を負っていく子どもが増えているのです。

■ 2つのプチ虐待~厳しすぎる親とスマホ依存症の親~

あなたは、子どもをきちんと育てようという思いから厳しく叱りつけたり、怒鳴りつけたりしたことはありませんか?手を上げてしまった事はありませんか?

プチ虐待の1つの形は、「厳しすぎる親」の存在です。怒鳴られたり手を上げられた子どもは、肉体的にも精神的にもダメージをうけていきます。そして、家で厳しくされている分、学校や幼稚園等で負の感情を爆発させています。

つまり、「家ではいい子」なのですが、外では「悪い子(暴れる・癇癪を起こす子)」なのです。友達やクラスメイトに対して暴力を振るったりする攻撃性を持ち、先生の言う事も聞かず何か気に入らない事があるとすぐ暴れだす。

きっと、「家ではいい子」なので、親は学校や幼稚園等でも上手くやっている事と思っている事でしょう。しかし、実際は違うのです。

家でいい子でいる分、外では傍若無人な振る舞いをしてしまうのです。

「うちの子に限って」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、家ではストレスが解消できないばかりか、たまっていく一方です。その為、学校等で負の感情をばらまいてしまう子もいます

子どもを厳しくしつけよう、しっかりしつけようと思って厳しくした分、それが結果的に子どもを追い込むことになり、「プチ虐待」=「小さな虐待」となってしまうのです。

そして、プチ虐待のもう1つの形は「スマホ・ネグレクト」です。

よくあるのが、まだ幼い子どもが隣で泣いているのに、無視してスマホをいじり続ける親。子どもが一生懸命話しかけているのに、スマホをいじりながら上の空で返事をしている親。

皆さんもこんな光景を見たことがあるのではないでしょうか?

親に悪気はないのですが、ついスマホに夢中になってしまって、子どもは無視され続ける事になります。そして、スマホに夢中になっている親に対して一生懸命話しかけている子どもに、親はうっとうしく感じ始め、ついには「キレて」しまいます。キレた親は大声で子どもを怒鳴りつけます。そうすると子どもは恐怖を感じ、大きな声で泣き出します。それでまた親は怒鳴り続ける…。このループが続くのです。

子どもは

1.親がスマホを使い続けていて、自分は無視される
2.自分に興味を持ってほしくて声をかけるが、スマホに夢中な親に怒鳴られる

2つのうちのどちらかの状況に置かれることになるのです。

それが、「スマホ・ネグレクト」なのです。

しかも、0歳から6歳という一番愛情を注がなければいけない時期にそれが行われる事が多いため、子どもの養育にも影響が出ます。

子どもの心の中には「やり場のない怒り」や攻撃性がどんどんたまっていきます。

それを発散させる場所となるのが、学校や幼稚園等なのです。他の子を叩いたり、蹴ったりしてしまいます。親の前と他人の前での素振りは、全く違ったものとなります

家では親から怒られるのが怖く、「良い子」でいる為、学校等から「○○君が乱暴な行為を行っている」と連絡が入っても、親は「まさかうちの子が」と思うのですが、学校等で子どもの様子を実際に見て唖然とするわけです。

■親のスマホ依存急増中!~どっちが大切?スマホor子ども~

LINE等のアプリの普及以降、スマホ依存となる若者が増えています。

スマホ依存とは

スマホの使用を続けることで生活リズムが狂う、成績が著しく下がるなど様々な問題が起きているのに使用がやめられず、スマホが触れない状況が続くと落ち着かなくなる等、精神的に依存してしまう状態

の事を指します。

子どもの世話を放棄するのは「ネグレクト」というので、スマホに依存するあまり子どもを放っておいてしまうのを「スマホ・ネグレクト」と表現します。

どういう人がスマホ依存になりやすいかというと、

・自信がない人
・周りの人から嫌われたくない人
・常に誰かとつながっていないと不安な人

等です。

LINEが来たらすぐ返信する、ツイッターで友達がつぶやけばすぐ「いいね!」や「リツイート」をする。そんな風にスマホに縛られたような生活をしている人が、スマホ依存になりやすいと言えます。

そんな人に子どもがいれば、スマホ・ネグレクトに繋がってもおかしくありません。

さらに問題なのは、子どもが泣いたりぐずったりしている時に、スマホを使って静かにさせようとする親です。つまり「子どもをスマホ依存にさせてしまう」訳です。そして、それに何の問題意識も持たず、放っておく親が増えています。

0~6歳くらいの子どもにスマホを持たせると、その子どもに何かしらの影響を与える事が分かっています。ただ、データがない為、どんな影響かはわかりません。プラスの影響なのか、マイナスの影響なのか、それすらも分かっていません。

もしどうしても子どもにスマホやタブレットを使わせるのなら、親がきちんと管理する事です。ポイントは見せる時間とスマホ等との距離。(0歳~6歳くらいまでの間)
スマホはテレビと違って見る距離が近いです。その為、子どもにスマホを見せる場合は30㎝以上離して、連続して見せるとしたら、約15分間くらいを目安にすると良いと思います。

なぜこのようなことに気をつけなければいけないかというと、子どもは「目が疲れた」という事や「目がぼやける」という事を認識しづらいからです。その為、長時間見てしまって、視力等に影響が出る。この様な事を防ぐためにも、スマホ等を見せる場合は親が徹底して管理していく事が大切なのです。

■プチ虐待を止めるには?~気づいて!子どもの心の叫び~

では、スマホ・ネグレクトや虐待から子どもを守るにはどうするか。

まずは「気づき」です。子どもといるだけでイラっとしている自分、子どもを叱っている時に歯止めが利かなくなる自分、そんな自分にどうか気づいて下さい。子どもに対する悪意や嫉妬、妬みを持っている事に気が付くことが出来れば、自分の行動を制御できるようになる第一歩です。

自分が行ってきたことに気が付くことが出来れば、子どもにどれだけ辛い思いをさせてきたかもわかるでしょう。プチ虐待、スマホ・ネグレクトによって子どもが傷ついたことが分かった時には、「今までごめんね」と言ってギュッと抱きしめてあげてください。

気づき」こそが、知らず知らずの内に子どもをプチ虐待してきた自分を変えるチャンスです。その気づきによって、自分が変化する事ができます。今まで辛い思いをさせてきた分、愛情で包み込んであげてください。

しかし、もし「気づく」事が出来ても、またイラっときてしまったら?
そういう時は、物理的に子どもから離れるべきです。今までプチ虐待を行ってきた親は、反射的に手を上げてしまうかも知れません。ですから、トイレ、車の中、どこでもいいです。とにかく子どもから離れてください。

そして、落ち着いたら子どものもとに戻る。プチ虐待を止めるための第一のステップは、自分のダメだった行動に気づき、もしイラっとしてしまったら物理的に距離をとり、子どもに当たり散らさないようにする。それでいいのです。

自分に「ストップ」をかける事が大切です。常に穏やかでいられる人なんていません。イラっと来たり、何か嫌になってしまったり、そんな事誰にでもあるのです。

でも、子どもの前でだけは穏やかで、大らかな自分でいる。それが大切な事なんだと思います。

子どもが成長していくには「心の安全基地」が必要です。その為には、親は子どもにとって心から信頼できる人物でいる必要があります。だからこそ、子どもの前でだけでも穏やかな気持ちを保つことが大切なのです。

しかし、親も人間です。上にも書いたように、「いつでも穏やかにいられる人」等少ないと思います。

そこで「親の心を守る」事も大切となってきます。親の周りの人や機関、環境がその人を支える事で、親の心がパンクするのを防ぐのです。例えば、筆者の住んでいる県では「ファミリー・サポートセンター」という事業があります。今までは、本来なら地縁・血縁関係で子どもの世話をしていました。しかし、核家族化や地域の人間関係の希薄化が進んできたことから、そういったことも難しくなりました。そこで、地域のボランティア等が親代わりとなり、子どもを一時預かる事によって、親の休息を図るというものです。買い物時や残業時、出張の時に「子どもを預かってくれるところがない!」という時には非常に心強い味方です。

そういったサポートを利用し、子どもを預けて親自身が「1人になる時間」を作ることも大切です。

例えば自分の好きな喫茶店に行ってゆったり過ごしたり、友人と買い物に出かけたりして、息抜きをすることも必要だと思います。そういった時間を過ごすことで、日ごろのストレスを発散すれば、心に余裕が生まれます。心に余裕が生まれれば、子どもに接する態度も変わってくるでしょう。

「私ってもしかしてプチ虐待している?」と気づいてくれたあなたへ。確かに、プチ虐待は良い事とは言えません。でも、まだ「プチ」虐待で済んでいて良かったです。

世の中には、子どもの命を脅かすような虐待を行っている親もいます。その手前で気づけたのですから、今からでも遅くはありません、子どもを心から愛してあげてください。今まで振り上げていた手を、子どもを抱きしめる為の手にしてください。そ‶プチ虐待・スマホ依存〟~子育てをめぐる新たな問題~して、スマホ依存からも卒業してください。子どもにとって、この世界に親はあなた達だけなのです。たくさんスキンシップをとって、愛しているという事を言葉でも伝えてあげてください。きっと、また子どもの最高の笑顔に出会えるはずです。

こちらでは子どもを支配・管理する〝毒親„についてまとめました!ぜひご覧ください♪⇩

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。