子どもを支配する毒親~毒親の特徴と忘れられた子どもの人権~

毒親
Bob DmytによるPixabayからの画像

今、「毒親」と呼ばれる‶子どもを自分の思う通りに扱う親〟が問題視されています。「毒親」という言葉は、スーザン・フォワードの著書『毒になる親 一生苦しむ子ども』(講談社 玉置悟訳)という本をきっかけに派生した言葉だと言われています。一般的には子どもを支配したり、管理する、また暴力をふるう等子どもにとって「毒」になる親の事を言います。今回は、毒親の特徴と毒親の行動が子どもに与える影響について紹介していきます。

■毒親の特徴1~子どもを支配下に置く~

毒親の特徴の一つとして、「子どもを支配しようとする」といった行為があります。例えば、自分(親)の言う事を聞かないと暴力をふるったり、子どもの事を無視する等の行為です。子どもを意のままに動かしたいがために、「○○をしなさい」「○○はしてはダメ」と過干渉になり、言う事を聞かないと罰を与える事によって子どもを支配しようとするのです

子どもが支配下から逃げ出せればいいのですが、まだ幼い子どもだと、経済的にも親の援助が必要です。その為、逃げ出すのは不可能になります。毒親はそういう事も把握していて、「親に従う以外生活していく術はない」と子どもの逃げ道を閉ざしてしまいます。子どもが言う事を聞いている内は機嫌よく、言う事を聞かなくなるとヒステリックに怒鳴り散らしたりして、自分の機嫌次第で子どもに接する態度を変えます。しかし、この事を「あなたの為」「あなたが心配だから」と伝える為、子どもは「私には親(又は養育者)が必要なんだ」という考えが刷り込まれ、つい親の言うとおりに動くようになってしまいます。こうして巧みに子どもの心を鎖につないで、支配下に置いておくのです。

■毒親の特徴2~子どもは自分の所有物~

また、「子どもは、自分をよく見せるためのモノ」として扱う親もいます。いい学校を出て、いい会社に入り、エリートコースを歩めるよう計画する。それを達成する為には教育への投資も惜しまない。そんな親が増えています。時間や手間を惜しまず子どもに色々な習い事をさせたり、塾に行かせたりして、子どもがテストでいい点を取ったりすると他の親に自慢します。

子どもは、小さいうちから習い事をさせられ、友達と自由に遊ぶこともできません。小さいうちは友達と遊んだりするのがストレス発散になるのに、そんな時間も与えられず、親の選んだ塾に通わされ、家でも「勉強しろ」「良い学校に入れ」と言われ続ける。それが原因で子どもが心の病になったり、成績ばかり気にして逆にプレッシャーとなり、不登校となってしまうこともあるのです。

それなのに、子どもの気持ちなど考えず、自分をよく見せる為だけに子どもに鞭を振るい続ける。毒親は、これを「愛情からやっている」と思いこんでいます。暴力を振るうのも、きつく叱るのも、愛情があるから子どものためにやっている。そう思いこんでいるのです。

これは、子どもの事を考えて行われる事ではなく、毒親が「自分の鼻を高くするため」になされる事です。子どもにコストをかけた分、「子どもにはいい結果を出してもらわないといけない」そんな気でいるので、テストの出来が悪かったり、希望する学校、または会社に入れなかったりすると、激怒します。「お前のためにいくら投資したと思っているんだ!」と。

これは毒親の「自分は親なのだから、少々のこと(暴言・暴力)は許されるだろう」という意識からくるものだと言えます。しかし、この様な行為は許されるわけはないのです。子どもにも「人権」はあります。「どういった人生を歩むか」といった「選択権」もあります。あなたが上記のようなことを行う親なら、あなた方は間違いなく「毒親」です。「子どもの為」という名目のもと、「これだけ投資すれば将来いい会社に入れる。高収入が期待できる。そうすれば自分たちの生活も保障される」といった打算が働いているのです。もう一度、あなたの子どもに接する時の態度を見直してみてください。「子どもの人権」をきちんと大切にしていますか?

■毒親からの影響は?~子どもの心に迫る闇~

毒親に暴力を振るわれたり、ひどい言葉を浴びせられることにより、子どもの自己肯定感は低いものとなります。なぜなら殴られるたびに「お前が悪いからだ」「お前のせいで」等と、いかにも「自分(子ども)が悪い」かのように言われ続けるからです。呪文のように「お前のせいで」と毎日言われ続けていれば、子どもも「あぁ、殴られたり嫌な事を言われるのは私が悪いからなんだな」と自然と思うようになってしまうのです。本当に悪いのは毒親の方なのに、です。

そうやって子ども自身も「自分が悪い」と思う事によって、さらに自己肯定感は低下していきます。このような子どもは承認欲求(自分の事を認めてほしい、自分を価値ある存在として認めたいという欲求)や社会的欲求(自分の事を認めてほしいという欲求)がとても強いです。しかし、毒親はそんな感情を認める事もなく、いつも子どもの事を否定し続けます。その為、子どもは自己破壊的な行動に出たり、心の病になってしまったりする場合もあるのです。例えば、解離性障害になってしまう事もあります。毒親から暴力を受けている時に、意識を自分から切り離してしまい、「自分が自分ではない状況」を作り出してしまうのです。これは解離性障害の〝離人〟という症状です。この様に「自分が自分ではない」状況を作ることによって、暴力を受けている際の痛みや、恐怖を感じない様にします。あたかも他人が殴られているのを見ているような状態です。こうでもしないと、毒親からの酷い攻撃に耐える事ができないので、このような状況を作り出してしまうのです。

また、毒親から攻撃されても恐怖から毒親に反抗ができない場合、怒りや葛藤等の気持ちが自分に向き、自分を傷つける行動に出てしまう場合もあります。代表的なものとしてはリストカットや、過剰服薬(OD/オーバードーズ)等があります。リストカットをする子どもの中には、「手首を親だと思って切っている」という子もいます。本当は親の理不尽な命令に背いたり、暴力から逃げたりしたいのに、それができない。だからストレスは溜まる一方で、それを発散する為に自分を傷つける。そうでもしないと心が崩れてしまうから、そんな痛々しい行動に出てしまう子もいるのです。

■子どもたちへ~自分の人生を歩むために~

ここまでは、毒親の行動について見てきました。でも、いくら「毒親」と言っても、その子にとってはこの世に代わりのいない〝親〟という存在です。暴力を振るわれても、いつかまた愛で包んでくれることを願ってしまう。そうではないでしょうか?

でも、毒親が「子どもを愛する親」に戻る事は、難しいです。毒親は、子どもを力で支配する事が当然だと思っています。子どもに無償の愛を捧げる等といった事はまずありません。「子どもは親の言う事に従って当然」「子どもは私の所有物」そんな気持ちでいるので、‶子どもに愛情を注ぐ〟等ということは考えてもいません。自分の言いなりになるような、まさにロボットの様な子どもに仕立て上げてしまうのです。

このコラムを読んでいて、「自分の親も毒親かもしれない」と思った子どもたちへ。
あなたは、いつも親からの暴力や暴言に一生懸命耐え忍んでいる事でしょう。あなたは、
「また親に優しくされたい」「抱きしめてほしい」等と思っていると思います。しかし、それはなかなか叶わない夢です。毒親は、「自分の教育の仕方は間違っていない」と考えているので、暴力や暴言はなくならないかもしれません。

毒親のひどい仕打ちにあっているあなたは、親を憎んでも、その行為に怒りを抱いてもいいのです。もしかしたら、一生懸命いい子になろうとしているかもしれません。親が優しくしてくれた思い出もあるからこそ、親との関係を完全に断ち切るのが難しいという面もあると思います。でも、親にとって都合のいい「優しさ」だったのかもしれませんし、毒親はあなたの痛みを理解していません。

「いつか変わってくれるかもしれない」等といった理想は捨てるべきです。毒親に支配され続ける事も、甘んじて暴力を受け続けなくてもいいのです。

毒親に支配されていたせいで、「自分は○○がしたい」等を考える感覚が鈍っているかもしれませんが、それを徐々に取り戻していきましょう。「○○がしたいから、この学校を目指す」「将来は○○になりたい」といった夢を持つことも大切です。あなたの夢はなんですか?今やりたい事はなんですか?紙いっぱいやりたいこと、夢、希望を書き出してみましょう。

今まで親の為に我慢してきた分、やりたい事はたくさんあるはずです。最初はペンが動かないかもしれません。それでも、書き始めればきっと紙一枚に納まらないくらいの希望があると思います。人生は、親の為に生きるためのものではありません。あなた自身の為にあるのです。その紙に書き出したことをひとつひとつ、実現させていきましょう。

一人で親と闘うのが難しければ、周りの信頼できる大人、例えば担任の先生やスクールカウンセラー、保健室の先生等に協力を求めるのも一つの手です。自分が一番信頼している大人に、毒親から受けている仕打ちの事を打ち明けてみて下さい。きっと力になってくれるはずです。

また、NPO法人等が虐待された子どもの居場所を提供している場合もあります。そこへ子ども自身が逃げ込むのは難しいかもしれませんが、そこは周囲の「気づき」が大切です。暴力を受けている本人が周囲に相談する事によって、周りの大人たちが動きます。もし今、毒親にひどい仕打ちを受けている子どもたちは、周りの大人にSOSのサインを出してください

児童相談所や学校等から〝子どもシェルター〟という所に相談が行くと、虐待してくる毒親から逃げる為に避難する事ができる場合もあります。施設等とのやり取りにより、必要と判断された場合は子どもシェルターでの生活が始まります。シェルターでは、児童福祉についての経験を持つスタッフがおり、子どもの相談に乗ったり、見守りを行います。食事は提供されるところもありますし、キッチンが共有になっていて子どもたちが作ったりとそれぞれです。子どもシェルターにいる間は、他の子どもたちと一緒に規則正しい生活リズムで、安心・安全な生活が保障された生活を送ります。

子どもの暮らしていた家に戻る事もありますが、他にも就職したり、自立支援ホームに入所する等、元居た家には戻らず、自立して自分の人生を歩んでいく子どももいます。保護の機関としては、2週間~2か月間となっているところが多いようです。

毒親は、子どもの一生を台無しにします。だからこそ、早めの対策が必要なのです。早いうちに毒親との泥沼化した関係を断ち切っていれば、いつまでも親に執着する等という事はなくなると思います。「毒親との関係を断ち切る」というと、親を見捨てる様に考えられる方もいらっしゃるかもしれません。でも、それはあなたの人生を切り拓くには絶対に必要な事なのです。

あなたは、あなたの人生を歩むために生まれてきたのです。親の人生を背負う為に生まれてきたわけではありません。あなただけの夢を持ち、実りの多い人生を送れるよう、筆者も願っています。

こちらでは〝スマホ依存する親、プチ虐待〟についてまとめました!ぜひご覧ください♪⇩

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。