マニピュレーターとは?~他人を支配しようとする人たち~

心理学

最近、マニピュレーターという言葉を聞くようになりました。マニピュレーターとは直訳すると「操る者」という意味です。

他人をずるいやり方で利用しようとしたり、陥れたりしようとする人のことを言います。


あなたの周りに、こんな人はいませんか?

・いつもは優しいのに、時々こころにグサッとくるようなことを言う人
・人当たりがやけによく、抜け目のない人
・正義などを盾に、あなたを批判してくる人
・出世や評価のために、他人を蹴落とそうとする人

そんな人たちは、マニピュレーターといってもいいかもしれません。

それでは、そんなマニピュレーターと呼ばれる人たちについて見ていきましょう。

■マニピュレーターってどんな人?

前述しましたがマニピュレーターというのは「操る者」という意味を持っており、自分の利益のために他人を操作したり、陥れようとしてくる人のことを言います。

最初は「いい人だな」と思っていたのに、付き合っていくうちにだんだんこころが疲れていく……。そんな人はいませんか?

「親切」と「理不尽な態度」という背反した行為が交互に行われ、次第に自分のこころが他の人に操られているように感じる。そのような態度をとってくる人を心理学ではマニピュレーターといいます。

例えば

・「その案いいね!」と応援するようなことを言いつつ、成功した際に手柄が自分のもののように振る舞う同僚

・「期待しているよ!」と言ってくれたのに、些細なミスをしたことを怒涛の勢いで怒鳴ってくる上司

こんな人たちも、マニピュレーターに当てはまります。

2010年に、アメリカの心理学者ジョージ・サイモン氏が豊富な臨床経験から分析し「人を追い詰め、そのこころを繰り返し支配する者」を「マニピュレーター=潜在的攻撃性パーソナリティ障害」と名付けたのが広まることになったきっかけです。

マニピュレーターは、人当たりが良く、うわべはとても穏やかに見えます。しかし、こころの奥には「自己の利益のためには何でもする」という黒い部分を持っているのです。

自分の利益を得るために他人をうまく利用し、常に好戦的で、手口はとても巧妙です。

しかも、本人には「罪悪感」といったものはないのです!

「私が悪かった」と言いながら、こころの中では何とも思っていません。

それでもターゲットとなっている人は「この人(マニピュレーター)はいい人なんだ」と思いこまされているため、何かトラブルが起きても「悪いのは自分なんだ」と自分を責めてしまう始末。

自分がコントロールされていることに気づかないのです。

これが他人のこころを操るマニピュレーターの怖いところだと言えるでしょう。

例えば仕事に対して「何でもサポートするから言ってね」と言いつつも、何か起こると「あなたのせいで……」と失敗をあなたのせいにし、罪悪感を押し付ける。

しかし、ターゲットにされている人は反撃したりはしません。何せマニピュレーターのことを信頼しきっているのですから。

逆に「あんなに一生懸命手伝ってくれていたんだから私が悪いんだ」と自責感を抱いてしまうこともあります。

それくらいマニピュレーターは他人のこころを操るのが上手なのですね。

結果的に批判された人は「これ以上迷惑をかけてはいけない」「期待してくれているんだから応えなければいけない」と、マニピュレーターの意のままになってしまうのです。

このようにして最初は友好的・協力的な面を見せるマニピュレーターですので、信頼してしまう人も少なくはないでしょう。

しかし、ある程度親しくなって相手の弱みが見えてくると、攻撃的な本性で相手をとことん突き落とそうとします

自分が出世をしたり評価を上げたりするためなら手段を選ばない、それがマニピュレーターです。

そんなマニピュレーターの特徴を挙げますと

・話をはぐらかす
・問題をすり替える
・相手の羞恥心を刺激する
・さも自分が被害者のように演じる
・人のせいにする
・相手に怒りをぶつけてコントロールする
・相手を脅す

などです。

この様な手を使って相手を支配し、利用しようとします。

■マニピュレーターの心理

マニピュレーターが行ってくる心理的攻撃のことを「カバードアグレッション」といいます。

先ほど挙げた例のように「いい案だね!私も手伝うから何でも言ってね!」と言いつつ、いざ失敗したとなった時に「あなたのせいで……」などといってあなたを責めるような手法のことです。

「いかにも味方のようなことを言っていたくせに!」とイラっと来ますよね。

しかし、マニピュレーターは話をはぐらかしたり自分のせいにならないように上手く話を持っていくのが得意です。

そのため本当はあなたが被害者なのに、周りはマニピュレーターの方が被害者であるという風に捉えるかもしれません。

巧妙な話術や手口を用いて、いかにも「自分が被害者である」という風に持っていくのが上手いのです。

さらに

「私はやりたいのですけど○○さんがダメと言っているのでやれません」

などと‶自分のやりたくないこと〟を指示された時にいかにもあなたがやらないよう指示を出しているようにすり替える時もあります。

これは「自分のせいで失敗した」という現実を受け入れたくないために行う言動でもあります。

「自分は悪くない・自分の方が有利に立ちたい」という気持ちもあり、何とかしてあなたに非がいくように立ち回ります。

周りの意見や忠告にも一切耳を傾けません。相手に罪悪感を抱かせ、相手が「自分が悪いんだ」と思うように仕向けていくのです。

マニピュレーターは、相手を自分の支配下に置くことで満足するのが特徴です。

あなたの「あの人と上手く付き合わないと孤立しそうだ」という気持ちや「あの人の機嫌を損ねたらまずい」と顔色を窺っている所に上手く漬け込んできます。

しかし、孤独を嫌うマニピュレーターは‶本当は自信がない人〟でもあります。

周りに取り巻きがいないと落ち着かない、心配になる、自分に不利益なことが起こりそうなどといった心理から、他人への配慮が欠け、マニピュレーターになってしまう可能性があるのです。

そんな風にしてマニピュレーターになった人は、他人への心遣いや配慮が欠け、自己中心的な性格になってしまいます。

しかし自分をマニピュレーターと自覚している人は意外と少なく「結果的に相手を傷つけてしまう」ということもあるのです。

そして自分を優先する気持ちが行き過ぎると「他人を犠牲にしてもかまわない」と思うようになってしまいます。

こういったタイプの人はどこに行ってもいます。そのため、あなたなりの「マニピュレーターとの付き合い方」を覚えておかないと、人間関係で苦労することになります。

■マニピュレーター攻略法

★マニピュレーターという存在を知ろう★

まずは‶マニピュレーター〟という「ずる賢く人を操ってくる人物が存在する」ということを知ることが大切です。

良心や配慮といったものが欠けているため、「ごく普通の人」として接すると痛い目を見ることになります。

そのため「世の中には人の気持ちを踏みにじり、自分の利益しか考えない人も存在するんだ」ということも頭に置いておかなければなりません。

世の中全ての人が「いい人」であるわけではないのです(全ての人が悪い人でもありませんが)

そこで、会社の同僚などと接する場合は‶適度な危機感〟をもって対応していくのがいいと思います。

絶対的に信頼できる人はそうは限られています。そこを見抜く目も必要となってくるでしょう。

★行動で判断しよう★

マニピュレーターは、前述のように一見「いい人」であることが多いです。

そのため、マニピュレーターから攻撃されても「今日は機嫌が悪いのかも」「何か自分に非があったのかも」とつい振り回されがちになってしまいます。

そうなるとマニピュレーターの思うつぼです。

相手のことばかり考えて肩入れしてしまい何かあるごとに非をかぶっていたら、気づいた時には泣き寝入りしなければならない状況にあった、などということにもなりかねません。

ですから前述したようにマニピュレーターの傾向があるな、という人には‶適度な危機感„をもって接し、意図ではなく行動だけを見ることが必要です。

例えば「うっかり秘密を漏らしてしまった」というマニピュレーターの「うっかり」という意図よりも「秘密を漏らしてしまった」という行動に目を向けるべきです。

「なぜ」そのようなことをしたのかということよりも、その「行動」に目を向けることでその人がマニピュレーターであるかどうかの判断が付きます。

もしその人がマニピュレーターの傾向を持っていたら、距離を置いて接した方がいいかもしれません。

★断る★

マニピュレーターの傾向がある人に何か頼まれたとしたら「今この案件があって手一杯で……」と断ってしまいましょう。

何でもかんでもマニピュレーターの言いなりになっていては、被害を受けるばかりか、自分の評価が下がってしまう可能性もあります。

そういったことから「これは自分を利用しようとしているな」と感じた時はマニピュレーターの要求をきっぱりと断ってしまうのも一つの手です。

つまり「相手に主導権を握らせない」ということです。

このようにして「断る」ことにより、マニピュレーターに「自分は理不尽な要求をしている」ということを自覚させるきっかけにもなります。

「あなたが自分(マニピュレーター)の要求を断った=あなたはいつも自分に従うような存在ではない」ということを行動で示しましょう。

★自分の弱みを理解する★

マニピュレーターはあなた(相手)を選んでつけ込んでくるため、その「つけ込むすきがあるかどうか」を自分でも知っておくことが大切です。

例えば

・自分に自信がない
・人のことを悪く思えない
・理詰めでものを考えすぎる
・依存心が強い

などといった人はマニピュレーターのターゲットにされやすい性格と言えます。

自分に自信がないためいつも人の意見に従いがちで、何か間違いがあってそれが相手のせいでもなかなか「相手が悪い」と言い出せない。

そして依存心が強いため「相手が自分のことを思ってやってくれている」と感じると「あの人(マニピュレーター)はいい人だ」と簡単に思いこんでしまう。

そんな人たちをマニピュレーターは獲物として見ています。マニピュレーターの餌食にならないためにも、自分の特性を知っておくことは良い対策と言えるでしょう。

★Win-Winな合意を結ぶ★

マニピュレーターは、自分の利益になることをいつも探しています。

もし今あなたがマニピュレーターに支配されかかっているなら、「Win-Winな合意を結ぶ」ことが根本的な解決に繋がる可能性があります

例えば仕事についてならば「(面倒な案件について)これは僕が担当させてもらうから、他の案件の協力してくれないか?」などです。

マニピュレーターも「利益が得られる」と分かれば、手を引いてくれる場合もあるでしょう。
そもそも、マニピュレーターは「自分の利益を得るために」あなたの邪魔をしたり、支配しようとしているわけですから。

そこで「面倒な案件を引き受ける」代わりに「妨害をやめてもらう」というWin-Winな契約を結ぶのです。

面倒な案件を引き受けることによってマニピュレーターに得をさせてしまうことにはなりますが、これからずっと対立して仕事をしていくよりはいいですよね。

そのためマニピュレーターに手を引いてもらうには「Win-Winの合意を結ぶ」ことが有益だと言えます。

■まとめ

マニピュレーターとはどんな人か、またどんな行為をしてくる人か、ということからマニピュレーター攻略法まで綴ってきました。

マニピュレーターは自分の利益を得るために巧妙な手口であなたを操ろうとしてくるでしょう。

そんな人の言いなりになっていてはいけません。

「いい人だから」「自分のことを思って言ってくれているんだから」などと間違った捉え方をしていると、最終的には泣き寝入りすることになってしまいます。

マニピュレーターの疑いがある人とは「本当の善意で言ってくれているのか」「自分を利用しようとしていないか」など‶ちょっとした疑心を持ちつつ付き合っていくのが一番です。

「すべての人を疑え」とは言いませんが「この人は気を付けた方がいいな」という人にはマニピュレーターの可能性がないかどうか、見極めを行ってほしいと思います。

今現在、実際にマニュピレーター(と思われる人も)と関わっているあなたへ。あなたの人生なのですから、誰もあなたを支配する権利はありません。マニピュレーターの言うなりになる必要もありません。

世の中にはいい人ばかりでなく、マニピュレーターのような人も存在するんだということを頭に入れつつ、より良い人間関係を築いていってほしいと思います。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。