みなさんは、「ソーシャルワーカーの相談支援」と聞いて、どのようなことをするかピンとくるでしょうか?なかなかどんな内容かなど想像もしづらい言葉だと思います。今回は、ソーシャルワーカーの相談支援とはどういったものかという大まかな流れをワーカーの視点から紹介して行きたいと思います。
■ラポール(信頼関係)の形成がカギ! 面接の始まり
ワーカーがクライエント(相談者)と出会うルートとしては大まかに3つの道があります。
1.アウトリーチ(ワーカーが積極的に外へ出て働きかけること)によって支援が必要な人を発見する
2.本人自ら支援機関を訪れて面談をする
3.家族や友人など周りの人から連れられて支援機関に来所する
の3つです。
クライエントとは、支援を必要としている人のことを言います。ワーカーは、これらのルートで支援機関を訪れた人に対し、「よく来てくれましたね。ありがとうございます。」等まずは来てくれたことに対するねぎらいの言葉をかけます。
相談に来るまでに様々な葛藤の中で苦しんでいた中、勇気を出して相談に来てくれたので、それを称え、またワーカーを頼ってくれたことに対して感謝の意を表すことが大切だからです。
クライエントと話をする場は、照明や香りなども落ち着いたものに統一し、気持ちが落ち着く環境に整えます。
クライエントが悩み事などを相談する上では環境を整えることもこころの安定につながり、話をしやすくなる可能性もあるからです。
インテーク(初回面接)開始時には、ワーカーは自分や自分の所属する機関に対する説明をし、クライエントにもワーカー自身のことを知ってもらいます。
クライエントと話をする準備ができたら、クライエントの主訴やニーズを把握するとともに、ラポール(信頼関係)を築けるように努めます。
クライエントとの話をする際に大切な姿勢は傾聴と受容、共感的理解です。クライエントの話をきちんと「聴く」姿勢を示し、ありのままを受けとめることが重要となってきます。
「聴く」姿勢とは、あいづちやうなずき、言葉の要約や繰り返しを行うことによって「あなたの話をきちんと聴いていますよ」という姿勢を示すことです。
インテークの場面では、クライエントの生活や社会上の問題を的確に把握して、適切な支援機関を判断することが大切です。
ワーカー自身の属する機関が支援可能であれば、支援可能なことを伝えます。もしワーカー自身の能力や所属する機関で対応できなければ、ほかの適切な機関へとつなげ、クライエントが支援を受けられるようにします。
この段階でもう一つ必要なのが、「クライエントの支援を受ける意思の有無」と「クライエントに本当に支援が必要か否か」です。
これらを見極めつつ、支援が必要となれば、アセスメント(事前評価)と呼ばれる段階に移っていきます。アセスメントは、クライエントがその機関を利用することを決めたことを受けて始まります。
この段階では、クライエントがどのようなことについて困っているかやその背景についての情報収集をし、解決への糸口を探る段階となります。
ここでいう「情報」とは、こころやからだの健康、住環境、障害、生活の状況、家族の関係性、経済状態などを言います。
「障害が理由で働けなくて困っている」や「こころの調子が悪いけれどどうすればいいかわからない」など、クライエントの主訴を聴き様々な社会資源(制度、施設など)を利用することを考えながら、計画立案に向けて道筋をつけていく段階です。
アセスメントでは、クライエントを取り巻く家庭や学校などの環境も同時にアセスメントを行い、その情報を活用していきます。
クライエントの社会生活や日常生活の全体性を見て、どれがクライエントの抱える問題に関連しているかを検討できる広い視野が必要となります。
また、クライエントのストレングス(強み)にも目を向けることが大事です。そのストレングスをクライエントの問題解決にどのように活用していくかがカギとなると思います。
■支援プランの策定 社会資源を有効的に活用しよう!
支援計画の策定の段階については、プランニングと呼びます。クライエントへの支援についての具体的な目標と方向性を定める時期です。
問題の解決にあたっては、「問題の解決の主体者はクライエントである」という意識を高めていきます。
クライエントの意識を高めていくことによって、クライエント自身が問題の解決について積極的な姿勢を見せてくれることもあります。そのような姿勢を大切にしていくことが必要です。
そして、この段階では支援の最終目標(ゴール)と小さな目標(ターゲット)を明確にしてきます。
この「ターゲット」と呼ばれる小さな目標を一つひとつ解決していくことによって、最終目標へ近づけると思います。
そして、ゴールに向かって「誰が、何をするのか」「どんな社会資源を利用していくのか」というのを決定していくのもこの段階です。
目標が決まったら、自立支援計画や個別支援計画の策定を行います。この計画などは関係機関や関係者間でも共有される可能性もあります。また、計画策定時にはクライエントも参加できると望ましい、とされています。
クライエントの抱える問題の種類によって支援計画はそれぞれ異なってきます。その為、次の段階である介入が正確に行われるよう、「誰が、いつ、どのように」行っていくかも具体的に決定することが大切となってくるでしょう。
介入(インターベーション)の段階では、人、環境、人と環境の相互作用をターゲットとしていきます。
この段階は、プランニングによって立てた計画を実施する段階と言えます。支援計画に基づき、社会資源とクライエントを結び付けていきます。
クライエントがサービス等を利用できるように組織等に依頼をしたり、施設やサービス等社会資源の利用の仕方について助言なども行うこともあると思います。
「サービス等」の中には、もちろんインフォーマル(非公的)な資源も含まれており、民間団体や精神保健福祉ボランティアなどもその中にあると言えます。
インフォーマルな社会資源には、クライエントの家族も含まれます。家族を一つのシステムと捉えることにより、当事者の家族の協力でクライエントの困りごとの解決ができないか可能性を探ります。
また当事者の家族に対しては、クライエントへのかかわり方や、トラブルが起きて困ったときにどこに相談すればよいのかなどを伝えます。
家族という身近な人に協力を依頼することによって、当事者の課題克服に向けて取り組んでいくことも大切です。こういったインフォーマルな社会資源を利用することも問題解決にはプラスの要素となってくると思います。
この段階で重要なワーカーの姿勢は、「支持的態度」だと思います。支援計画に基づいてクライエントが変化しようと頑張っている態度を支え、共に歩んでいく姿勢が大切だと言えると思います。
クライエントの努力や能力を評価し、支持的な態度で働きかけていくことによって、クライエントは自主的な変化をもたらすでしょう。
クライエントは、自分一人で問題に取り組むのではなく、家族や友人、支援機関などの社会資源、そしてもちろんワーカーの力も借りながらプラスの方向へ変容していくよう努力していく姿勢が望ましいと言えます。
■支援はうまくいっている? モニタリングから支援終了まで
介入(インターベーション)の時期が終わると、次はモニタリング(経過観察)の時期に入ります。
この段階では、支援を展開している間に、目標通りに計画が進行しているかなどを定期的に観察する時期だと言えます。
主に、支援を開始したときからクライエントに変化があったか、またクライエント自身の取り組みの進み具合なども確認していきます。
モニタリングの対象としては、クライエントやその家族、利用している社会資源などが含まれます。
クライエントに何か不都合が起きていないか、また支援サービスの提供は順調に進んでいるかなどを確認することも大切だと言えます。
何かクライエントに不都合なことが起きていたり、計画通り支援サービスの取組が進んでいないようであれば、「再アセスメント」という段階に移っていきます。
再アセスメントでは、新たに把握した情報をその都度ワーカーとクライエント共に再評価していくことによって、クライエントの置かれている状況などを理解していく段階だと言えます。
必要に応じて、関係者や関係機関とのサービス担当者会議を開くことによって、クライエントの支援の方針についても話し合いをすることがあります。
再アセスメントでは、新たな問題の解決を図ることと、また新たなニーズができていないか再確認することなどによって、問題の複雑化を防止することが必要となってくるでしょう。
そして、問題の解決が図られ、支援の必要がなくなった時、またクライエント自身でうまく対応できるようになった時には、支援の終結の段階を迎えます。
この段階では、クライエントが支援の終結に向かっていくにあたって「ワーカーから見放されるのでは?」「一度関係が終わってしまったらもう支援を受けられないのでは?」という不安を抱くこともあると思います。
その不安を最小限に抑えるためにも、ワーカーは、将来新たな問題が生じたときに、再び支援関係を結ぶことが可能なことや、受け入れ準備があることなどをきちんと伝え、不安感を取り除けるよう心がけます。
クライエントと支援の終結の時期について話し合いながら、面接の回数を徐々に減らすなどして、クライエントが自立して生活できるように支援していくことが大切だと言えると思います。
このようにして、クライエントの不安を取り除きながら、クライエントが持てる力を最大限に発揮し、自分自身で問題を解決できる力を身に付けていくのを支援するのがワーカーの役割と言えるのではないでしょうか。
■相談援助についてまとめ
以上、相談援助についてワーカーの視点から解説してきました。必ずこの方法や流れをたどるわけではありませんが、大まかにはこのような流れで相談援助が進んでいきます。
ワーカーはクライエントの隠れた「力」を引き出すのが役割と言えると思います。また、その「力」を引き出すには様々な社会資源(施設、サービスなど)を利用する必要があります。その為には、ネットワークを構築しておくことも大切だと言えます。
ソーシャルワーカーはクライエントの味方です。何か悩み事ができて一人では解決が難しいとき、頼ってみてはいかがでしょうか。きっと解決に導いてくれると思います。
著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。