障害者スポーツ スポーツ共生社会を目指して

障害者スポーツ
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2020年には、東京でオリンピック、パラリンピックが開催されます。障害を持っていても、意欲的にスポーツに取り組まれる方はたくさんいます。そこで、今回はパラリンピックの歴史や障害者スポーツの特徴、種類、障害者スポーツへの様々な参加の仕方などについて述べていきたいと思います。

■パラリンピックはどうして始まった? 歴史と流れ

パラリンピックの起源とされているのは、1948年にイギリスのストーク・マンデビル病院で行われた「ストーク・マンデビル競技大会」とされています。

これは戦争で負傷した兵士たちのリハビリテーションとして「手術よりスポーツを」の理念のもとに始められたものです。

1948年、ドイツから亡命したルートヴィヒ・グッドマンはロンドンオリンピックに合わせて車いす患者によるアーチェリー大会を開催しました。

1960年、国際ストーク・マンデビル大会委員会がつくられ、グッドマンが初代会長に任命されました。

そして、その年にオリンピックが行われたローマで、第9回ストーク・マンデビル競技大会が行われました。これが第1回パラリンピックとなったのです。

パラリンピック」という言葉は、「Para(英語のパラレル(平行)の語源)」と「オリンピック(Olympic Games)」という構成から成り立っています。

パラリンピックは、国際パラリンピック委員会(IPC)が主催しています。対象としては、それぞれ競技によって、身体障害(肢体不自由(上肢・下肢および欠損、麻痺))、脳性麻痺視覚障害知的障害など分かれています。

日本ではなかなか障害者スポーツに関心が持たれていませんでしたが、2013年9月に東京オリンピック・パラリンピックが開かれたことで国民の認知度が高まりました。

パラリンピックの正式種目の例としては、重度の脳性麻痺者や運動機能に障害を持つ人のスポーツとしてボッチャ、視覚障害者が対象のスポーツとしてゴールボールなどがあります。

障害者も健常者と同じようにスポーツに取り組めるように、最近では多様な障害者スポーツが展開されています。

次の章では、具体的にどのようなスポーツがあるのか、また障害者スポーツ特有のルールなどについても触れていこうと思います。

■障害者スポーツってどんなもの? スポーツの様々な形

障害者も健常者と同じように、打ち込めるスポーツは多々あります。例えば、車いすテニス、車いすバスケットボール、サッカー、柔道、水泳、陸上競技など他にもまだまだたくさんのスポーツがあります。

障害者スポーツには、障害の特性に配慮されたルールや用具が用意されており、障害があっても楽しめるものとなっています。

例えば、障害者テニスであればコートやネット、使用するラケットやボールなどの大きさは健常者と同じですが、2バウンドまでの返球が認められています。

しかし、プロのトップ選手はほぼ1バウンドで返球することが多く、スピード感ある展開が繰り広げられます。

クアード(恒久的な三肢以上の障害)の選手で、握力がない場合は、手とラケットをテーピングで固定することが許可されています。

また柔道は視覚障害者の競技とされており、ルールは健常者の柔道とほぼ同じです。ただし、視覚に障害があり、相手との距離が分からないため、相手と組んだ状態から試合が始まります。

また、試合中に2人が離れてしまった場合は主審が「待て」をかけ、再び2人が組んだ状態から試合が始まります。

2004年からは、女子の柔道も正式種目となりました。健常者の柔道のように相手と離れることがないので、力強く、迫力ある試合となります。

このように、障害の特性に合わせてルールが定められているので、障害者でも様々なスポーツを行うことができるのです。

2011年にはスポーツ基本法が制定され、基本理念の中で

スポーツは、障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ推進されなければならない

と障害者も健常者と変わらずスポーツに取り組めるよう、障害者のスポーツ参加への配慮についても定められています。

2012年に定められたスポーツ基本計画でも、障害のある子たちへのスポーツの機会の充実、地域のスポーツ施設で障害者も健常者と共にスポーツが楽しめるように、方法や必要な器具などの開発、また人材育成などにも力を入れて取り組まれています。

そして、スポーツ基本計画の中では

すべての人々が幸福で豊かな生活を営めることのできる社会

を、目指すべき社会の姿としています。

このように障害者も健常者と同じようにスポーツに取り組めるよう法律の整備などがなされつつあります。

この法律の目指すべき指針やスポーツの多様性が認められるようになれば、ノーマライゼーションの理念のもとに、スポーツ共生社会の実現へもつながっていくと思います。

■健常者・障害者みんながスポーツを楽しむために

パラリンピックなどの大きな大会でトップ選手が順位を競うのもスポーツの一つの形と言えます。

しかし、スポーツは、競技など順位を争うものばかりでなく、健康維持のためや、仲間づくりのためにも有効な活動だと言えます。

パソコンやスマートフォンが普及し、あまり身体を動かす機会も少なくなってきた、という方もいらっしゃると思います。

そんな時こそ、健常者も障害者もスポーツをする習慣をつけるべきだと思います。スポーツといっても特別なことをする必要はありません。

軽いストレッチから始めてみる、近所をぶらっと散歩してみるなど、簡単なことから自分のできる範囲で始めてみるのもいいでしょう。

どんな運動が自分に向いているか」ということをまず考え、自分のできる範囲で身体を動かしてみよう、という意識を持つことが大切です。

例えば車いすの方でも、家の中でできる限りからだを動かしてみたり、足を動かせる場合はできる範囲で動かしてみる、近くを散策してみる、障害の程度に応じてできる範囲で、からだを動かしてみてはどうでしょうか。

障害者スポーツは様々な種類があり、障害の特性に合わせたスポーツも多々あります。「障害があるから」とあきらめてしまわないことが大切です。

スポーツに興味があり、「何かスポーツに挑戦したい!」と感じたら、地域の中で障害者のスポーツをやっている団体はないか、利用できる社会資源(施設、サービス)はないかをネットやチラシなどで調べてみてはいかがでしょうか。

また、スポーツは、「競技に取り組む」ことだけが「参加している」というわけではありません。

例えば、競技場やパブリック・ビューイングで競技を行っているアスリートを「応援する」こともある意味スポーツに「参加している」といえるのではないでしょうか。

オリンピック・パラリンピックなどのスポーツ選手の活躍を見て、感動したり、喜んだり、泣いたりすることもスポーツ観戦の醍醐味だと言えます。

そのように選手と同じ感情を味わうことで、例えからだをうまく動かせない障害者の方であっても、選手と共に競技へ参加しているという実感を味わうことができると思います。

2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。健常者・障害者関係なく、選手の活躍を期待したいと思います。

■障害者スポーツについてまとめ

障害者スポーツの歴史から、種類、法律まで触れてきました。障害者スポーツの認知度は、まだ高いとは言えないかもしれません。

しかし、最近では法律も整備され、またメディアでも障害者スポーツについて取り上げられることも多くなってきました。

障害があるからスポーツはできないということはありません。障害があっても、それぞれの特性に合ったスポーツはありますし、参加する権利ももちろんあります。

障害者のスポーツを普及していくためには、物理的なバリアフリーこころのバリアフリーが必要となってきます。

まず、スポーツをする環境などの整備、またメディカルケア施設のハードな面の環境を整えていくことが重要です

こころのバリアフリーとしては、「障害という偏見を捨てることによって、障害者も健常者と同じように気軽にスポーツを楽しめるようになると思います

2020年東京オリンピック・パラリンピックでの選手の健闘を祈るとともに、少しでも多くの障害者の方がスポーツに興味を持ってくださることを願います。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。