アダプテッドスポーツって何?~ハンディの有無に関係なく楽しめるスポーツへ!~

障害者スポーツ
WokandapixによるPixabayからの画像

みなさんは「アダプテッドスポーツ」という言葉をご存知ですか?

これはいわゆる「ハンディがある人もない人も楽しめるスポーツ」のことです。

障害(ハンディ)がある人はその人に合った器具を使ったり、障害の種類によって競技を選択し、障害のない人と共にスポーツの楽しみを味わいます。

例としてはバスケットボール、サッカー、ソフトボール、バレーボール、卓球、テニスなどがあります。

どの種目も、ハンディのある人も楽しめるようにルールに工夫が施されていたり、道具に工夫が凝らされています。

これらは、ルールや道具について障害に応じて適応(adapt)させたものと言えます。

このような工夫をすることで、ハンディがある人も健常者も一緒になってスポーツを楽しむことができるようになります。

そんな「アダプテッドスポーツ」についてまとめました。

■障害者スポーツの歴史


この章では障害者スポーツの歴史を見ていきます。

障害者スポーツの貢献者は、イギリスのグッドマン(L.Guttmann)だと言われています。

グッドマンは1948年、第14回ロンドン・オリンピック大会の開会式の日、ロンドン郊外のストーク・マンデビル病院内で、戦争で傷を負った脊椎損傷による車いすを使用している下半身麻痺の患者16人に向けたアーチェリー大会を開きました。

この競技会は、52年にオランダからの参加者を得て、国際的な大会へと発展しました(国際ストーク・マンデビル大会<ISMG>)

現在は、国際ストーク・マンデビル車いすスポーツ連盟(ISMWSF)となっています。

この競技会は、ローマ・オリンピック大会のあと、同じ会場と選手村を使って開催され、それ以来オリンピックが開かれる年にはイギリスを離れ、オリンピックと同じ開催地で開催するという原則もできました。

76年には、主に手や足の切断者と視覚障害者を対象としていた国際障害者スポーツ協会(ISOD)と共に、カナダで障害者オリンピック球技大会を開催し、80年には対象者に脳性麻痺者も加わりました。

今では60年の大会を第1回として、大会のことを「パラリンピック」と呼び「障害者のオリンピック」として発展しています。

国際的には76年にパラリンピック冬季競技大会にまで高まり、98年の長野大会(第7回)では、知的障害(精神発達遅滞)の種目も正式に位置づけられています。

障害者スポーツの団体としては、1924年から4年に1度国際スポーツ大会を実施している国際聴覚障害者スポーツ委員会(ICSS)や1968年から知的障害者(精神発達遅滞者)のためのスポーツ大会を実施している国際障害者スポーツ協会 (ISOD)があります。

国際的には、1978年に脳性麻痺者国際スポーツ・レクリエーション協会(CP-ISRA)が発足し、ICOSを母体に、国際盲人スポーツ協会(IBSA)が独立しました。

そして国際障害者スポーツ協会 (ISOD)は手や足などの切断者を中心とする組織となりました。

1986年には国際精神障害者スポーツ協会(INAS-FMH)も発足しました。

これら障害者のスポーツ団体の総括団体として、国際パラリンピック委員会(IPC)が1989年に構築され、障害者スポーツの統合を目指すとともに、オリンピック競技大会との併合も勘案しているところです。

以上、障害者スポーツの発展と、障害者スポーツ団体の発足、推移についてまとめさせていただきました。

そんな「障害者スポーツ(アダプテッドスポーツ)」にはどのような競技があるのでしょうか?

代表的なものを解説したいと思います。

■アダプテッドスポーツにはどんな競技がある?

アダプテッドスポーツには、パラリンピックで行われている種目もあります

種目を挙げますと、ショートテニス、ファミリーバドミントン、ペタンク、インディアカ、フライングディスク、キックベース、スポーツ吹矢、大縄跳びなどのユニバーサルスポーツ、車いすスポーツ(バスケットボール、ハンドボールなど)たくさんの種目があります。

ちなみに「ユニバーサルスポーツ」とは

年齢や国籍、障害の有無にかかわらず、皆が一緒に楽しむことができるスポーツ

のことを指します。

この「ユニバーサル」とは「汎用・万人向け」という意味で、「すべてに通用する」というようなイメージを含んでいます。

他に「ユニバーサル」という言葉を使う例としては、ユニバーサルデザイン、ユニバーサルアクセスなどがあります。

ユニバーサルスポーツを定義するとしたら、

1.ルールに柔軟性があり、様々な人の参加が可能であること
2.勝ち負けがあるスポーツの場合、誰にでも勝つチャンスがあること
3.ルールがシンプルで誰もが理解しやすいこと
4.身体的な負担が少なく、安全性が確保されていること

などとなるでしょう。

ここでは、アダプテッドスポーツの一例として

・ファミリーバドミントン
・ショートテニス
・風船バレー
・フライングディスク

について少々解説を加えたいと思います。

★ファミリーバドミントン★

一般的なラケットとの違いとしては、ラケットの持ち手の部分が短くなっており、手のひらで打つような感覚でシャトルを打つことができる点が異なります。

シャトルはスポンジボールに羽がついているので、速くは動きません。

滞空時間が長いため、運動神経に自信がない人でも追いつくことができ、誰でも楽しむことができます。

そのほかには、サーブは下から打つことなどの違いがあります。

★ショートテニス★

ショートテニスとは、一般的なテニスを初心者・子ども・高齢者などでも楽しめるように工夫したものです。

スポンジ製のやや大き目で軽いボールを使うので、強く打ったとしてもバウンドする速さはゆっくりになります。

そのため、動きがゆっくりな人でもボールに追いつくことができ、ラリーが続きやすいです。

またコートにも工夫がなされており、一般的なテニスのコートより小さめです。

移動の範囲も狭くなり、移動に困難がある人でも楽しめるようになっています。

★風船バレーボール★

風船バレーボールは6人制です。一般的なバレーボールで使うボールではなく、風船を使います

重度の障害者でも参加できるように考えられたもので、障害者スポーツとしても知られています。

使う風船は40㎝ほどのもので、中には鈴が2つ入っていますチーム全員が必ず1回は風船にタッチすること、8回以内のタッチで相手コートに入れることなどがルールとして決められています。

★フライングディスク★

フライングディスクは、全国障害者スポーツ大会の正式競技の一つです。

プラスチック製の円盤を使い、円盤を投げた距離を競うディスタンス」と、決められた範囲の中に円盤を投げ、正確さを競うアキュラシー」という種目があります。

円盤の投げ方は決められておらず、健常者も障害者もハンディなしで競うことができます。

以上、代表的なアダプテッドスポーツについて解説させて頂きました。

アダプテッドスポーツは「その人の発達に合わせて、スポーツの道具やルールを柔軟に変更する」という考え方から成り立っています。

風船バレーボールなどは自分たちでも使う道具を作ることができ、気軽に楽しむことができます。

スポーツは健常者だけが楽しむものではありません。

アダプテッドスポーツの精神に則って、高齢者や障害者・子どもなど誰でも楽しめるスポーツにするにはどういった工夫が必要なのか考えることができるといいですね。

■アダプテッドスポーツの楽しみ

アダプテッドスポーツは、性別や年齢、体力、スポーツ経験の有無、障害のあるなしに関わらず、誰でも参加できるようルールや道具に工夫を凝らしたスポーツです。

つまり、一人ひとりの発達状況や身体の状況に適応(adapt)させたスポーツと言えます。

障害がある人や高齢者などは「障害があるから(若しくは高齢だから)自分にはスポーツは無理」などといった考え方を持っていることが多いです。

しかし、ルールを少し変更したり、使う道具に工夫を施すことで、誰でも楽しめるスポーツが生まれます

そのように、ハンディがある人も健常者も共に楽しめるようにすることが、アダプテッドスポーツの目的です。

例え障害があったとしても、健常者と共にスポーツの場を共有することができれば「自分でもスポーツが楽しめるんだ!」と、からだを動かす楽しみを知ることもでき、そこから様々なスポーツに挑戦する楽しみを知ることができるかもしれません。

先ほど挙げた「風船バレー」などは、風船と鈴、また広場があれば他に特別な物は必要ありません。

ちょっとしたルールや道具の工夫と、思いやりのこころさえあれば、誰でも・どこでも様々なスポーツを楽しむことができるのです。

スポーツの楽しみは健常者の特権ではありません。

ハンディがあっても、高齢でも、子どもでも、スポーツを楽しむ権利はあります。

その権利を施行するために生まれたのが「アダプテッドスポーツ」という考え方です。

何も難しく考えることはないのです。身近にある物、簡単にできることから生まれる工夫もあります。

場合によっては新しいスポーツが生まれるかもしれません。

頭を柔らかくして「どんな工夫をすればみんながスポーツを楽しめるか」「どのようなルールの変更をすれば障害がある人でもスポーツを楽しめるようになるか」と考えることができれば、いろいろなアイディアが出てくるかもしれませんね。

例として、3つの工夫を挙げてみます。

★タンデム自転車★

2人1組で乗る自転車です。

前に健常者が乗り、ペダルをこぎます。そして後ろに視覚障害者が乗り、一緒にサイクリングを楽しむことができます。

★ツインバスケットボールのゴール★

大人の胸ほどの高さのゴールです。

健常者と子ども、車いす使用者などが一緒にバスケットボールを行う場合、健常者は普通の高さのゴール、そして子どもや障害者・力のない人は低い方のゴールに入れるようにするなどの工夫をします。

こうすることでハンディをなくすことができ、誰でもバスケットボールを楽しむことができます。

★視覚障害卓球★

ピンポン玉を音の鳴るものにすることにより、視覚障害の人でも楽しめるようにします。

ボールをバウンドさせると難しくなる場合があるので、ゴロのみでラリーを行うなどの工夫もします。

以上、簡単なルールや道具に工夫を凝らした3つのスポーツについて解説させて頂きました。

こういったちょっとしたルール・道具の工夫で、ハンディのある人でも楽しめるスポーツが生まれるのですね。

このコラムを読んでアダプテッドスポーツに興味を持ってくださった人でスポーツがお好きな方は、誰でも楽しめるスポーツにはどのようなことが必要かを考えてみてはいかがでしょうか?

■まとめ

以上、アダプテッドスポーツ(障害者スポーツ)の歴史から、種目について、また誰でもできるルールや道具の工夫についてまとめさせていただきました。

先ほども述べましたが、スポーツは健常者の特権ではありません。

障害があっても、高齢でも、力が弱くても、誰にでもスポーツを楽しむ権利はあります

みんながスポーツを楽しめるようにするには、ルールや道具の変更を柔軟に行うことが必要です。

難しく考える必要はありません。

ちょっとした工夫を施すことで、誰でも楽しめるスポーツは生まれます

このコラムを読んで頂き、アダプテッドスポーツに興味を持ってくださった方、既存のスポーツをみんなが楽しめるようなスポーツにするにはどんな工夫が必要か、是非考えてみてください。

色々な人が一緒にスポーツに参加できれば、きっと楽しいはずですよ。

筆者も、誰にでも楽しめるスポーツについて、今一度考えてみたいと思います。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。