精神保健福祉士ってどんな仕事? 広がる活躍の場

精神保健福祉士
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みなさんは、「精神保健福祉士」という仕事があるのをご存じですか?主に精神障害者を対象に援助する精神保健福祉士。このコラムではこの資格をとることを目指している人やどんな仕事か知りたい人に向け、精神保健福祉士の資格の取り方や働くことができる職場などについて解説していきたいと思います。

■精神保健福祉士って? 精神障害者の強い味方

日本では、精神保健福祉士はPSWとも呼ばれており、PSW (Psychiatric Social Worker)とは、「精神保健福祉士法」に基づく名称独占の国家資格となっています。

精神保健福祉士法第2条では、精神保健福祉士とは

精神障害者の社会復帰に関する相談、助言、指導、日常生活への適応のために訓練その他の援助を行う〟(筆者により一部簡略化)

とされています。

精神保健福祉士は、精神障害者の日常生活や職業上の悩みを聴いたり、助言したりすることによって当事者が日常生活や社会生活をより暮らしやすくするために、アドバイスをするサポーターのような存在だということができます。

日本では、50年以上前から、各精神科病院で「精神科ソーシャルワーカー」として働いている人たちがいました。

社会的に精神障害についてのより深い知識や専門性を持った人材が必要となってきた背景から、1997年に「精神保健福祉法」が改正され、そこで国家資格として精神保健福祉士の仕事が確立されました。

同じソーシャルワーカーの資格として、「社会福祉士」が挙げられます。2つの資格の違いは、援助する対象者の違いにあります

社会福祉士障害者、高齢者、児童と援助する対象が多岐にわたるのに比べ、精神保健福祉士の援助対象者を精神障害者に特化していることに違いがあります。

支援対象者に違いはあるものの、受験資格に共通する部分も多くあるため、2つの資格を同時受験し、同時に取得する傾向もあります。

精神保健福祉士の主な仕事内容としては、職場によって差異はありますが、主に精神障害者本人やその家族からの相談に乗り、助言・指導・訓練を行っていくことだと言えます。

また支援サービスの利用の紹介、その手続きや利用調整、病院や施設に入院中の精神障害者の家庭や地域への移行に向けての支援も行っています。

就職する先によって、それぞれ仕事の内容は異なってきますが、支援の対象を精神障害者に特化しているという点では共通する部分があります。

■どうやったらなれる? 精神保健福祉士への道

それでは、精神保健福祉士になるにはどのような過程を辿ればいいのでしょうか?精神保健福祉士の受験資格を得る道としては、11通りの方法があります。

主なものを簡単に述べると、

福祉系の4年制大学で指定科目を修めて修了した者
2年制又は3年制短大で指定科目を修めて卒業し、指定施設において1年または2年以  
 上相談支援の仕事に携わっていた者

精神保健福祉士短期養成施設(6か月以上)を卒業(または修了)した者
精神保健福祉士一般養成施設(1年以上)を卒業(または修了)した者

といった道があることがわかります。

他の受験資格の取り方などは、公益財団法人社会福祉振興・試験センターのHPに記載されておりますので、どのような道が自分に向いているかなど探してみるといいでしょう。

国家試験は毎年1月下旬に実施され、3月中旬に合格発表が行われます。しかし、受験の申請は9月上旬から10月上旬までと早めの時期に行われますので、余裕をもって申請されることをおすすめします。

合格基準としては、

問題の総得点の60%程度を獲得した者のうち、試験科目16科目群の各科目群すべてにおいて得点があった者

とされています。

つまり、16科目のうち一つでも0点があれば不合格という厳しい条件の試験といえます。最近の試験の合格率は60%前後を推移しており、平成30年度の合格率は62.7%となっています。

合格率は割と高めとなっておりますが、それでも福祉の勉強をしてきた方々の4割が落ちてしまうというのも事実であり、簡単には取れない資格だといえるでしょう。

試験に臨み、無事合格したら次は登録です。この「登録」がかなり重要です。精神保健福祉士は、試験に合格しただけでは精神保健福祉士という名称を使えません

精神保健福祉士登録簿に氏名を登録し、登録証を受け取ることでようやく精神保健福祉士として認められるのです。

登録申請の期限は特に設けてありませんが、早めに登録しておくと安心です。登録の申し込みをすると、1か月から1か月半で登録証が届き、晴れて精神保健福祉士として働くことができるようになります。

■どんなところで活躍できる? 広がる活躍の場


以前までは精神保健福祉士というと精神科病院が主な就職先でしたが、今は精神保健福祉士の資格を持つ人の活躍できる場は広がっています。

精神科では入退院の手続きを手伝ったり、入院生活中の患者やその家族の悩み相談に応じたりといった援助を行います。公的サービスの利用の手助けをするのも精神保健福祉士の仕事です。

また精神科デイケアなどでのリハビリテーション業務も行います。デイケアの内容としては料理やスポーツ、茶話会などといったそれぞれの病院の特色が現れるプログラムが組まれています。

利用者それぞれの様子を見ながら、体調面や精神面に支障がないか見守りをしつつ、仲間に軋轢などが生じないように工夫しながら有意義な時間が過ごせるようにプログラムを行っていきます。

場合によっては、デイケアに来ている利用者の悩みを聴くこともあります。デイケアは、利用者にとって安らげる〝居場所〟になることもあります。

デイケアが利用者に安心していられる場である為に、デイケアに行けば悩み相談に乗ってくれる人がいる、一緒に笑える仲間がいる、そんな環境づくりが大切となります。

そういった場にするにはどうするのがいいかを常に考えつつ、デイケアという場をよりよい集いの場になるよう調整していくのも精神保健福祉士の仕事です。

また、障害者の就労支援についての仕事もあります。就労継続支援事業所、地域活動支援センターなどにも精神保健福祉士は配置されます。

そういった施設で働く精神保健福祉士の役割としては、一般就労に向けて利用者の職業能力のスキルアップや、コミュニケーション能力などその人に不足しているものを向上させていく援助をします。

もちろん、利用者の体調面のサポートも必要です。当事者の様子を見て、「様子がおかしいな」と思ったら、「ちょっと時間いいかな?」といって相談に乗るなど、利用者の精神面にも働きかけが必要です。

そして、一般就労に向けて、その人にはどんな仕事が向いているのか、利用者が希望の職に就くには、どのような支援を行っていったらいいか、またその人にはどんな努力が必要かを利用者と一緒になって考えていくのも精神保健福祉士の役割です。

障害者が一般就労できた際は、その職場での定着支援も行っていきます。当事者の仕事面での悩みを聴いたり、企業側の希望や要望も聴き、企業が利用者のことを理解し、利用者がその職場で長く働けるように調整していくことも大切です。

精神保健福祉士の活躍の場は広がっており、上に紹介した以外にも養護施設学校行政機関など幅広い分野から注目されている職業と言えます。

精神保健福祉士は精神障害者サポートのプロです。その信頼性と知識を活用しながら、精神障害者の悩みを一緒に解決していくのも、この仕事のやりがいと言えるのではないでしょうか。

■精神保健福祉士についてまとめ

精神保健福祉士の資格は、福祉系の大学を出ている人でも6割程度しか取得することができない難しい資格です。しかしそれは、専門性が求められる職が故であるものです。

筆者は統合失調症を患っていますが、精神保健福祉士の資格を所持しています。今は、就労継続支援A型でこうしてコラムを書く仕事をしています。

コラムを書くにあたって、大学時代に培った知識は活用できていると思います。筆者の夢はこういった施設で、自分と同じような境遇の障害者の方の就労サポートをする職に就くことです。

精神保健福祉士を目指している方、また今精神保健福祉士の資格を持っているけれどどんな職に就こうか迷っている方、この資格は将来幅広い分野での活躍が期待されている資格です。

あなたが望む職場で活躍されることを願っています。

社会福祉士についてもまとめましたのでご覧ください♪⇩

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。