うつ病なども対象! 精神障害者向けの障害者手帳とは?

うつ病
育银 戚によるPixabayからの画像

精神障害者保健福祉手帳とは、精神に疾患を持つ方が取得できる障害者手帳のことです。これを取得することによって税の減免や障害者枠での雇用も可能になるなど、様々なメリットがあります。そこで、申請方法や取得可能な方、また持っていることでのメリット等について解説していきたいと思います。

■私は交付対象になる? 申請には何が必要なの?

精神障害者保健福祉手帳(以下、手帳)では、何らかの精神疾患により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制限がある人を交付対象としています。

対象となる疾患としては、

統合失調症
高次脳機能障害
双極性障害(躁うつ病)などの気分障害
てんかん
発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
その他精神疾患(ストレス関連障害など)

などといったものから、薬物やアルコールによる急性中毒やその依存症なども含まれています

手帳には3級2級1級と級が分かれており、数が小さくなるごとに重度であるということを示します。

それぞれ判定基準があり、申請をしてから都道府県・政令指定都市と市の保健センターでの審査を経て、何級になるのかが決まります。

等級の症状は様々ですが、例として2級についての等級の分類についてあげますと、

精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

となります。

このように医師の診断書などを判断材料に等級の区分がわけられることとなっています。
それでは、手帳の申請はどのように行っていくのでしょうか?

手帳の申請に関して必要な書類としては、

申請書
マイナンバーのわかるもの
診断書(指定の診断書が必要です)
顔写真
印鑑(場合によっては必要)

などがあります。

こちらは市区町村によって異なる場合がありますので、詳しくは窓口にお問い合わせください。

申請してから手帳が交付されるまでは、1~3か月と地域によっては長くかかることもありますので、手帳が必要な方は余裕をもって申請をされることをおすすめします。

手帳は更新制となっており、2年に一度更新が必要です。更新の申請は、有効期限の3か月前からできるとされています。

更新時に必要となるものは、手帳の申請時に必要なものと同じです。また、今現在もっている手帳の写しが必要となります。

更新の際、場合によっては、診断書の内容などにより、最初に申請し交付された手帳の等級よりも程度が軽くなったり重くなったりすることがあります。

更新期限前でも障害の程度が重くなったり、障害年金の等級が変更された場合は、等級の変更の申請ができます。

■様々な税の減免、障害者雇用にも! 手帳のメリットとは?

手帳をもっていると、様々なメリットがあります。もちろん等級によって差はありますが、それぞれの級に応じて配慮されることがあります。

例えば、

所得税
住民税
相続税
贈与税

においては、1級から3級で控除や非課税となる場合があります。しかし、それぞれ〝資格要件を満たすことによって該当する″ものであり、すべての方に当てはまるとは言えませんのでご注意ください。

そのほかにも、自動車税や軽自動車税の減免があったり、鉄道やバスでの割引などの配慮がなされているところもあります。

また、「障害があるけど一般企業で働きたい!」という方にも手帳は有効活用できる制度だと言えます。

手帳を持っていると、企業や自治体などの「障害者雇用率」の算定対象となるので、ハローワークの障害者枠での求人に応募することができるようになります。

企業側にとっても、障害者を雇用することは「障害者雇用率」を引き上げられるというメリットとなりますので、双方にとってメリットがあります。

よって、「一般企業で働きたい!」という障害者と「障害者雇用率を満たしたい!」という企業とをマッチングするアイテムとも言えます。

障害者雇用では、一般企業で働くといってもそれぞれの障害の特性に対しての配慮が受けられるので、より働きやすい環境で自分の障害の特性に合った働き方ができると言えます。

このように、手帳を持っていることによって様々な配慮を受けることができます。経済的にも優しい制度ですし、何より「障害をもっていても一般企業で働きたい!」という方にはぜひ活用していただきたいものです。

■手帳を有効活用! 福祉的就労とは?

手帳を持っていると、「就労移行支援」「就労継続支援」といった福祉サービスも利用することができます。これは障害者総合支援法に基づいて定められている、障害を持つ人が安心して自分のペースで仕事や、就労の準備ができる福祉サービスのことです。

福祉的就労の制度を利用するには原則手帳を持っていることが条件とされていますが、自治体によっては手帳がなくても医師の意見書などによっても利用できる場合もあります。

就労系の福祉サービスとして、

1.就労移行支援事業
2.就労継続支援A型事業
3.就労継続支援B型事業

この3つが挙げられます。
それぞれ名前が違う通り、働き方や対象者も違ってきます。順を追って簡単に説明していきたいと思います。

<1.就労移行支援事業
この事業の対象者としては、

身体、知的、精神、発達障害、難病を持っている65歳未満の方
一般就労を目指している方

があげられます。

利用期間は原則2年間と定められており、原則雇用契約は結びません。また、こちらでは原則賃金も発生しませんので、ご注意ください。(賃金が支払われる事業所もあります)。

2年間の間に自分の健康管理能力を身に付けるとともに、スタッフの力も借りながら一般就職に向けてスキルアップしていくのが就労移行支援事業です。

一般就職に向けて企業見学や実習などもでき、将来のビジョンが描きやすいのが特徴です。また、就職した後も継続して職場定着のための面接を行ってもらえるなど、アフターフォローも充実しています。

就労移行支援事業所が直接仕事を紹介するのは制度上できないとされていますが、ハローワークなどと連携して、本人に合った職場探しをしてくれます。

そのため、「障害があるけど一般企業で働きたい!」という意思の強い方にとって、就労移行支援を利用してみる価値はあると思います。

<2.就労継続支援A型事業所
こちらの事業の対象者としては、

一般企業での就労が困難な方
原則利用開始時の年齢が65歳未満の方
特別支援学校を卒業したものの就職に結びつかなかった方

などがあげられます。

A型事業所は、障害のある方が一般就職を目指し、最低賃金・またはそれ以上の収入を得ながら働く場所とされています。

一定の収入が継続して得られるため、経済的にも安心して働くことができる場所となっています。

作業内容としては事業所により様々ですが、

・商品の検品、袋詰め
・清掃作業
・データ入力作業

など比較的軽作業が多くなっています。

それぞれの事業所によって特色があるため、将来自分の就きたい仕事によって、事業所選びを慎重に行うことが必要です。

一般企業と異なるところは、作業時間が比較的短く設定されていることや、障害について配慮してもらえることです。

また事業所にはスタッフが常にいますので、何か悩み事があった時などに相談に乗ってもらいやすい環境だと思います。

そして、サービス管理責任者と呼ばれるスタッフが将来に向けてのプランを立ててくれますので、サポートを受けながら働けるのもメリットだと言えるでしょう。

<3.就労継続支援B型事業所
こちらの事業の対象者としては、

就労経験があって、年齢や体力の面で一般企業で働くのが難しくなった方
50歳に達している方
障害基礎年金1級を受給している方
就労移行支援のアセスメントで、B型事業所利用が妥当とされた方

などのうち、いずれかを満たしている方が利用できるものとなっています。

原則雇用契約は結びません。比較的簡単な作業を短時間から行うことができ、まず「働く」ということに慣れたい方には利用しやすい事業所です。

しかし、こちらは原則雇用契約を結ばないため、最低賃金法が適用されず、賃金が最低賃金より低いことが多いと傾向があります。

作業内容としては、

農作業
喫茶店やパン屋での調理
クッキーなどの製菓
WEBサイト作成

など、事業所によって様々な職種が用意されています。
その為、自分の興味のある分野や将来就きたい仕事などに合わせて事業所選びができます。1日1時間だけでもOKな事業所や、週1日からの勤務も受け入れてくれる事業所もありますので、自分のペースで働くことができます。

また、B型事業所でもサポートしてくれる職員はいるため、悩みなどができた時に相談しやすいのもメリットです。利用期間の制限もありません。

手帳をもっていることで、これらの就労系の福祉サービスを利用できるようになります(手帳が必要ない場合もあります)。

一般企業での就職が難しかったり、障害者雇用を利用したいけどまだ体調面での不安があるな、と思った際は、こういった福祉的就労という形で働く、ということも一つの手だと思います。

どの事業を利用するか悩むところはあると思いますが、長期的な視野でみて、「長く安定して働き続けられるのはどこだろう」というのをポイントに探すと、自ずと自分に合った働き方が見えてくるのではないかと思います。

■精神障害者保健福祉手帳についてまとめ

手帳を持っていることで、

税の減免がある(資格要件あり)
一般企業での障害者枠にチャレンジできる
福祉的就労の対象となる

などといったメリットがあります。

精神障害は多くの場合、継続的に通院することになるため、税の減免などは経済的にも助かる制度となっています。

また、就職にチャレンジしたい方にとっては障害者雇用や福祉的就労などを利用するにあたっては手帳を持つメリットはあると言えるでしょう。

手帳を持っていることによって、制度上のデメリットは特にありせん。ただ、「手帳をもっていることを周りに知られたくない」という方や、手帳を持っていることで「精神障害者である」というレッテルを貼られたように感じられる方もいるかもしれません。

手帳を取得するかしないかはその人の意思で決められます。もちろん手帳を取得した後でも、返還することもできます。

申請をする際は、手帳を取得した場合のメリット・デメリットをよく考え、手帳制度を活用していただければと思います。

こころが辛い時は早めの受診を!精神科・心療内科についてまとめています♪⇩

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。