大人になった子ども~機能不全家族とアダルトチルドレン~

アダルトチルドレン
Terri CnuddeによるPixabayからの画像

機能不全家族」という言葉をご存じですか?近年増えている児童虐待などで家庭内不和が生じ、本来の機能が失われた家族のことです。そんな家族の中で幼少期を過ごした大人は「アダルトチルドレン」と呼ばれます。今回はその2つのキーワードについて触れていきます。

■機能不全家族って?~毒親の弊害~

機能不全家族」というのはどのようなものなのでしょうか?一般的には、〝家庭内で弱い立場にある人に対して、身体的・精神的ダメージを与える機会がいつもある状態〟とされています。

機能不全家族を一言でいうと、「一人ひとりの人格や個性が尊重されていない家族」のことを指します。

そして、特に子どもから見て安全・安心が保障されていない家族は少なからず「機能不全家族」といえるでしょう。

機能不全家族には以下のような特徴がみられます。

1.親と子供の距離感が極端である(無関心または過干渉)
2.兄弟姉妹・同年代の子どもとの比較が多く、子どもをほめることが少ない
3.身体的、精神的暴力がある

などです。

このような家庭では、子どもはうまく親との距離をとれず、常に親の顔色を気にしていなければなりません。

親が気に入るように先取りして行動をし、家庭の調和を保つことが子どもの役割となってくる場合もあります。

また1に挙げました過干渉・過保護な親は、いわゆる「毒親」とも呼ばれます。毒親とは、自分の子どもを「自分の持ち物・私物」のように扱う親のことを言います。また逆に、新しい洋服に飽きたかのように、子どもに物に当たるように接する毒親も存在します。

子どもに人権などないように振る舞い、子どもをほめるなどということは滅多にしません。ただ、「条件付き」で愛情を与えることもあります。

○○したら○○してあげる」などのように愛情を与えるのに条件を提示するのです。子どもは愛情がほしいままに頑張りますが、その行為が終わるとまたほったらかし、無関心などのようになる場合も多いようです。

また、虐待が多いのも機能不全家族の特徴です。殴る・蹴るなど身体的暴力はもちろんのことですが、暴言を浴びせる・目の前で物を壊すといった精神的虐待も比較的多くみられる傾向にあります。

このような虐待によって、子どもにとって親は「逆らってはいけない絶対的な存在」となります。

そして、上にも挙げましたように親の顔色や機嫌を常に気にし、機嫌を損ねないように先回りして行動するようになるのです。

そのような傾向のある家庭で育った大人たちのことを「アダルトチルドレン(AC)」と呼びます。次章では、アダルトチルドレンの特徴やタイプなどについて触れていきたいと思います。

■アダルトチルドレン~愛情を求め続ける人々~

アダルトチルドレン」とは、大人になっても子どものころに受けた心の傷が癒えずに苦しんでいる大人たちのことを言います。

身体的・精神的暴力によって心に傷を負った人はもちろんのことですが、親からほめられなかった・認めてもらえなかったという体験をした人も含まれます。

そのような人たちは、大人になっても人間関係に自信を持てません。子どもの頃の人間関係が複雑であったり、毒親の影響などで正常な「人とのかかわり方」がわからない傾向があります。

アダルトチルドレンのタイプを大まかに5つに分け、挙げてみたいと思います

1.優等生タイプ
2.自己犠牲タイプ
3.問題児タイプ
4.空気タイプ
5.親代わりタイプ

主にこの5つに分けられます。どのタイプも、他人から認められたいという欲求は普通の家庭で育ってきた人より強くあります

その為、1の優等生タイプでは自分が何かに取り組むときに親に認められようと人一倍努力しますし、2の自己犠牲タイプでは、何かもめごとや問題が起きているときに自分が道化役になって場を和ませたりと、とにかく「問題が起きないように」振る舞います。

自分の感情や気持ちを犠牲にしてでも「親からの愛を得たい」という気持ちは、大人になっても変わりません。

3の問題児タイプでは、1.2のタイプとは少々異なり、家庭内不和への不満や愛情を受けられない寂しさなどをすべて家庭内暴力などの「問題行動」によってあらわそうとします。

こちらのタイプは1.2のタイプのように「調和」を取ろうと必死になるというよりは、自分が子どものころ与えてもらえなかった愛情に対する飢餓感などを問題行動によって爆発させ、周りを巻き込んでいく形だといえます。

4の空気タイプでは、家庭内でもめごとなのが起きていても「口に出さない」「行動しない」などで、自らはあまり関わらないようにするタイプです。

その為、おとなしく地味な方が多くみられ、家族からも軽く扱われている場合があります。

5の親代わりタイプでは、年下の兄弟姉妹の面倒を見たり家事などをこなしたりと、何もしない親に代わって「家族の為」に必死で働きます。

こういったタイプは、自分を犠牲にして家族の面倒を見るという役割を担っているため、自分の要望や希望というものは二の次にしてしまいがちです。

ずっとそうやって生きてくると、「自分の意思」というものを持つこと自体が薄れてしまい、親の言う通りに動くロボットのようになりかねません。

アダルトチルドレン」の人たちの中には、「自分の感情がわからない」「本当は自分が何がしたいかわからない」という方もいらっしゃいます。

これは、子どものころに自分の感情を押し殺し、「絶対的な親」のもとで親の言いなりになりながら成長していった結果でもあります。

それでは、このような「アダルトチルドレン」の大人が自分らしく生きるには、どのようなことを心がけていったらいいのでしょうか?

■アダルトチルドレン克服に向けて

毒親の影響などでアダルトチルドレンとして育ってしまった人は、自分の感情や気持ちに基づいて動くということが苦手な傾向があります。

そこで、アダルトチルドレン克服のポイントとして、

1.自分の感情・気持ちに素直に従い、行動すること
2.他人への不信感を減らし、良い対人関係を築くこと
3.自己肯定感を高め、自分に自信を持ち、自分らしく生きること

などがあげられます。

アダルトチルドレンとして育ってきた大人は、子どものころ常に親の顔色を気にして過ごしてきた方が多いと思います。

自分を取り戻すためには、まずは「自分が本当は何をしたいのか」「自分の今の感情は?」などを気に留めつつ生活を送っていってほしいと思います。

泣きたいときは泣く、笑いたいときは笑う、「これがしたい!」と思ったら親の目など気にせず思い切って挑戦してみるといったことが大切です。自分の感情に素直になってください。

もし子供のころに虐待を受けていたとしたら、大人に対して不信感を抱くのは自然なことです。

しかし、社会にいるのはあなたの「」ばかりではありません。あなたを愛してくれる人、大切に思ってくれる人、必要としてくれる人はたくさんいます。

他人とうまく付き合っていくには、まずは自分の心をオープンにすることが必要です。自分から心を開いていくことによって、相手も徐々にあなたという存在を受け入れてくれるようになるでしょう。

時間はかかるかもしれませんが、良い対人関係を築くためには自分から他人に働きかけてくことが大切です。

そして、小さいころに否定的な評価を受けつづけたアダルトチルドレンの大人は自己肯定感が低くなりがちです。

その自己肯定感の低さから、自分には良いところがない・生きる価値がないと感じ、時にはリストカットや過食嘔吐などの自傷行為に走ることもあります。

そのように「ありのままの自分」を受け入れられないことはとても悲しいことです。たしかに、子どもの頃のあなたは親から「ダメな奴だ」と言われたかもしれません。

しかし、あなたにはあなたにしかない「良いところ」がたくさんあります。一度、自分と向き合ってみると〝自分のいいところ″が必ず見つかります。

その〝良いところを大切にしていくと自己肯定感も高まり、また自己肯定感が高まると自分に自信を持つことができます

自分というあるがままの存在を認め、自信をもって堂々とこれからを過ごしていってください。

もう、あなたは「親の持ち物」ではありません。「誰にも支配されない」あなただけの素敵な人生を歩めることを望みます。

■ありのままの自分を大切に

いかがでしたでしょうか?核家族化が進む現代、地域のネットワークも薄くなりつつあり地域社会からの家族の孤立も増えている傾向にあります。

近所同士の付き合いや親戚づきあいも昔ほど多くなくなった現代、子育て世代の負担も増えることになり、虐待やネグレクトを受けて育つ子どもも増え、結果としてアダルトチルドレンとなる大人も増えていることでしょう。

しかし、自分が変わろうと思うことによって、親からの束縛からは逃げることができます。あなたの味方は世の中にたくさんいるのです。

あなたがその「勇気ある一歩」を踏み出し、自由を手に入れることを心から祈ります。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。