精神科への入院って?~統合失調症に焦点を当てて~

統合失調症
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統合失調症を発症し、症状が悪化すると、時には入院治療が必要な場合もあります。実は精神科への入院には様々な種類があります。それでは、入院の種類やその際の家族のケアとはどのようなものなのでしょうか?

■統合失調症が疑われるとき~診察に至るまで~

統合失調症は、症状や経過によって前兆期急性期休息期回復期の4つに分けられます。

主に症状が激しく現れるのは急性期です。陽性症状と呼ばれる症状では、妄想や幻覚にとらわれ激しく大声を出して叫んだり、逆に周りの刺激に全く反応しなくなる緊張病症候群と呼ばれる行動の異常が現れるなどと統合失調症特有の症状を発症します。

しかし、陽性症状ばかりが前兆としてあらわれるとは限りません。うつ病や神経症と間違うような陰性症状というのもあります。

陰性症状は、気分の落ち込みや意欲の低下、感情の動きが乏しくなるなどの症状を言います。そういった症状が陽性症状に先行して現れることもあります。

陽性症状や陰性症状が活発になってしまった場合、やはりそれを見ている家族は心配ですし、「病院で診てもらったほうがいいのではないか?」と思う時もあるかもしれません。

しかし、精神科を受診することに、本人が抵抗を示す場合もあります。こういったときは、話し合うしかありません。

本人に対する説明の仕方としては、

本人がいつもと様子が違う為心配しているということ
苦しんでいる当事者を見ているのがこちらにとっても辛いものであること
受診すれば当事者の落込みや不安などについての相談に乗ってもらうことができること

などを繰り返し伝えることです。このように説得をすることによって、本人の受診への恐怖は徐々に減少していくと思われます。

逆に避けたい方法としては

本人をだまして精神科につれていくこと
腫れ物に触るような態度で話しかけること
何も説明しないまま強引に精神科に連れていくこと

などです。

これらの対応をしてしまうと、家族への信頼感が揺らいでしまいます。そして次に病院に連れて行こうとしても、「また騙されるのではないか」と周りの人や病院にも疑念感を抱くようになってしまいます。

その為、本人を病院へ連れていくときには上に述べましたように家族や周りの人が心配していること、受診すれば様々な相談に乗ってもらうことができ症状が楽になる可能性もあることを伝え、本人の同意も得てから受診することが大切です。

■入院治療という選択~当事者への説明の仕方と家族の受容的態度~

上でも述べましたが、統合失調症には症状が激しく現れる急性期というものがあります。その急性期に顕著にみられるのが陽性症状です。(陰性症状が先行する場合もあります)。

強い陽性症状が出ると、本人は頭の中がパニックになり、妄想や幻覚に支配され、それによって暴れたりする危険な行為に出ることもあります。そのように家族ではどうしようもなくなってしまったときは、入院治療も視野に入れることが必要です。

あなたはこちらから見てもおかしい、入院しなければならない」などと批判的な態度をとれば、本人が頑なに拒否するのも当然です。

調子が悪そうで心配だから、一度診察に行ってみたら?心配なら私もついていくよ」などというような柔らかい態度で接することが大切です。

本人がどうしても診察を拒む場合には、まずは家族だけで精神科に診察に行ってみるのも一つの手です。

家族がまず病院に行って最初に本人の様子を医師に伝えておくと、そのあと本人が診察に参加したときに、より良い形でスムーズに入院へと導入することができる場合があります。

そしてもう一つ「家族の休息のために当事者を入院させる」という形をとることもあります。統合失調症に限らずこころの病をもった家族が身近にいると、ほかの家族は悩みや混乱が尽きません。

そういったときに当事者を入院させることで家族が休む時間を作ることもでき、これから当事者とどう向き合っていくか、治療の方針をしっかり組み立てる良い機会にもなります。

しかし、内科や外科への入院と違って「精神科への入院」というとどんなものか思い浮かばない方もいらっしゃるのではないでしょうか?

次の章では、精神科における入院の形態の違いや要件について紹介したいと思います。

■主な入精神科入院の3つの種類とは?

精神科への入院の種類には様々なものがあり、それぞれ要件があります。それぞれの種類別に要件や特徴など見ていきたいと思います。

主な入院の種類としては、

1.任意入院
2.医療保護入院
3.措置入院

などがあります。そのほかにも、緊急措置入院応急入院といったものもあります。

まず1の任意入院です。これは、患者本人が入院の必要性を自ら認め、自分自身の意思で入院することです。

2の医療保護入院は、自分や他人を傷つけたりする恐れはないものの、患者本人が入院を拒否している状態に行われる強制入院です。

この場合、精神保健指定医の診察と、家族など保護者のうちどなたかの同意が必要です。
この「家族など」には、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人また補佐人などが含まれます。該当者がいない場合には市区町村長が同意の判断をします。

最後に3の措置入院についてです。措置入院では、自分や他人を傷つける(自傷他害)の恐れがあって精神保健指定医2名の診断結果が一致した場合に行われます。本人や家族が拒否しても、都道府県知事の権限で入院させることができます。

なぜこのように精神科の入院形態に違いがあるかというと、本人に病識(自分が病気であるという認識)がなかったり、自分や他人を傷つける恐れがあるが本人や家族に入院の同意が得られないなど、様々な状況が想定されるからです。

しかし、原則として本人の同意が得られる場合には極力丁寧に入院の必要性を説明し、1の任意入院という形態をとるよう努めることとされています。

どの入院形態をとる際も、入院届とともに「同意書」が求められます。任意入院の場合は本人の同意書、医療保護入院の場合は家族等の同意書が必要です。

入院中の患者に際しては、自由の権利も保障されています。精神科病院には公衆電話が設置されていて、患者は自由に電話をかけることができます。

また、手紙や面会も精神保健福祉法で保障されています。(ただし例外もありますのでご注意ください。)

■家族が受けられるケア~一人で抱え込まないで~

家族だけで悩みを抱え込むと精神的に追い込まれてしまったり、苦しい思いをすることもあります。そういったときは、病院の医師、ソーシャルワーカー、ケースワーカー、また看護師などに相談するのも手です。

病院で相談するときは、家での患者の様子を観察しそれを医師に伝えることによってアドバイスをしてもらえます。家族だけでの診察を受け付けてくれる病院も多々あります。

このように外部の人に悩みを相談するなどして息抜きをすることも、家族のこころに余裕を取り戻す良い方法です。

家族が自分のエネルギーを患者にすべて使ってしまって、倒れてしまっては元も子もありません。

患者の状態を安定させることも大切ですが、家族の精神を安定させることも重要です。どんなときにもおおらかに患者を包み込めるように、適度にガス抜きをしましょう。

また、ほかの統合失調症の患者を家族に持つ方、本人・家族が交流をすることも治療やガス抜きとしては有効だと思います。

孤立しがちな家族にいい影響を与えてくれるのがNPO病院地域の同じ悩みをもつ仲間などが主催している家族会」です。様々な家族と話をする機会があったり、イベントなどの催し物を通して情報交換もできます。

そんな家族会に参加することによって、「悩んでいるのは自分たちだけではなかった」「苦しい思いを受け止めてもらえた」など〝仲間〟を見つけ、安心や癒しを共有することができます。

このように、外に目を向けてみるといろいろな社会資源があります。身内だけで悩みを抱え込まず、信頼できる人を頼ったり家族会などに参加してみるも孤立しないための手段だと思います。

悩みを家族だけで抱え込まないで、周りの社会資源を有効活用することによってガス抜きをし、患者さんをあたたかい心で包み込んであげてほしいと思います。

■良い予後に向けて~家族へのケアまでのまとめ~

いかがでしたでしょうか?統合失調症の入院の種類から、家族のケアまで見てきました。患者が入院する際には

患者の様子がいつもと違い心配していること
入院することによって症状が軽減する可能性もあること
苦しんでいる本人を見ているとこちらもとてもつらいこと

を伝え、できれば患者さんに納得していただいたうえで入院してもらうのがベストですが、暴力などの問題が出た場合、ほかの入院方法で対処することも考えなければなりません。

また、患者が入院している間は、家族の束の間の休息の時間でもあります。家族がガス抜きをすることによって、こころの余裕が戻ります

患者さんと接するときは、穏やかなこころで患者を見守り、症状が軽減するまで根気強く寄り添ってあげてください。

こちらのコラムでは統合失調症の症状や当事者ができる対処法など紹介しております♪⇩

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。