自分らしい働き方って? 発達障害者への就労サポートとは

発達障害
Gerd AltmannによるPixabayからの画像

最近話題になっている「発達障害」。発達障害者とは、コミュニケーションにおける障害や環境に適応しづらいことなどによって生きづらさを感じている人のことを言います。そのような人たちが、大人になって就職するときに利用できる制度やサービスなどを紹介していきたいと思います。

■そもそも発達障害って何? 発達のアンバランス

発達障害者とは、脳の発達のアンバランスによって、著しく不得意な分野ができ、日常生活に生きづらさをきたしている人のことを言います。

発達障害とは、大きく分類すると

1.自閉症スペクトラム(ASD)
2.注意欠陥・多動性障害(ADHD)
3.学習障害(LD)

の3つに分けられます。
それぞれ症状は異なりますが、生活のしづらさを抱える点では共通する部分があります。

<1.自閉症スペクトラム(ASD)
自閉症スペクトラムとは、以前は広汎性発達障害と呼ばれていたものです。この自閉症スペクトラムとは、アスペルガー症候群や自閉症などの複数の障害がまとめられたものです。

この障害の主な特徴としては、コミュニケーションなどの対人関係における障害と、同一性を好み、環境の変化などに対応しづらいこと、またこだわりが強いことなどが挙げられます。

自閉症スペクトラムのコミュニケーションの障害としては、

会話のキャッチボールができない(一方的に話し続けてしまう)
人の感情を読むのが苦手である(いわゆるKY)
非言語的コミュニケーションが理解しづらい(アイコンタクトなど)
子どもでは、親などが言ったことをそのまま繰り返す「オウム返し」がよくみられる

などが挙げられます。

またこだわりも強く、

ある物事の手順についてこだわる
環境の変化に敏感で、慣れた環境にいるのを好む
突然の予定変更が苦手

といった傾向にあります。

いつもと違う環境に置かれたり、急な予定変更があったりするとパニックに陥ったり、自傷行為を行ってしまう場合もあります。

また物の配置や帰り道のルートにこだわる場合もあり、子どもではずっと同じ遊びを飽きずにやっている子もいます。

<2.注意欠陥多動性障害(ADHD)
この障害では、

不注意
多動性
衝動性

の3つを主とした症状が見られます。特徴としては、

なんとなくいつもソワソワしている
集中力がない
物事を順序だてて考えるのが難しい
学習、仕事の面で不注意によるミスが多い

などの特徴が挙げられます。

子どもの頃特に問題なく過ごせても、大人になると仕事の上でケアレスミスをしたり、電話を聞きながらメモを取るなどのマルチタスクができなかったりと問題が顕在化してくる場合もあります。

<3.学習障害(LD)
学習障害(LD)とは、知的能力に遅れはないものの、読む書く計算することのいずれか(重複する場合あり)が、著しく苦手である状態を言います。

障害の程度は人によってそれぞれ違い、また現れる症状も違ってきます。しかし、周りからは本人の努力不足とみられ、大人になるまで気づかれない場合もあります。

このように発達障害者は様々な生きづらさを抱えていますが、周囲のサポートを受けながら日常生活を送れるようにしていけば、もちろん発達障害の方でも就労は可能です。

■企業との橋渡し役 ジョブコーチって?

それでは、発達障害者の就労についてはどのような支援が受けられるのでしょうか?

発達障害者の場合、手帳を取得する場合は〝療育手帳″もしくは〝精神障害者保健福祉手帳″を取得します。

手帳を取得することによって利用できるようになる制度は様々ありますが、この章ではジョブコーチ制度について綴っていこうと思います。

ジョブコーチとは、

発達障害など障害がある人が安心して働けるように、環境面や仕事の内容について企業とのマッチングを行ってくれる人

のような存在です。

ジョブコーチの支援を受けられる対象としては、身体、知的、精神などの障害を持っている方で、

自分に合う仕事探しを手伝ってほしい方
就職してみたもののなかなかなじめない方
障害の特性について企業側にうまく説明することができない方

などがあげられます。

手帳がなくても利用できる場合もありますが、条件があり、「企業で約1か月以上の間、週20時間以上働く見込みがある」人が対象となります。

ジョブコーチは、障害者の悩み相談を受け、企業側に本人の意向を伝えます。そして、企業と話し合いを行い、本人が働きやすい環境づくりを進めていきます。

例えば、口頭指示が理解しづらい発達障害者には、具体的に「目で見て」わかるような形で指示をするよう企業側にアドバイスします。

例えば料理を作る担当にするときは、

料理の作り方は口頭ではなく「やりながら」説明する
完成した形のモデルを作り、完成形を目で見てわかるようにする

などの配慮があれば、ただ耳で聞く指示よりわかりやすくなると思います。障害の特性によって配慮していくことによって、発達障害を持っていても他の人と同じように働ける環境が整っていきます。

発達障害は、身体障害のように見た目でわかることが少ないので、どんな特性を持っているのか、どんなことが苦手なのかがわかりづらい面もあります。

それを明確に企業側に伝えていくのがジョブコーチです。障害者本人は、コミュニケーションがあまり得意でないことも多く、困り事などを相談するのも苦手な傾向にあります。

その悩みを本人の代わりに企業側に伝えていくのもジョブコーチの役目だと言えます。また、ジョブコーチは障害者本人に対しても「どのようにしたら仕事が効率よくやれるようになるか」や「うまく周りとコミュニケーションをとる方法」をアドバイスします。

そのようにして、企業側には発達障害についての特性などを理解してもらい、障害者本人に対しては周りとうまく関係を作る方法をアドバイスすることによって、双方がよりよい関係を築きながら働ける環境を作っていきます。

企業と障害者の橋渡し役、それがジョブコーチです。

■お試し期間で不安解消! 障害者トライアル雇用

継続して仕事がしたい!」という障害者の方におすすめなのが、「障害者トライアル雇用」です。

障害者トライアル雇用とは、自分に合った仕事内容か、働きやすい職場かなどを一定期間働くことで見極めることができることができる制度です。

約3~6か月間(原則3か月)試行雇用されることによって、働く側は企業の雰囲気や社内の人たちの様子、またこれまでの経験が役に立つか熟考できます。

企業側は障害者にとってどのように接するのがいいのか、仕事の教え方はどうしたらいいのかなどを配慮すべきことを考えられます。

そのようにして働く側と、企業の側双方が不安を解消できるため、相互理解を深めることができ、不安が解消できます。

障害者トライアル雇用の対象者としては、

1.これまで就いたことのない職種への就職を考えている方
2.過去2年以内に2回以上離職や転職を繰り返しており、続けて働ける場を探している方
3.働いていない期間がしばらくあったが、また就職したいと思っている方
4.重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者のうちいずれか

こちらの1~4のいずれかに該当する人となります。
(4の対象の方は1~3を満たさなくても利用できます)

また発達障害者は環境(音、光、匂い等)に敏感であったり、独特のコミュニケーションをとる方もいるため、お試し期間があるというのは、働くうえでの環境や人間関係を時間をかけて考えていくには、いい制度だと思います。

精神障害者や発達障害者で、「働きたいけどいきなり長い時間は無理だなぁ」という方には、「障害者短時間トライアル雇用」という制度がおすすめです。

これは週10時間~20時間働くことから始めて、徐々に調節し最大12か月かけてトライアル雇用期間中に週20時間以上働けるようになることを目指す、という制度のことです。

トライアル雇用中も、賃金が支払われるので、経済的にも安定して働くことができます。平成28年度には、約8割の方が継続雇用につながっています。

障害者トライアル雇用の選考は書類選考ではなく「必ず面接で」行われます。ただ、履歴書や職務経歴書が不要というわけではありません。面接時に必要な書類を準備して、面接に臨んでください。

障害者短時間トライアル雇用などはインターネットで探し出すこともできますが、残念ながら募集自体あまりなく、なかなか見つけにくい求人です。

こちらの制度を利用されるときは、ハローワークに相談すると詳しく説明が受けられるので、興味がある方はぜひお近くのハローワークにお問い合わせください。

今回はジョブコーチ制度と障害者トライアル雇用について紹介してきました。この制度は発達障害者だけでなく精神障害者や身体障害者、知的障害者などの方も対象となる場合がありますので、興味を持たれた方はぜひ利用してみてください。

障害の種別に関わらず、あなたらしい働き方が見つかることを心から願います。

発達障害者支援法についてまとめました!興味がある方はご覧ください♪⇩

著者 もち猫

福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。