就労定着支援事業とは? 一般就労した後も安心サポート!

就労定着支援事業
Gerd AltmannによるPixabayからの画像

みなさんは「就労定着支援事業」というサービスをご存じですか?
これは2018年から始められた新しいサービスで、就労移行支援や継続支援A型・B型で働く障害者の方が一般就労した際、支援員が一定期間生活面や仕事面でのサポートをしてくれるものです。
今回はこの「就労定着支援」について紹介したいと思います。

■就労定着支援事業所って? サービス内容は?

就労定着支援事業とは、就労移行支援事業や就労継続支援A・B型事業所などを経て一般就労した障害者の方に対して、生活面や仕事面でのサポートをしてくれる事業所です。

これは2018年4月から始まった改正障害者総合支援法に基づくサービスです。これまでも就労移行支援事業や、障害者就業・生活支援センターなどが中心となり、定着支援を行う場合もありました。

しかし、就労移行支援や就労継続支援事業を利用して一般就労をする障害者が増え、定着支援の需要が高まってきたことを背景に、「就労定着支援事業」として独立したサービスとなりました。

サービス内容としては、障害者の相談を通じて生活面での困りごとなどを解決していくのに加えて、企業や関係機関との連絡調整を行う、というものです。

こうしたサポートをしていくスタッフを「就労定着支援員」といいます。

対象者としては、

就労移行支援事業
就労継続支援A型、就労継続支援B型事業
生活介護、自立訓練サービス

などのサービスを使って一般就労をされた障害者の方があげられます。

支援は入職後7か月目から受けられるようになり、最大3年間受けることができます。また、こちらは更新制で、継続して支援を受けるには1年ごとの更新が必要となります。

利用から3年経った後は、障害者就業・生活支援センター等の支援機関と連携を図りながら支援を引き継いでいく、という仕組みです。

■具体的にはどんなことをしてくれるの?

就労移行支援や就労継続支援を利用していた障害者が一般就労に移行すると、自分が希望していた仕事内容とは別の仕事を任されたり、想像していた環境や人間関係と異なるなど、「思っていたのとは違う!」という場合もあるでしょう。

例えば、

仕事場の人間関係に馴染みづらい、コミュニケーションがうまくとれない
寝坊が多く遅刻、欠勤を繰り返してしまう・仕事上のケアレスミスなどが減らなくて困っている
お給料の管理ができない
薬を飲み忘れてしまう
マルチタスクができず複雑な仕事になると混乱してしまう

などの悩みが出てくると思います。
そういったときにサポートしてくれるのが就労定着支援員です。

就労定着支援員は、生活上や仕事上の悩みを聴き、その悩みに対して具体的にアドバイスしていきます。

そのようにして、利用者の日常生活の質の向上を図ります。また、障害者が思っていることを企業側にうまく伝えられないときは、その橋渡し役をし、企業側に配慮をお願いする場合もあります。

企業側も、障害者を雇用するにあたって疑問等生じてくる場合があると思います。

スキルを持っているのだから、そのスキルをもっと活かした仕事をさせたい
仕事に慣れてきたようだから、長時間の勤務を任せたい
うまくコミュニケーションをとるにはどうしたらいいか教えてほしい
仕事を教える際に気を付けることを教えてほしい

などの悩みや要望が出てくるでしょう。

そういったときは、就労定着支援員が企業側に障害者の特性や得意なこと・苦手なことを踏まえ、障害者をその企業で〝活かす〟ためのサポートをします。

例えば、企業側としては何か指示をしたときは障害者がメモを取るまで待ってもらうこと、マルチタスクが難しい場合は1つずつこなせるように配慮するなど、障害者の特性に合わせた働き方をアドバイスしていきます。

そうして試行錯誤していくことによって、その障害者が持っているスキルを最大限に発揮できる職場づくりの手伝いをするのも就労移行支援員の役目です。

就労定着支援員が障害者側、企業側両方から意見を聴いて調整していくことによって、企業と障害者が良い関係でいられるように手助けをします。

そして、障害者がその企業で「長く、安心して」働けるように配慮を行っていきます。

■就労定着支援事業の申し込み方法や利用料は?

就労定着支援事業を利用する探す際は、その事業を行っている事業所をネットなどで検索したり、ハローワークを訪問して探す方法があります。
またこれまで利用していた事業所が、定着支援を行っている場合でも、利用したいときは定着支援事業用に再度申請をする必要があります。

新たに利用したい事業所を見つけたら、市区町村に申請することになります。利用までの流れとしては、

1.市区町村の障害福祉窓口などで就労定着支援を利用するにあたっての申請をする
2.調査員による認定調査を受ける
3.相談事業者かまたは自身でサービス等利用計画案を作成し、提出する
4.受給者証が発行される
5.サービスの利用開始

といった流れをたどる事になります。

ご自身でサービス等利用計画案を作る場合は、市区町村などがサポートしてくれる場合もあるので、自治体に問い合わせてみるのも一つの手です。

定着支援事業所を決める際は、一般就労に移行するにあたって自分が希望する職種についてサポート体制はどうなっているかや、その事業所の雰囲気、スタッフと自分との相性なども確認してから利用されることをおすすめします。

また、新たに事業所を利用する場合は、見学や体験の後に面接を受ける必要があります。その為、面接の日時が決まったら、履歴書・その他どのような書類などが必要なのか確認しておくことも重要です。

事業利用の申請をしてから利用開始までは自治体によっては1か月ほどかかる場合もありますので、「利用したい!」と思ったら余裕をもって申し込みをしておくのがいいでしょう。

利用する費用としては、前年度の世帯所得によって自己負担が発生することもあります。基本的には自己負担1割で利用することができる場合が多いです。

一般就労する前に就労移行支援サービスを受けていて収入が発生していなかったり、納税の額が一定額以下だったときなどは、就労定着支援事業を利用し始めてから2年目から自己負担が発生する、ということもあります。

こちらも市区町村によって異なる場合がありますので、費用についても確認していただいてから利用するかどうかを考えるのも一つの手です。

それぞれ事業所によって利用料が異なったり、サービス内容にも差異が出てきますので、事前に下調べをきちんとしてから利用を始められることをおすすめします

■就労定着支援事業まとめ

就労定着支援は、まだ始まったばかりの事業です。就労定着支援事業を利用することによって、一般就労後「長く、安定して」その企業で働けるように自分に合った事業所選びをすることも大切です。

またアドバイスをもらったら、聴くだけでなく自分から「変わろう」ときちんと実行していくことも重要です。

変わろうと努力する姿勢は、同僚や上司など企業側にも必ず伝わりますそのような積極的な姿勢は、企業からの信頼にもつながります

就労移行支援や就労継続支援を利用している障害者の方で「一般就労したい」という障害者は年々増えています。

その為、障害者が一般就労していくうえではこの事業は必須のものとなってくると思います。

企業側にとっても、障害者を雇用するというのは不安があるものです。その不安を解消するためにも有効な事業だと言えます。

就労定着支援員が障害者と企業の橋渡し役をしながら、障害者が「自分らしく、自分のいいところを活かした」働き方ができるよう願います。

就労定着支援事業という新しい事業を有効的に利用して、あなたらしい働き方ができることを願います。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。