自立生活援助事業とは、2018年4月から創設された新しいサービスです。これは、施設入所をしていた障害者の方や、グループホームで生活をされていた方が施設を出た後に一人暮らしをする際にサポートを行っていくものです。今回は、この新しいサービスについて解説したいと思います。
■自立生活援助って? サービスの目的や対象者など
長期入院をしている精神障害者の退院が促進されるなど、障害者の地域移行が進められている現在、障害者が安心して地域で暮らせるようグループホーム等地域生活を支援する仕組みの見直しなどが求められています。
しかし、障害者の中には、グループホーム等の集団生活ではなく賃貸住宅等において一人暮らしを希望する知的障害者や精神障害者の方もいます。
そんな中、障害が理由で一人暮らしの生活に不安を持つ人が存在するのも実情で、そのような人の退院・退所後のサポートをする事業として、2018年4月から「自立生活援助」というサービスが始まりました。
この事業の目的としては、厚生労働省において、
「障害者支援施設やグループホーム等から一人暮らしへ移行する知的障害者や精神障害者において、本人の意思を尊重した地域生活を送るために、一定の期間に渡り、定期的な訪問や随時の対応を行っていくことにより、障害者の理解力、生活力を補う観点から、適切な支援を行う」(筆者により簡略化)
とされています。
対象者としては、
1.障害者支援施設やグループホーム、病院などから退院・退所された人
2.すでに一人暮らしをしているが支援が必要な人
3.障害・疾病のある家族等と同居しているが、一人暮らしをしようとしている人
などが含まれます。
簡単にまとめますと、「グループホームなどで集団生活を行っていた知的障害者・精神障害者などで、現在地域で一人暮らしをすることを望んでいるが、何らかの支援を必要としている人」が対象となると言えます。
■どんなサポートを受けられるの?
自立生活援助のサービス内容としては、職員(地域生活支援員など)が定期的に利用者の居宅を訪問し、
・食事、洗濯、掃除などの家事に問題はないか
・障害の症状の悪化などは見られないか
・きちんと通院日に通院しているか、服薬はきちんとできているか
・電気代やガス代など公共料金などはきちんと払えているか
などの確認を行います。
また、定期的な訪問だけでなく、利用者から電話やメールなどで相談があった際は、随時受け付けることとなっています。
地域住民と障害者との、よりよい関係を構築していくのもサービス内容の一つです。このように障害者の地域での生活をサポートしていく職種としては、「地域生活支援員」が挙げられます。
地域生活支援員は、障害者が地域で自分らしく、充実した生活を送っていけるように、様々な調整を行っていきます。
例えば週に1、2回利用者の居宅を訪問して、生活状況を把握し、また利用者の悩み相談や生活面で気になっていることなどについて話を聴きます。
そして、必要に応じて助言・指導を行い、利用者がより良い生活を送っていけるように環境調整などを行っていきます。
施設や病院と違って、地域での一人暮らしでは障害者本人がやらなければならないことが山ほどあります。それをサポートしていくのが地域生活支援員の役目です。
この事業の利用期間は原則1年間とされています。しかし、必要と認められた場合には更新し、継続して利用できる可能性もあります。
■自立生活援助活用法 具体的なサービス内容とは?
それでは、自立生活援助事業は具体的にはどんなサービスを行っているのでしょうか?
もし通院や服薬の管理がきちんとできていなかったら、医療機関との連携を取り、薬剤師による服薬の指導をしてもらえるように依頼します。
通院をしている場合は、通院日前に病院に行くことを忘れないように利用者に連絡を入れるなど、症状の悪化を招かないように配慮をしてきます。
自炊などがきちんとできておらず、健康面に影響が出そうな場合は、宅食サービスを頼むことを障害者に提案することもあると思います。
また、買い物にあまり行けていないようであれば食材の配達を頼むサービスがあることを知らせたりと、様々な社会資源(施設や制度など)を利用し生活環境の調整を行っていきます。
地域で暮らしていくうえで、ほかの住民との関係を良好に保つのも大切です。どのようにすればうまく関係を築けるのかアドバイスをしたり、地域の社会資源についての助言を行います。
このように総合的に障害者をサポートしていくことによって、障害者が自立し、充実した生活を送れるように支援していく事業が自立生活援助事業です。
■自立生活援助についてまとめ
自立生活援助時事業は、定期的な巡回によるサポートや、電話やメールでの悩み相談受け付けなど、障害者の方が地域生活を送るにあたっての支援体制がきちんとなされています。
施設や病院などから出て地域で暮らし始めた頃は不安でいっぱいだと思います。その不安を取り除くためにも、専門職の力も借りながら、徐々に地域生活に馴染んでいけたらと思います。
今障害者支援施設や病院などで生活をされている方で、地域移行をお考えの方にはぜひ利用していただきたい事業です。
みなさんが、地域で自分らしく充実した生活が送れることを願っています。
著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。