自閉症スペクトラム第1章~一人一人違う生きづらさと特性~

発達障害

今回のテーマは「自閉症スペクトラム(以下ASD)」について!

ASDってなんだろう?」というと「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」など、かつて「広汎性発達障害」と呼ばれていたものを一つの疾患の名前に統合した呼び名です。

同じ「ASD」でも、それぞれに表れる特性には違いがあります。ASDだから」と言って当事者の人々すべてが同じ特性を持ち合わせているわけではないのです。

ASDには、よく見られる特性として、コミュニケーション障害があります。この障害によって、ASDの人は生きづらさを感じています。

周りの空気を読むことが苦手で、相手の気持ちや都合を考えず話し続けてしまう人、また障害の特性から話をするのが苦手な人など、人間関係を築くのに苦労してしまう人たちがいます。

これがASDがある人それぞれに共通する生きづらさです。

ASDの特徴は?~独特なコミュニケーション~

そんなASDに見られる主な3つの症状の例としては、

1.臨機応変に対人関係が築けないこと
2.自分のペースを大切にし、周りの空気を読めないこと
3.興味を持つことに対しては熱心だが、他のことに対しては特に気に留めないこと

などがあります。

ASDの赤ちゃんは、健常児よりも発語が遅れる場合があります。また、なかなか彙が増えない所から、発達障害と判明する事もあります。

中には、1歳前半頃までにある程度の発語が出て、数か月間はしゃべっていたのに、1歳半~1歳後半頃から急にそれらの言葉が出なくなる、という場合があります。これは「折れ線現象」と呼ばれ、これが見られるとASDかもしれません。

そして、ASDの子が成長してくると「独特のコミュニケーションをとる」という傾向が見られる場合があります。

また、ASDがある人の特徴例として、

・冗談が通じない
・自分のやり方にこだわりがある
・話しかけられれば答えるけれど、自分からは話しかけない
・興味がない話にはあまり集中できない(興味ある幅が狭い)
・逆に興味がある事については、空気を無視して一方的に話し続けてしまう
・空気が読めない(いわゆるKY)

などがあります。

自分の興味のあることに対しては特別にこだわりを持ち、その話が自分の興味がある物だと、相手の気持ちを考えずに一方的に話し続けたりしてしまう、という特性もあります。

また、自分の興味のない話には関心を持てず、ついつまらなさそうな顔をしてしまったり、自分の関心ごとに何とか話を持っていこうとして相手から反感を買ってしまうこともあります。

この「自分のペースを優先させる・空気を読まない(KY)」事が原因でASDがある子は学校などで「付き合いづらい・話がかみ合わない子」として扱われるようになり、他の生徒が離れていってしまったり、深刻な場合にはいじめに発展してしまうといった場合もあるのです。

しかし、自分をアピールするばかりの子だけではなく、受け身な態度で他の子から話しかけられれば答えても、〝自分から話したい〟という欲求がないという特性を持つ子もいます。

周りが賑やかだったり、クラスメイトが楽しそうに会話をしている様子を見ていても、一人ポツンと居ることもあります。

このような受け身なASDの子たちも饒舌なASDがある子と同様、〝周りに合わせて行動する、人の気持ちを察する〟というのが苦手で、「他の子と話すより一人でいる方が楽」と孤独を好む子もいます。

しかし、「本当は皆と仲良くしたくてもコミュニケーションの障害等から、他の人と上手く関係を築けない、という子がいるのも事実です。

その為、周りとの関わりを諦めてしまい、学校生活において孤独を感じ、不登校になってしまう場合もあるでしょう

ASDの特徴は?~こだわりについて~

また「こだわりが強い」のもASDの人の特徴です。自分のやり方や好きなものに固執し、譲ろうとしません。しかし、この「こだわりにもマイブームがある」という人もいます。

例えば、物の配置にこだわりを持っていた人が、それに代わる「こだわり」としていつの間にか同じルートで会社に行くことにこだわりが移っていた、というようなものです。

健常者の興味が色々変わる事と同じで、「物・環境等にこだわる事にもマイブームがあるそうです。そして、それは成長するにつれて変化していくものだとも言えます。

ASDがある人が、子どもの頃にこだわりの影響で何か物事がうまくいかなかった事や、臨機応変に対人関係の形成に対応できず、周囲から怒られたり、自分の決めた(決まった)やり方が上手く通らなくてイライラしまったこともあるでしょう。そして、周りの顰蹙(ひんしゅく)を買ってばかりだった(今も続いている場合もあり)という経験から、自己肯定感の低下や自信の喪失にもつながります。

また、周りの成長についていけない自分に対しても、焦りを感じることがあります。そんな「生きづらい」社会で、ASDの人は生きているのです。

ASDがある人の生きづらさ~大人のASD~

「生きづらい」社会で、ストレスをずっと受けつつ過ごしていると、うつ病やパニック障害などの二次障害を発症してしまう可能性もあります。

ASDがある子も成長し、大人になると、こういった特性や二次障害が原因で、面接を受けても落ちてしまったり、どうしても就職できない人も出てきます。

もし就職できたとしても、学生時代のようにあたたかくフォローしてくれる人ばかりではなくなってしまいます。

ASDがある大人の特性として

・小さなミスを何度でも繰り返してしまう
・仕事に優先順位をつけられない
・マルチタスクが苦手
・上司の抽象的な指示の意味が理解できない
・冗談や皮肉が通じない

等があります。

これらの特性は、子どもの頃とは違うように見えても、形を変えて表れてきたものだと理解してもらって構いません。

仕事でこういったミスを繰り返せば、上司や同僚からの信頼も得られず、毎日注意を受けてばかりで会社に行くのが嫌になってしまうでしょう。

「上司に怒られてばかりで辛い」
「なんだか気分が沈む日が続いてきたな」
「仕事に行かなければならないのに朝起きられない」

などと「精神的に辛いことが多いな」「なんだか日常生活を送るのが大変になってきたな」

と感じたら、精神科や心療内科を訪れてみてください。

何故なら、小さなミスを繰り返してしまったり、空気を読めず上司に叱られるといった特徴的な症状が〝大人のASD〟かもしれないからです。

ここで生きづらさの原因が分かれば、医者、カウンセラー等、専門職からアドバイスを得たり、色々な療法を受けることによって、「生きやすい」日常・社会生活を送ることができるかもしれないからです。

ASDの根底の特性は残ったとしても、その〝生まれ持った特性〟を、専門家の治療等によって「生きやすい」ものへと変化させられる可能性はあるのです。

自閉症スペクトラム(ASD)の第2章では、家族や周囲の人ができるサポートや、ASD当事者ができる事、また利用できる社会資源(サービス・施設等)を紹介していこうと思います。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。