こども食堂~子どもの「孤食」核家族の孤立を防ぐために~

子ども

みなさんは「こども食堂」という言葉を聞いたことはありますか?

こども食堂とは、経済的事情で栄養のある食事が摂れない子どもや、親が共働き・またはひとり親で、いつも一人でご飯を食べている子どもなどを対象に、無料または低価格帯で食事を提供する場のことを言います。

今、こどもの貧困が問題となっています。

家庭の事情で親にご飯を作ってもらえなかったり、作ってはもらえてもいつも食べる時は一人などの事情でこども食堂に通う子も増えてきています。

ひとり親などが働きに出ていると、こどものご飯を作る時間も、お金もない。

そういった理由から親子が地域社会からどんどん離れていってしまう状況に陥っているのです。

そんな親子を守るためにも民間団体や自治体のボランティアなどが集まり‶団らんの場〟を作り、食事を提供するだけでなく、地域社会からの孤立を防ぐことも目的に始められた事業です。

これらの取り組みについて見ていきたいと思います。

■こども食堂とは?

こども食堂の始まりは「気まぐれ八百屋だんだん」(東京都大田区)が2012年にはじめた食堂がこども食堂です。

こども食堂と言う名前も、店主である近藤博子さんによってつけられました。小学校の給食以外でまともな食事をしていないという子がいることがわかったことから始められた事業です。

その活動を知った東京都豊島区の子ども支援をしていた団体のメンバーがそれを活動に取り入れたことで、一気に全国に広まりました。

2021年には6000件を超えるこども食堂が活動を行うまでになりました。利用者は子どもだけでなく、子どもの食事を作る時間がない親も含まれることもあります。

前述したように、親子が地域社会から孤立してしまわないように、こども食堂で様々な関わりをもてるよう支援しているのです。

また、ひとり親家庭の子どもなどは家事の手伝いをしたり、きょうだいの面倒を見たりと勉強の時間が疎かになってしまう場合もあります。

そのような状況に陥ると勉強についていけなくなり、自分が望まない学校に進学しなければならなかったり、金銭的な面で進学できないということも起こりえます。

そうなると「学歴が低い」という理由で子どもが就職する際に正規として採用してもらえず、非正規雇用でしか働けなくなる場合もあります。そして、貧困の連鎖が起きるのです。

そのような事態に陥らないためにも、こども食堂では大学生などのボランティアにより学習支援もしてもらえます。

一般的な講師のようにみっちり勉強を教えるというより、食事をした後に少しだけ勉強のお手伝いをする、といった感じです。

年齢の低い子とは遊んだり一緒に話したりして、コミュニケーションを図ることもあります。

ひとり親家庭の子どもなどは親が働いていて、家庭で話す相手がいないということもあるのでこれは子どもにとっては貴重な機会となるでしょう。

★こども食堂を利用するには?★

こども食堂の開催頻度は月に1回が一番多い傾向です。食事の提供に関しては無償であったり、高くても100円~300円程度を設定しています。

大人が利用する場合でも300円~500円程度で利用できます。

平日の夕方5時~夜9時の営業といったところが最も多く、次に土日祝日の昼12時~2時が続きます。

対象としては「こういう子しか利用できない!」と決められているわけではなく、その地域すべての子どもが対象となっています。もちろん、シニア世代や大人も利用できるところが多いです。

■こども食堂のメリットは?

★手作りの温かい食事を食べることができる★

一番のメリットはこの点ではないでしょうか。

例えばひとり親家庭の場合、親が作り置きしておいた食事をレンジで温めて食べたり、時には食べるものがなくお金を渡されて、冷たいコンビニ弁当などで済ませるという子もいるでしょう。

近年は、寄付された食材などを栄養士がバランスの良い食事になるよう考え作られているところも増えているようです。

そのようなことを考えれば、温かい食事を食べられるというだけでも嬉しいことですし、もちろん周りには仲間もいます。

一人で冷たいご飯を食べるより、栄養を考えられた温かい食事を食べることが、こころの栄養ともなるでしょう。

★必ず誰かがいてくれる★

ひとり親家庭のこども・親が共働きの子どもなどは、親が働いている時間帯は自分一人(きょうだいがいる場合もありますが)でご飯を食べるということも多いでしょう。

しかし、こども食堂にはご飯を作ってくれるボランティアや学生ボランティアなど、必ず誰かがいてくれます。

1人でいたとしても、必ず誰かが声をかけてくれます。その点は、孤立感の解消につながると言えるのではないでしょうか。

また、こども食堂に通う子はみんなが同じ学年ではありません。

学年の壁を越えた交流ができるので、年上の子が小さな子の面倒を見たり、同じ年代の子どもとはあまり関われない、と言う子でも仲良くできる子が出来る可能性もあります。

コミュニケーションが苦手な子もスタッフが支援することによって、まずはスタッフと関わることから始め、だんだん子どもの輪に入れるようになれるかもしれません。

アットホームな雰囲気の中で、皆と一緒に食べるご飯というのは美味しいと思います。子どもに孤立感を感じさせないためにも、こども食堂は必要な事業だと思います。

★見守りの役目も★

子どもが怪我をしたり、病気になったりしたときに誰か側に大人がいないと対応できない場合もあります。

こども食堂はそういった場合の「見守り」の役目も果たしているのではないでしょうか。

子どもの為だけでなく、働きながら子どもを育てる親の心配も解消してくれます。

「一人で寂しい思いをしていないだろうか」
「ちゃんとご飯を食べてくれているだろうか」

もしこども食堂を利用していなかったら、このように子どものことが心配になるでしょう。

しかし、こども食堂を利用していれば見守りの目がありますし、仲間もいます。そして、子どもの居場所も把握できます。

何かあっても周りのスタッフが対応してくれます。ですから、こども食堂は親にとっても安心材料になると思います。

そういった面でも、こども食堂にはメリットがあると言えるのではないでしょうか。

★親同士の交流にもなる★

こども食堂を利用している子の親にも、様々な事情があります。共働き、ひとり親、生活保護受給世帯などです。

しかし「こども食堂を利用している」という点は共通しています。ですから、子育ての情報交換をしたり、日ごろの悩みを話し合ったりなどと親同士の交流にも一役買ってくれると思います。

そうやって親同士がコミュニケーションをとりつつ、日ごろのストレスを発散していくことによって親のこころにも余裕が生まれ、子どもへの態度も柔らかくなっていくでしょう。

もしひとり親家庭で一緒にご飯を食べていたとしても、親は働きづめで地域社会から孤立してしまうことが多く、ストレスが発散できず、それを子どもにぶつけてしまうこともあるかもしれません。

そのストレスをぶつけられた子どももイライラしてしまい、家ではいい子を演じていたとしても学校などで不満を爆発させたりして、問題児扱いをされてしまう場合もあります。

そのような問題を防ぐためにも、親にも「周囲の大人と交流する時間」を設けることで悩みを相談し合い、ストレスを発散してもらうことによって、子どもにぶつけることがなくなるようにしていかなければなりません。

こども食堂は「ただ食事をする場」だけでなく、子どもの「孤食」を防ぐ場、仲間とつながる時間でもあります。

また大人にとってはこども食堂を利用する者同士、子育ての悩みを相談しあったり、地域社会とのつながりを絶やさない場でもあると思います。

■こども食堂の抱える問題は?

★金銭面・スタッフの確保の問題★

こども食堂は無償、または低価格で食事を提供するということもあり、金銭面での問題も発生します。

例えば食材の確保。近くに食材を提供してくれる農家やお店があればいいですが、もし新しくこども食堂を始めようと思ったらそのネットワークをつくるのが大変だと思います。

また人材の確保の面でも、こども食堂はボランティアが主であるということもあって持続的に手伝いをしてくれる人材を確保するのが難しいといった場合があります。

ボランティアに来てくれている人にも仕事や家庭はありますし、事情によってはボランティアを辞めざるを得ない時もあります。

また場所の確保の面でも難しい場合があります。こども食堂はスペースを借りて運営していることが多いため、賃貸費がかかります。

しかしこども食堂では寄付金や助成金などがない限りなかなか収益にはつながらないため、何とかしてその費用を工面しなければなりません。

そのため、お店をやっている人が自分の店のスペースを利用してこども食堂を開いたり、民家の空いている場所で行うなど工夫して行っているところが多いようです。

★運営費の確保が難しい★

こども食堂の運営には人件費・光熱費・家賃などがかかります。約4割のこども食堂において、年間10万円~30万円の費用がかかっています。

これらの費用には国・都道府県・社会福祉協議会などの助成金が充てられますが、費用のすべてを助成金で賄うことは難しいのが現状です。

よって、ボランティアたちがお金を出し合ってこども食堂を運営しているという場合もあります。

そのため助成金やクラウドファンディング、寄付などによって運営していけるようにしていくことが現在の一番の課題と言えます。

■こども食堂でボランティアをするには?
ここからは「自分も地域の子どもを支援したい!」と言う方向けの情報を紹介していきます。

まず「こども食堂でボランティアをする」というのにも形があり

・ボランティアとして一緒に活動する
・食材の寄付をする
・お金の寄付をする
・場所を提供する

などがあります。

★ボランティアとして参加する★

ボランティアとして一緒に活動する場合でも、様々なボランティアがあります。

・食事を作る担当
・配膳の担当
・子どもたちの話し相手や学習支援
・こども食堂の広報活動

などです。

上に挙げたのは一例ですが、こども食堂にもそれぞれのニーズがあるため、必ず必要とされているわけではないかもしれません。

もしボランティアとして参加したいと思ったら、活動を行いたいこども食堂に問い合わせてみて、どのような支援が必要か聞いてみるといいでしょう。

また「こども食堂ネットワーク」というサイトでは、全国のこども食堂を検索でき、マークによってどんな支援が必要かわかるようになっています。

例えばお米が必要、肉・魚・野菜が必要、ボランティアスタッフが必要などと異なるマークが用意されていて、寄付を行いたいこども食堂を検索すれば何が必要か一目で分かります。

例えば東京都で検索してみたところ、様々な食材やボランティアスタッフを募集しているところも多く見受けられました。

他の県でも検索してみましたが、ボランティアスタッフは引く手数多のようです。やはり、学業や仕事との両立が厳しくなってくるボランティアも多いからでしょう。

「ボランティア活動がしたい!」という方には、こども食堂はやりがいのある活躍の場なのではないかと思います。

★食材を送る★

前述のWEBサイトで検索してみたところ、やはりボランティアスタッフだけでなく食料やお金が不足しているというこども食堂もあるようです。

もし「ボランティアがしたいけれど現場には入れないなぁ」と言う方は「食材を送る」「調味料、調理器具を送る」「お金を寄付する」と言う形でもこども食堂に貢献できます

もし「食材なら送れる!」「お金を寄付することならできる!」と言う方は、先ほどのサイトで送りたい先に何が不足しているのか把握し、提供することも可能です。

余っている食材を送ってしまってもこども食堂も困ってしまうので「今、その施設が必要としているもの」を把握してから提供することが大事です。

ここで気を付けなくてはならないのが、こども食堂に事前に連絡を取ってから食材などを送らなくてはならない、ということです。

こども食堂は公民館などを借りて運営している場合もあるため、連絡なく荷物が届いてしまうと使用を制限されてしまう場合もあるからです。

せっかく気持ちを込めて贈ったのに、使ってもらえないのでは残念ですよね。

こども食堂の地域ネットワークを形成しているところでは、そこに連絡すると「今、どこに、何が必要か」を教えてもらえる場合もあります。

食材を寄付する際は、先ほどのサイトや地域ネットワークで必要なものを確認し、事前に連絡してから寄付するようにしましょう。

★お金の寄付★

こども食堂は営利目的の施設ではないため、お金の寄付も可能です。ほぼ無償で食事を提供しているところが多いので、お金の寄付も重要なものとなってきます。

寄付されたお金は以下のようなことに使われます。

・食材費
・食堂の光熱費、家賃
・保険料
・印刷費、通信費など
……こども食堂開催を知らせるチラシ作成の費用などに使用。

お金は直接金融機関に振り込んだりすることができるため、寄付したい施設に振込先などを問い合わせてみてください。

また、クラウドファンディングなどを実施しているこども食堂もあるため、そこに参加することによって寄付をするという形をとることもできます。

もしかしたらこども食堂の起ち上げから参加することができるかもしれませんよ。

★場所の提供★

こども食堂を開くにはやはり「場所」が必要なので、それを提供することはこども食堂を開きたい人たちにとってはとてもありがたいことです。

開催するたびに場所を探すのではなく、固定された場所があれば子どもも利用しやすいですし、施設側も余計な費用を使うことなく安定して開催できます。

そのため「場所の提供」もこども食堂を行う人にとっては有益なものになるのです。

例えば空き家を所持している人なら、そこをこども食堂とすれば、空き家の活用にもなりますし、こども食堂を経営する人にとっては安定した場所が得られて一石二鳥です。

また、飲食店を経営しているという場合、そのお店の休業日にこども食堂として貸し出すということもできます。

飲食店は調理器具などもそろっているため、子どものための食事を作るにはうってつけです。調理道具をそろえるお金も少なくて済みます。

さらに、既に飲食店の営業許可を取得しているというメリットもあります。

★自分の居場所にもなる★

ボランティアとしてこども食堂で活動することによってボランティアを行う側も「自分の居場所を確保できる」という良い点もあります。

こども食堂に通ってくるのは子どもだけでなく、シニアの方や学生など、幅広い年齢層の人がいます。

その中で色々な人と関わりを持っていけば、コミュニケーション力も上がりますし、尚且つ自分の居場所としても機能することになります。

小さな子とは一緒に遊んだり、小学生には勉強の手伝いをしてあげたり、シニアや大人の人には話を傾聴する、話し相手になるといった風に様々な関わり方ができます。

自分のコミュニケーション力があがるだけでなく、周囲の人にとっても「欠かせない存在」として見てもらえると思います。

それが感じられたら、そこはあなたの「居場所」です。

もし学校や会社で人間関係がうまくいっていなくても、こども食堂でボランティアをすることによって仲間の輪が広がる。

「自分はここにいていいんだ」と思える。

「人の為」だけでなく「自分の居場所」ができる。

こども食堂でのボランティアは、そのような貴重な体験ができる場となる可能性もあります。

もし今こども食堂でのボランティアをやろうか迷っている方は、ぜひ一歩前に進んでみてください。今までに感じられなかったやりがいがあるかもしれませんよ。

■まとめ

以上、こども食堂の役割からメリット・デメリット、またボランティアへの参加の仕方までまとめましたがいかがでしたか?

こども食堂は、子どもの「孤食」を防ぐ役割をするだけでなく、様々な人のつながりを形成する場でもあります。

もちろん温かい食事を食べることができるというのはありがたいことです。さらに一緒にご飯を食べる仲間がいるというのも嬉しいことです。

親も自分のこどもに栄養のある食事を食べてもらえていれば安心できると思います。

そして、毎日開催されるところばかりではありませんが、開催される日は子どもが一人でいる、という心配も少しはなくなるかもしれません。

また、こども食堂を利用する大人同士のつながりが持てるのもメリットです。何故なら同じような悩みを抱えている可能性が高いからです。

子どもには温かい食事を提供でき、大人にも同じような境遇の仲間ができる。

こども食堂は、人と人を繋ぐ場です。

これからも、活動の輪が広まっていくことを期待します。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。