フリースクールってどんなところ?~復学だけがゴールじゃない!~

子ども

みなさんは不登校の児童生徒などが通う「フリースクール」をご存知ですか?


フリースクールとは、いじめにあって学校に行けなくなったり、家庭環境の問題などで学校に行けなくなった子のための施設です。

こういった「フリースクール」のような不登校の子の居場所があるにも関わらず、利用しているのは不登校の子の約2~3%ほどしかいないのが現状です。しかし、不登校の子どもは年々増加傾向をたどっています。

そこで、今回は不登校の実態と原因、定義、またフリースクールとはどんなところか、その利用費、そして復学せず卒業した場合将来にはどんな道があるのかなどをまとめましたので、興味を持たれた方はご覧ください。

■不登校とは?~不登校児の増加と原因~

まず、不登校とはどんな状態のことをいうのでしょうか?

文部科学省によると

不登校児童生徒とは、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的理由による者を除いたもの

と定義されています。

それを踏まえたうえで文部科学省の調査を見てみますと、小・中学校における不登校児童生徒数は年々増加傾向にあり、令和元年には18万1272人となりました。
内訳としては、小学校が5万3350人、中学校が12万7922人となっています。

そして、いじめの要因として多いものは「無気力・不安39.9%」「いじめを除く友人関係をめぐる問題(15.1%)」「親子のかかりわり方10.2%」とされています。

★筆者も不登校だった★
筆者も小・中学生時代は不登校でした。原因はいじめ


容姿のことをからかわれたり、悪口や陰口を言われたりといった日々が続いたので、最初は1週間に1回休む、だったのが2回になり3回になり、ついには全く行けなくなりました。
筆者の親は教育熱心でしたので、毎日「学校に行きなさい!」「なんで行けないの!」と叱責される日々でした。
学校に行けばいじめられる。家にいれば両親に怒鳴られる。そんな板挟みの状況が続き、とても苦しい思いをしたのを今でもおぼえています。

そんな時に筆者を救ってくれたのが学校内にあった「相談室」です。相談室では、週に数回しか登校してこない子や、来てもお昼には帰ってしまう子など様々な子たちがいました。


相談室にはスクールカウンセラーが配置されており、週に1回は個別面談の日を設けてもらえて、そこでは家庭の悩みやいじめられていて教室に行けないことなどを話しました。

相談室では特に「この時間にこれをやる!」という決まりはなく、勉強をしている子がいたり、読書をしている子がいたり、またパソコンで無料のサーバーを借りてホームページを作っている、という子もいました。

とても自由で、児童の意見を尊重してくれるとてもいいところだったと今でも思います。


筆者としては、こんな感じのスケールが大きくなったものが「フリースクール」だと思うのですが、実際はどうなのでしょうか?

■フリースクールってどんなところ?

フリースクールは、不登校やひきこもりなど、さまざまな事情を抱えた子どもたちに‶居場所〟を提供する施設です。

また、軽度の発達障害、身体障害、知的障害の子どもを受け入れ、学びの場としているところもあります。

今では500ヶ所ほどあるといわれており、個人で経営する民間施設だったり、NPO法人が運営していたりする「民間施設」を‶フリースクール〟と言います。

施設によって教育方針も様々ですし、かかる費用も様々です。しかし共通しているのは‶子どもの主体性を尊重する〟という点です。

フリースクールには入学試験などはなく、多くが幅広い年齢の子どもたちが一緒に自分らしく過ごす場として機能しているのです。(対象を限定しているところもあります)

同じように不登校だったり、ひきこもり、または家庭に様々な事情があって居場所がない、など同じような悩みを持った子が多いので、学校などより悩みを分かち合える友人ができやすいというのもメリットです。

また私が通っていた相談室のように、カリキュラムをきちっと決めているところより、子どもがやりたいこと、例えば読書をしていたり好きな教科の勉強をしていたりと、子どもの主体性が尊重され、自由度も高いと言えます。

それに加えて、レジャー活動や季節ごとのイベントなど子どもが楽しめる行事を企画して行っている施設もあり、同じ施設に通う子同士の仲も深まりやすいでしょう。

また子どもへのカウンセリングや個別指導を行っているところも多く、子どものこころのケアも実施されています。

子どもが学校へ通えなくなると「学習が遅れるのではないか」「クラスのみんなに置いていかれるのではないか」と情緒的にも不安定になりがちです。

そのため、カウンセリングによって子どものこころの不安などを取り除き、自分の殻に閉じこもってしまうのを防ぐのです。

自宅で家族だけとかかわっているより、フリースクールに通って他の子どもたちやスタッフとかかわりを持つことにより、社会性を失わないようにすることが大切だと言えます。

■フリースクールの形態の違い

一口にフリースクールといっても、様々な形態がありますので、紹介していきたいと思います。


1.元気回復を目指すタイプ
これは学校復帰を第一の目的とせず、不登校などの子どもの自信と元気を取り戻すためのスクールです。

学校復帰を無理にさせようとするのではなく、スタッフや仲間とのかかわりの中で自信と元気を取り戻すのを目標とします。

2.学校復帰を目指すタイプ
いずれは復学をめざす子どもたちが、ストレスケアなどのために一時的に利用する施設です。学校の学習の進度に合わせて、学習支援を行っていきます。

3.学習障害や発達障害を支援するタイプ
学習障害や発達障害が原因で学校に行けなくなった子どもたちのために、人間関係の構築などを専門職がサポートして学んでいく施設です。

4.医療関係と連携をとっているタイプ
こころや身体など医療が必要な子どもたちのための施設です。医療機関と連携をとっているところに特徴があります。

5.自宅訪問タイプ
施設に通うのが難しい子に対して、スタッフが家などを訪問します。基本的にはその子が主体的にやっていること(読書、遊び、ゲームなど)を見守り、働きかけていくことによって外へ出る気持ちが戻るようサポートしていきます。

6.自然の中で共同生活をするタイプ
他の子たちと一緒に自然の中で共同生活を送ることによって、安心感や自立心、学ぶ意欲を取り戻させようとするタイプです。自然豊かな立地環境であるところが多いです。

7.通信制高校やサポート校が小中等部として開設しているタイプ
小・中学生が高校生の使う部屋を使えたり、高校生を教えている先生が小・中学生の勉強を見てくれたりするので、進学を考えている子には合っていると思われます。時間割がきっちり決められているタイプと、自分が学びたいことを学びたいときにするタイプがあります。

8.オルタナティブ・スクールと呼ばれるタイプ
子どもの主体性を伸ばす新しいタイプのスクールです。子どもが不登校かどうかではなく、その施設の教育方針などに共感する親子に選ばれるスクールです。

★サポート校との違い★
フリースクールが精神面のケアなどに重点を置いているのと違い、サポート校では学習面を重視します。学習支援に重点を置いており、「学習塾」という色合いが強いのがサポート校です。

サポート校では通信制高校に通う子たちの学習支援を行うことを軸足としています。

そのため、入学するには「中学校卒業見込」「中学校卒業者」「通信制高校在籍者」などの資格要件があります。

また学校によっては、高校卒業程度認定試験(高認/旧大検)の取得を目指す子どもだけを対象にしたところもあります。

■フリースクールは出席扱いになるの?費用は?

フリースクールに通っていることを出席とするかどうかは、その学校の校長先生の判断にゆだねられます。


フリースクールに通う子どもの出席扱いについては、小・中学校は1992年から、高校は2009年から認定が行われています。

しかし義務的に「出席扱いとする」という訳ではなく、前述したように在籍している校長先生の判断にゆだねられ、校長先生が「不適切だ」と判断しない限りは出席扱いとなる、というシステムです。

児童生徒の出席扱いについて、文部科学省は以下のような姿勢を示しています。

不登校児童生徒の中には、教育センター(適応指導教室)やいわゆるフリースクールなど、学校外の施設において相談・指導を受けている者もおり、このような児童生徒の努力を学校として適切に評価し、学校復帰などの社会的自立を支援するため、小・中・高等学校の不登校児童生徒が学校外の機関で指導等を受ける場合について、一定要件を満たすときは校長は指導要録上「出席扱い」にできる

というものです。

そしてこの「一定要件」は

1.保護者と学校との間に十分な連携・協力体制がとれていること。
2.教育委員会などが設置する教育センターなどの公的機関であること。
3.公的機関に通うことが困難など不具合がある場合は、民間の相談・指導施設も可。
 ただ、適切であるかどうかは校長や設置者である教育委員会と連携をとり判断する。
4.当該施設に通所または入所して相談・指導を受けることを前提とする。
5.学校外での指導内容が学校の教育課程に適切と判断された場合、学習の評価を適切に行い、指導要録に記入したり、通知表などで保護者や施設に伝えたりすること。

といったものを指します。簡単に言うと「学校外の施設がきちんとした指導をしており、校長先生が認めたら出席扱いになる」という訳です。

高校においては、義務教育ではなくなるので要件も少し変わります。
「学校外の施設がきちんと指導しており校長先生が認めたらOK」というスタンスは変わらないのですが、前述の5番の要件が削除されます。

ただ、出席していたからと言って‶卒業できる〟訳ではないのでその点はご注意を。

★フリースクールの費用は?★
平成27年3月に行われた文部科学省の授業料(月額)の調査では、平均して3万3000円でした。また授業料を1~3万円・3~5万円としているところが4割弱となりました。


授業料の幅は大きく、無料というところもありますし、10万円以上かかるというところもあります。費用の面で心配がある場合は説明を受ける時にきちんと確認しておきましょう。

また、入会金の平均額としては5万3000円が平均となっています。

★フリースクール卒業後の進路は?★
フリースクールに通っていても出席扱いになっていれば、在籍校の定める必要な出席数を満たせばそのまま卒業、ということになります(小・中学校の場合)

高校の卒業資格においては、高校卒業程度認定試験(高認/旧大検)をとる、フリースクールと定時制高校や通信制高校を併用して卒業を目指すなどの道があげられます。

■フリースクールについてまとめ

以上、不登校児の現状からフリースクールとはどんなところか、また費用などについてまとめてきましたが、いかがでしたでしょうか。

不登校などの理由でフリースクールを探す際は、その子に合ったタイプのフリースクールか、また費用面はどうかなどきちんとした調べをする必要があります。

インターネットで情報収集をしたり、実際にそこを卒業した先輩に体験談を聞くなどするといいと思います。

復学だけを目指すのではなく、その子が‶自分らしい〟人生を送っていくためにはどのような道が合っているのかを当事者や周囲が一緒になって考えることが大切です。

その際にはその子の意思を最大限に尊重し、またアドバイスをする時も押し付けるようなものにならないよう心がけてほしいと思います。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。