薬物依存症克服~DARC(ダルク)とは?薬物依存症とは?~

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皆さんは「DARC(ダルク)」という言葉を知っていますか?

これはDDRUG=薬物)・AADDICTION_=アディクション/嗜癖・病的依存)・RRIHABILITATION=リハビリテーション/回復)・C(CENTER=センター/施設・建物)の頭文字をとって「DARC(ダルク)」としたものです。

この「DARC」というのは造語で、覚せい剤、有機溶剤(シンナーなど)市販薬、その他の薬物への依存から回復するためのプログラムを行う民間の薬物依存症リハビリテーション施設の事を指します。

覚せい剤、有機溶剤(シンナーなど)、市販薬、その他薬物への依存から脱出するために薬物依存者がプログラムを行う民間の薬物依存症リハビリ施設です。

そんなダルクや薬物依存症の症状、周りの心構えなどについてまとめました。

■薬物依存って?

薬物の乱用を繰り返すと、薬物依存という「状態」に陥ります。

薬物依存とはWHO (世界保健機関)により、世界共通概念として定義が定められています。

分かりやすく言うと
・薬物を使いたいという強い渇望がある。
・薬物をやめようとしてもやめられない。
・薬物をやめようとすると離脱症状が出る。

といった状態のことをいいます。

覚せい剤や麻薬・向精神薬、大麻などによる依存だけでなく、広い意味ではシンナー、睡眠薬、抗不安薬など、またアルコールやニコチンも対象とすることがあります。

依存の症状には精神依存と身体依存の2つが挙げられます。

精神依存とは‶強い欲求の為その薬物の使用を意志でコントロールできない状態〟のことで、例えばアルコール依存症の人がお酒がないとイライラしてしまったり、ニコチン依存症の人がタバコがないと落ち着かなくなったりするのはこの「精神依存」に含まれます。

身体依存離脱症状を生じる状態のことで、アルコール依存症の人がアルコールが抜けてくると手の振戦(震え)などの症状が現れるのがこの「身体依存」です。

また、薬物依存の恐ろしい症状に「耐性の形成」があります。

これは薬物を乱用しているうちに同じ量では快感を感じなくなり(耐性が形成されるため)摂取する量がだんだん増えたり使用する回数が増えるなどしてしまうことです。

「好奇心」「冒険心」など軽い気持ちで覚せい剤に手を出してしまうと、覚せい剤は耐性が付くのが早いため、すぐに依存症となってしまう可能性があります。

軽い気持ちで覚せい剤などに手を出してしまうと、それからの人生が台無しになってしまうのです。

「ダイエットに効果がある」「一度だけなら大丈夫」などといった気持ちで手を出してしまうのは危険です。

例えば親や学校への反抗、社会や人生の様々なストレスや孤独感などが原因で薬物を乱用すると、薬物への依存性は高くなっていき、依存から抜け出せなくなっていきます。

近年、若者でも薬物などの依存性物質の広まりがある原因として、入手のしやすさ、薬物を意識させない巧妙さ、お酒との結びつきなどを挙げることができます。

例えば薬物を「スピード」などという隠語で呼ぶことによって、知識のない若者はそれが薬物であると分からず‶気分が良くなる何か(合法的な)〟と勘違いしてしまうかも知れません。

つまり「薬物を使用している」という意識がないままに依存症になってしまう恐れがあるのです。

また携帯電話やスマートフォンを使用して簡単に取引ができてしまうというのも依存症物質の広まりの背景にあるかもしれません。

いずれにしても薬物に対する正しい知識を持ち、使用を誘われても「NO!」と言える勇気を持てるような勇気と、好奇心など軽い気持ちで薬物に手を出さないことが重要です。

■薬物依存症の症状

rここで、薬物依存症のチェック表を掲載します。あなたもチェックしてみてください。

・薬を止めたいという気持ちはあるが行動には移せない
・薬の効果が切れると離脱症状が出る
・薬の量がだんだん増えてきている
・薬を使わない時間が短くなっている
・薬を手に入れるためならいくらでもお金や時間を使う

どうでしたか?薬というのは覚せい剤のみではありません。精神科で出される向精神薬や抗不安薬、睡眠薬なども含まれます。

上記の内どれか一つでも当てはまれば薬物依存症の可能性があります(必ずという訳ではありません)

気になる方は精神科などを訪れてみることをお勧めします。

薬物依存症は癌と同じ「進行性疾患」です。薬物を使用し続ける限り、脳の障害は悪化してしまいます。

薬物依存症は4つのステージに分けられます。

1.依存期

共通した症状として、時折襲ってくる薬物への渇望が挙げられます。

2.離脱症期

薬物が切れかけた時に、身体的・精神的不調が現れます。
身体的な不調としては

・不快感
・不眠
・異常発汗
・めまい

などの自律神経症状が主となります。

精神的な不調としては

・イライラ
・意識がもうろうとする
・夢遊病患者のような行動を行う(意識障害のような症状)

などが挙げられます。

3.精神病期

幻聴・幻視・被害妄想を主とします。他の人の言動について勘ぐりやすくなるのもこの時期の特徴です。

4.認知障害期

記憶障害が中心となります。

記憶障害は自分では気づきにくいことが多いですが、ちょっとした物忘れや物事を覚えられないということから自覚することもあります。

この4つのステージが薬物依存症の症状です。

治療法としては、心理療法・薬物療法・作業療法・生活環境調整などを当事者の病気の程度や必要性に応じて行っていくことになります。

依存期は心理療法、精神病期は薬物療法が主となることが多いです。

■ダルクって何をするの?

前述のような薬物依存者の人が共同生活を送りながら、社会復帰するためにミーティングなどのプログラムを行っていくのが「ダルク」です。

ダルクでは「ホーム」と呼ばれる施設で仲間と共に薬物を止められるよう協力しながら生活を送っていくとともに「セカンドチャンス」という施設で日中活動を行います。

ただ、この「セカンドチャンス」という施設は全国のダルクにある訳ではなく、一部の地域に設置されている施設になります。

セカンドチャンスとはデイケアのようなところです。

セカンドチャンスではプログラムやミーティング、レクリエーション、相談などが行われます。

またダルクのプログラムには次のようなものがあります(一例です)

・グループミーティング(言いっぱなし、聞きっぱなし)
・ハウスミーティング(施設内でのスケジュール確認など)
・作業、料理プログラム
・スポーツプログラム(団体・個人競技)
・ボランティア活動(草刈りなど)
・レクリエーション
・農作業
・就労体験

またNA(ナルコティクス・アノニマス/ Narcotics Anonymousの略)で行われている「12のステップ」のプログラムを実施している施設もあります。

NAとは、薬物依存からの回復を目指す薬物依存者の国際的且つ地域に根差した集まりのことを言います。

NAもダルクと同じように薬物依存者の自助グループと位置付けられています。

ここで「NAの12のステップ」について紹介したいと思います。

1.私たちは、アディクションに対して無力であり、生きていくことがどうにもならなくなったことを認 めた。
2.私たちは、自分より偉大な力が、私たちを正気に戻してくれると信じるようになった。
3.私たちは、私たちの意志といのちを、自分で理解している神ハイヤーパワーの配慮にゆだねる決心をした。
4.私たちは、徹底して、恐れることなく、自分自身のモラルの棚卸表を作った。
5.私たちは、神に対し、自分自身に対し、もう一人の人間に対し、自分の誤りの正確な本質を認めた。
6.私たちは、これらの性格上の欠点をすべて取り除くことを、神にゆだねる心の準備が完全にできた。
7.私たちは、自分の短所を取り除いてください、と謙虚に神に求めた。
8.私たちは、私たちが傷つけたすべての人のリストを作り、そのすべての人たちに埋め合わせをする気持ちになった。
9.私たちは、その人たち、または他の人々を傷つけないかぎり、機会あるたびに直接埋め合わせをした。
10.私たちは、自分の生き方の棚卸を実行し続け、誤ったときは直ちに認めた。
11.私たちは、自分で理解している神との意識的ふれあいを深めるために、私たちに向けられた神の意志を知り、それだけを行っていく力を、祈りと黙想によって求めた。
12.これらのステップを経た結果、 スピリチュアルに目覚め、この話をアディクト(人生のすべてが薬物に支配されている人間)に伝え、また自分のあらゆることにこの原理を実践するように努力した。

これが「NAの12のステップ」です。これらを順番に行っていき、生活の中にも取り入れることで「クリーンな状態」を保てるようにします。クリーンな状態を保つことによって薬物からの回復を目指します。

「アディクション」とは「嗜癖」とも言い、精神医学用語で用いることが多い言葉です。

世界保健機構(WHO)の定義では特定の物質(薬物)を使用することを好む傾向を病的な意味も含めて「薬物嗜癖」と呼んで定義しています。

ダルクの中にはこちらのステップを取り入れながらプログラムを行っているところもあります。

また社会復帰したときのために、以下のようなサポートを行っているダルクもあります。

★金銭管理★

入所者の同意のもと、金銭管理を行います。まず第一の目的としては薬物を買えないように、ということが挙げられます。

最初は1日分の管理、次は1週間ごとに管理、という風にステップを踏みながら必要なお金をスタッフが管理します。

そして最終的には一人暮らしをすることを想定して1ヶ月分のお金を渡すことになります。

★生活サポート★

地域で自立していく為に、前述したような料理作りや生活リズムづくり、洗濯、掃除など‶自分のことは自分で行えるように〟サポートしていきます。何かあった時に備えて、ホームにスタッフが常駐するようになっています。

★健康管理★

必要に応じて、病院の受診援助を行います。

また東京ダルクを例に挙げると、セカンドチャンスでは月に1度看護師による健康管理が行われるところもあります。

そして食事の提供を行っているダルクも存在します。

★就労サポート★

個人の特性や、向いていることなどについて話し合いをしながら就労に向けての準備を行っていきます。

履歴書の書き方を練習したり、ハローワークに行く場合は同行支援を行うこともあります。

個人差はありますが、スーパーのレジなど軽作業から重作業へとステップアップしていくことが多いです。

いきなりストレスのかかる仕事に就いてしまうと薬物の再使用につながってしまう可能性がある為、なるべく負担の少ない仕事からチャレンジしていくことが多いようです。

どこで働くにしても、本人の「働きたい・薬物を止めて自立して生活したい」という気持ちを重要視します。

このような支援を受けながら、当事者は地域で生活できるような能力を培っていきます。

ダルクでは同じ悩みと闘っている仲間もいますし、それを支えてくれるスタッフも在中していますので、本人が挫折しそうになっても周りが支えてくれます。

これがダルクの一番のメリットなのではないでしょうか。

■薬物依存症の人の周囲の方へ

あなたの身近な人に、薬物に手を出してしまった人がいたら。

また、睡眠薬や処方薬・市販薬やアルコールの依存症になってしまったら。

あなたが家族の立場だったら「何でもっと早く気づいてあげられなかったんだろう」と後悔するかもしれません。

「私たちの育て方が悪かったのだろうか」と自分たちを責めてしまうかも知れません。

また世間体も気になるでしょう。

身近な人が警察に連行されるなどということは「普通の」生活を送っていればあり得ないことです。

しかし、それが現実に起きてしまったら。

当事者が戻ってきたとき「一回警察に捕まったのだからもう大丈夫だろう」と思いますか?

薬物は「薬物依存症」という病気があるように薬物に「依存」している状態です。

また何かをきっかけに薬物に手を出し、警察に捕まる可能性もあります。

一度薬物に手を出してしまった以上、ひとりだけでは回復の道を拓くのは難しいと思います。

ですから、専門家を頼ってください。

薬物依存症の専門外来もあります。保健所や精神保健福祉センターなどもあります。あなたにできることは当事者を信じて見守るのではなく「専門家に相談すること」です。

もちろんダルクも相談先の一つです。

当事者を一般社会に引き戻したいのなら、相談をすることによって専門家の力を借り、完全に薬物との縁を断ち切るサポートをすることです。

そして、依存症への理解を深めていってください。専門家から話を聞いたり、ネットで調べたり、薬物依存の家族会に入るなどして、知識を得てください。

知識を得ることによって、当事者を理解していってください。

薬物依存の人の中にも「自分は問題ない」「いつでも止められる」といって止めない人もいるでしょう。

しかし、そういった人には毅然とした態度で対応することが必要です。

「無理を言ったら可哀想」などと言っている場合ではありません。薬物は脳をはじめ、からだの様々な部分を破壊します。

当事者のからだやこころを守るためにも、医療につなげることが家族など周囲の人の役目です。

一度医療につながってもなかなか改善の兆しが見えないかもしれません。しかし薬物との闘いは根競べです。

辛抱強く、一歩戻ってしまっても、また前に進めるように当事者の背中を押す。

いくら治療が前に進まないからといって自分を責めない。治療の主体は当事者です。いくら治療が進まないと言ってもあなただけのせいではありません。

自分を責めている時間があったら当事者がどうしたら元に戻れるかを考える時間にしてください。

回復への道は当事者自身が歩むものです。あなたが真ん中を歩くわけではありません。

当事者の横で、当事者がまっすぐ前に進めるようにサポートしていくのが周囲の役割です。

そのためには、前述したように「誰かに相談すること」「依存症について理解すること」が必要となってきます。一人だけの力では限界があります。

そういった時のためにあるのが、NAなどの自助グループやダルクのようなリハビリテーション施設、または家族会なのです。まずはとにかく「相談する」ことが大切です。あなただけで抱え込まないでください。

■まとめ


薬物依存症の症状や、NAの12のステップ、身近な人の心構えなど紹介してきました。

薬物は一度手を染めると抜け出すことが難しいです。その回復のためにあるのがダルクやNAなどの自助グループです。

ダルクでは一度挫折しそうになっても仲間やスタッフの協力で立ち直れる可能性が高いです。

仲間と一緒に生活を送ることによって、薬物を使用する前の自分に戻れるように生活のリズムを整え、自立の準備をし、薬物と縁を切る

そして、地域に戻ったら二度と同じ過ちを犯さないよう、規律正しい生活を送る。

また、家族や周囲の人は当事者が回復への道を歩めるように専門家に相談し、依存症に対しての理解を深める。当事者会や自助会とのつながりを持ち、同じ悩みがある仲間との付き合いを増やす。

当事者や周囲の人が「自分が今、できること」を行っていくことで、薬物依存からは回復できると思います。

また、当然のことですが興味本位で薬物に手を出すことは決してやらないでください。あなたや周囲の人の人生を台無しにします。

それだけは守ってください。筆者からのお願いです。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。