不登校から大学進学へ~高校卒業程度認定試験とは?~

高校卒業程度認定試験
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最近、不登校が社会問題の一つとなっています。特に中学生で不登校の方は、進路について心配されていることと思います。しかし、高校に行くだけが目標ではありません。高校に行かなくても、大学受験が可能な資格を取得することができる制度があります。その制度について、自分の経験談も交えながら紹介したいと思います。

■不登校だった私~別室登校という選択~

中学時代、私はいじめられていました。私がおとなしくからかいやすかったのか、容姿のことなどで毎日のように悪口を言われ、しかもクラス全員から無視をされていました。

もちろん友達などできず、学校に行けば孤立状態で、常に一人ぼっちでした。私が中学生だったころは、まだ「不登校」というのも今ほど社会問題となっておらず、親は世間体を気にして学校に行くようにと叱責してきました。

しかし、不登校になった私は、家にこもりきりでした。「外に出たら誰かに悪口を言われるんじゃないか」「人の視線が怖い」などという思いから、外出するのもはばかられました。

親からは「学校を休むな!」「怠けているんじゃない!」などと叱責されましたが、登校しようとすると身体の不調が出てしまい、1年生の時はほぼ登校することなく終わりました。

そして中学2年生になり学校の先生から「教室にいけないなら、相談室に通ってみてはどうか?」という提案を受けました。

最初は学校に行く気など起きず、かなり迷っていましたが勇気を振り絞って相談室に行ってみました。

すると、当時はまだ珍しかったスクールソーシャルワーカーも配置されており、望めば個人面談の機会も設けてくださり、親身になって相談に乗ってくれる貴重な存在でした

スクールソーシャルワーカーの方は情緒面のサポートに大変力を入れてくださる方で1週間に1回は個人面談があり、どんな悩みでも温かく受け入れてくださいました

また、学習面では教科担任の助力もあり、相談室で模擬授業のようなものをやっていただいて、定期テストもほかの生徒と同じように受けました。

■別室登校から高校へ~ストレスフルだった毎日~


別室登校を選択してからは、授業に出られない分自分に合う参考書などを使い、苦手分野を中心に勉強を進めていきました。

希望の学校に合格できたのは、学校側の手厚いバックアップがあったからだと実感しています。

しかし、喜びもつかの間、長い間「集団で生活をする」ことなどから離れていた私には高校生活は楽しいものとは思えなかったです。

私と仲良くしてくれようとした人もいたのですが、いじめを経験している私は「陰口を言っているんじゃないか」「本当は仲良くなんてしたくないんじゃないか」と深読みしてしまい、一人で行動することが多かったように思います。   

また、勉強についていけるかどうかも不安でした。最初のうちは中学の復習などだったのでついていけましたが、だんだん遅れを取るようになりました。

そのようなことからストレスが重なり、統合失調症を発病してしまった私は1年で高校を辞めてしまいました

中退後、父が見つけてきてくれた高認の予備校に通うことになります。それでは、高認高校卒業程度認定試験)とはどんなものなのでしょうか?

■高認(高校卒業程度認定試験)とはどんなもの?

高認とは、文部科学省のホームページによると

高等学校卒業程度認定試験は、様々な理由で、高等学校を卒業できなかった者等の学習成果を適切に評価し、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があるかどうかを認定するための試験

とされています。

高認を取得する方法としては、例えば

  1. 高認の受験予備校に通う(自分で勉強する、塾に通うなどもあり)
  2. 高認の試験を受け、合格する
  3. 大学受験のための予備校に通う
  4. 大学や専門学校、短期大学などへ進む

という方法や、

  1. 自力で高認試験の勉強をする(受験資格を満たしているのが条件)
  2. 高認の試験を受け、合格する
  3. 大学受験のための予備校に通う(塾に通う、自分で勉強するなどもあり)
  4. 大学や専門学校、短期大学に進む

など、人それぞれの方法があると思います。高認を受けようと思われている方は自分でいろいろと調べてみて、自分に合った勉強方法を見つけることが大切だと思います。

受験資格としては、「受験しようとする試験の日が属する年度の終わりまでに満16歳になる方」となります。平成17年から、全日制の高校に通っていらっしゃる方で満16歳以上の方も受験可能となりました。

受験科目としては、国語地理歴史公民数学理科英語があり、それぞれの科目の中から1科目、2科目などと複数を選ぶ形式です。

また、英検などの技能審査の合格により、受験科目が免除になる場合もありますので、一度免除要件を確認してみると該当するものがあるかもしれません。

どんな問題が出るのだろう?」と気になるときは、文部科学省の高認についてのページから過去問題集を見ることができるので、勉強の参考にしてみてください。

過去問題を繰り返し解くことによって、試験内容の傾向をつかむことができるので、一度は過去の問題を解いてみることもおすすめです。

■高認合格から大学進学~そして社会福祉士・精神保健福祉士資格取得への道のり~

高校を中退した私は、父が見つけてきてくれた高認合格のための予備校に通うことになりました。

そこには、私と同じように不登校だった子や、フリースクールから来た子、また高校を中退した子など様々な理由で高認取得を目指す子が在籍していました。

そんな「仲間」のような子ばかりでしたので、恐れていたいじめなどもなく、とても楽しい予備校生活になり、今ではいい思い出となっています。

また、私が通っていた予備校は少人数制で、アットホームな雰囲気だったので、授業に対する質問だけでなく、普段の悩みなども相談しやすいとてもいい環境でした。

そんな良い環境が整った場所だったため、中学の時不登校だった私が嘘のように、毎日楽しく登校するほどでした。

予備校では、高認試験の勉強方法として、先生が高認の傾向や対策を分析した問題集を作ってくださり、それをもとに授業を行う、という形式でした。

また、自習室も設けてあり、そこには誰でも利用してよい高認の過去問題集や参考書もあったので、「自分でコツコツ勉強をする」ことが好きな私には理想的な環境でした。

そのような意欲的に勉強に取り組める環境でしたので、自分なりにカリキュラムを立てながら高認合格に向けて勉強に励むことができたのだと思います。その結果17歳の時に無事高認に合格することができました。

しかし、18歳の時持病の統合失調症が悪化し、半年間入院してしまいました。そのため、19歳の時から大学受験の予備校に通うことになります。

そこはサテライトで授業を行う予備校だったので、受験科目の授業のDVDを観たり、また時間に余裕があるときは自習室に何時間もこもってひたすら勉強する毎日でした。

私が通っていた予備校の先生方は個性が強い方や、面白い方が多く、より一層楽しく勉強をすることができました。

その努力が実り、一年浪人はしたものの自分の希望する福祉系の大学に無事合格しました。私の進学した大学は福祉と心理学などを主とする大学だったためか、穏やかな性格の学生が多く、嬉しいことにたくさんの仲間にも恵まれ、楽しい学生生活だったなぁと思っています。

大学進学後も資格要件に資格を取るために必要な科目をクリアしながら、自分の夢であった社会福祉士・精神保健福祉士の資格をとるための勉強会に入り、同じ目標を持つ仲間と励まし合いながら勉強をする毎日を送りました。

資格取得には実習に行くことも必須となっていますので、実際の現場で専門職の動きや人とのかかわり方を見ることによって、職員の役割を学ぶ大変貴重な機会をいただきました。

資格取得への道のりは平坦なものではありませんでしたが、病気とうまく付き合い、教授や大学の勉強会で一緒になった仲間とともに勉強に励めたことが社会福祉士・精神保健福祉士資格W合格達成の要因なのではないかなぁと実感しています。

■不登校でも夢をあきらめない

中学時代の私からしたら、大学進学など考えられないものでした。しかし相談室でスクールソーシャルワーカーと出会い、「この人のようになりたい!」と思ったことがきっかけで、社会福祉士・精神保健福祉士の資格を取る、という夢ができました

今はA型事業所でコラムを書き、様々なことをネットに発信する作業をしていますが、いずれは専門職の資格を活かして、福祉の道に進みたいと思っています。

自分の努力と良い環境が重なれば、自分の希望する進路に進むことはできると思います。その「良い環境」を作るのには自分の働きかけと、周囲の理解が必須条件となってきます。

そして、夢をかなえるにはたとえ平坦な道のりではないとしても「諦めない」ことが大切です。著者も何度か挫折しかけましたが、「自分はこうなりたいんだ!」という強い思いをもち、それを実現させました。

学校に行けなくても、多少回り道をしても大丈夫です。夢はあきらめない限りきっと叶います。このコラムを読んで、「自分も頑張ってみようかな」と思っていただけたら幸いです。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。