あなたの周りにも?~ひきこもるという選択をした人たち~

いじめ
Alexander GrishinによるPixabayからの画像

ひきこもり。皆さんも一度はこの言葉を聞いたことはあると思います。定職にもつかず、外出もせず、部屋に閉じこもったまま過ごす人達のことです。ひきこもりに伴う症状はどのようなものがあるのか。周囲はどう支援していくのか、触れていきたいと思います。

■ひきこもりってどんな状態?

ひきこもりとはどんな状態をいうのでしょうか?厚生労働省の定義を簡単にまとめてみると、

様々な要因の結果として、社会参加を避け、原則的に6か月以上にわたって概ね家庭にこもっている状態

となります。この文に出てくる「社会参加」には、学校や会社だけでなく、家庭内での交流なども含まれています。

ひきこもりには、大きく分けて2つの要因があると考えられています。

1.統合失調症、学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)等の精神症状により生じるもの
2.1で述べた障害などの生物学的なもの(精神症状など)が原因とは考えにくいもの

の2つです。

1が理由のひきこもりの場合は、早期に医療機関につなぐことによって、症状の悪化を防ぐ必要があります。

例えば、ひきこもってしまう理由の一つに「統合失調症」があげられます。統合失調症の症状は幻聴や幻覚などがひどくなる陽性症状と、やる気の低下・意欲の低下などが生じる陰性症状の2つに分類されます。

陰性症状では、やる気が起きない、何もしたくないなど無気力な状態が続いてしまい、その結果ひきこもってしまう場合があります。

2については、対人関係に失敗して対人恐怖に陥った人や、いじめによってこころに傷を負った人、不登校の長期化によって社会参加が難しくなってしまった人たちなどのことをいいます。

このように様々な原因が重なってなるのがひきこもりですが、「ひきこもり=病気と決めつけてしまうのはいけません

病気・障害がなくてもひきこもりになる人はいます。今は元気に過ごしている人でも、何かが引き金になってひきこもりになる可能性はあるのです。

誰しもがなる可能性がある、それがひきこもりです。

■単なる「怠け」ではないひきこもり~様々な症状と本人の苦しみ~

まず注意しておきたいのが、ひきこもりは「怠けなどではなく、元気がなくなり、無気力になってしまった状態だということです。

しかし、ひきこもりになってしまった本人自身も悩んでいるのです。「学校に行きたいけど行けない」「働きたいけど働けない」「人とコミュニケーションをとりたいけど怖い」など、様々な悩みに一人苦しんでいるのです。

ここからは、ひきこもりに伴ってみられる症状を見ていきたいと思います。まずは一般的に多いといわれる「対人恐怖」です。

例えばいじめが原因の場合、「ほかの人の視線が怖い」「またいじめられたらどうしよう」という考えから、対人恐怖に陥ると考えられます。

対人恐怖になると、自然と人と関わる場から離れようとします。そのため、ひきこもりになってしまう場合もあるのです。

人と関わろう」と思っても、ひきこもりに随伴する症状として、醜形恐怖や赤面恐怖などによりなかなか一歩が踏み出せず、ひきこもりが長期化する可能性もあります。

そのほかにみられる症状としては、生活リズムの崩れから見られる昼夜逆転です。「昼間は人目が気になるから外に出れない」といった思いや、「みんなが働いているのに自分は何もしていない」という引け目から、人気のない夜間帯に活動するようになります。

その結果、昼間は眠くて寝てしまい、だんだん昼夜逆転した生活を送るようになるのです。だいたい深夜2時から3時に活動しだし、明け方に眠るという方が多いようです。

また自分の描いた理想通りにいかない、思うようにいかない腹立たしさを家族に向けることもあります

時には家族に暴力をふるったり、親に対して「お前の育て方が悪かったからこうなったんだ!」と怒鳴りつけることもあります。これでは家庭崩壊にもつながりかねません。

では、家族や周囲の人たちはどういった支援をしていったらいいのでしょうか?

■周囲はどう支援?~ありのままを認めることから始めよう~

まず周囲にできることと言ったら、「ひきこもっている本人」を「そのまま」受け入れてあげることです。

あるがままの」本人を認めてあげることによって、本人を安心させ、周りは協力者であることを知らせます

かといって、いきなり彼らがこもっている部屋に土足で踏み込むのは禁物です。なぜなら、一番大事なのは彼らの安全を脅かさないこと」だからです。

例えば、声掛けをするのならドア越しに、またドアの下からメモを入れる、などといった方法から始めていけば、過敏になっている本人も受け入れやすいと思います。

それにだんだん慣れてきたな、と思ったら、「ドアを開けてもいい?」と聞いてみて、本人の了承が得られれば対面してコミュニケーションをとることもできます。

ここまできたら、一度、今の生活をどう思っているのか、今後のことをどう考えているのかなどじっくり話し合う機会を持つのも大切だと思います。

本人との信頼関係が築けたら、次は社会参加へのステップです。例えば、デイケア当事者会自助グループなどに参加することによって、同じ悩みを持つ仲間がいる場所ことを知ります。

すると、「苦しんでいるのは自分だけじゃないんだ」ということを知ることができ、勇気づけられます。

また家族もほかの家族と情報交換をすることによってひきこもりに対する知識が深まり、本人・家族双方にとってメリットがあります。

ひきこもりの場合は、家族だけで対応するより、こういった自助グループや家族会、精神科クリニックなどを利用するほうが、専門的な知識を得られることから有効とされています

まずはありのままを認め、そこから一歩ずつ段階的に進むことによって、無理なく社会参加につなげることができると思います。

■ひきこもり~家族の中でできることは?~

ひきこもりは、今健康に生活を送っている方にでも起きうる可能性のあるものです。またひきこもりの背景に、精神病が隠れている場合もあります。

いずれにしても、本人やその家族だけで対処するのは難しいものです。そのため、自助グループや医療機関などを有効活用すると、意外とスムーズに事が運んだ、というケースもあります。

また、ひきこもりの裏に精神病が隠れている場合、早期治療が大切となってきます。そのことへの「気づき」には、普段の家族間のコミュニケーションがポイントです。

ちょっと様子がおかしいな…」と思ったら、「何か悩んでいるの?」などと声掛けをするのも事態を悪化させてしまわないための対処法です。

スマホやインターネットが進化した現在、家族間のコミュニケーションが減っている家庭もあります。しかし、お互いに「声掛け」をすることを大切にしていくと、家族の中の風通しもよくなり、ちょっとした異変に気付きやすくなります。

異変に気づいたら、医療機関に相談するなど早期の対応が可能です。そのようなことから、普段から周りとコミュニケーションをとることこそが、事態の悪化を防ぐ特効薬なのではないかと思います。

増える「中高年のひきこもり」についてまとめました!よろしければご覧ください♪⇩

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。