パニック障害・過換気症候群~過呼吸が引き起こす苦しみ~

障害

パニック障害では、突然息が苦しくなったり、心臓の動悸が激しくなったりしてまさに「死にそうな苦しさ」を経験します。

しかし、救急搬送されるなどして病院に行っても、身体的な原因が見つからないことが多いです。

そんな体験を何回も繰り返しているのに、他の人は苦しみを分かってくれない。

いつも「またあの発作が来るかも……。」とおびえながら生活することになってしまいます。


今回はそんな「パニック障害」やよく起こる発作として代表的な「過呼吸(過換気症候群)」についてまとめました。

筆者はパニック障害ではないのですが、緊張や不安から過呼吸が起きることがあり、過呼吸を治める頓服薬を処方してもらっています。

過呼吸は、それが起きている本人はとてつもなく苦しいのですが周りから見ると「死ぬわけないじゃない」と軽く見られることもあります。

また、似たような「過呼吸」の症状を呈する病気に「過換気症候群」があります。

こちらについても解説しましたので、パニック発作や過換気発作の症状や対処法など少しでもご理解いただけたらと思います。

■パニック障害ってどんなもの?


パニック障害におけるパニック発作とは、特に理由もないのに急に動悸やめまい、過呼吸、息切れなどが起こり、生活に支障が出てしまうようなことをいいます。

本人は「このままでは死んでしまうのではないか」という恐怖に襲われ、病院に緊急搬送されることもあるのですが、病院で検査をしても特に異常が見つからないことが多いです。

そして、あんなに苦しかった症状も知らない内に治まっている。

そんな発作が何回も起こるのですが、周囲は「またか」といった態度で、なかなか苦しみを理解してもらえません。

しかし、本人は「いつ発作が起きるのだろう」「あんな死ぬような思いもう嫌だ」といった気持ちを抱いています

パニック発作は、心筋梗塞などの症状によく似ています。そのため最初は循環器科や呼吸器内科を受診するのですが、異常は見つかりません。

本当に心臓や肺に異常があって発作が起こり、緊急搬送される人もいます。

ところが何回検査をしても異常が見つからない人も少なくはないのです。こういった人の場合、パニック障害が疑われます。

しかし、パニック発作で本当に死んでしまうことはありません。

本人にとっては死に直面するような苦しさを経験しますが、心臓や肺に異常のない場合パニック発作によって死に至るようなことはありません。

パニック障害では、基本的にこういったパニック発作を何回も繰り返します。


最初の内は心配してくれていた周囲も「またか」「病気でもないのに苦しいふりをしているのではないか」とまるでオオカミ少年のように扱う人もいます。

本当に苦しくて辛いのに分かってもらえないのは、本人にとってはとても辛いことです。

■予期不安・広場恐怖も起きる


パニック障害は、最初はパニック発作だけですが、それを繰り返していくうちに予期不安や広場恐怖などといった症状が見られるようになることもあります。

★予期不安とは?★
一度パニック発作を起こした人は「またこの死んでしまいそうな発作が起きるのではないか」という不安に襲われることがあります。

・次はもっとひどい発作が起きるのではないか
・次こそ死んでしまうのではないか
・発作が起きても誰も助けてくれないのではないか

などという不安です。こういった不安が消えなくなってしまうことを「予期不安」といいます

★広場恐怖とは?★
前述した「予期不安」のために、もし発作が起きた時に逃げられない場所、助けが得られない場所などを避けるようになってしまいます。

これを「広場恐怖」といいます。

苦手な場所は広場とは限りません。

電車やエレベーターの中、バスの中、また美容院などと人によって苦手とする場所はそれぞれです。

広場恐怖以外に、空間恐怖、外出恐怖などという症状が現れることもあります。

広場恐怖になると予期不安などから学校に行ったり会社に行ったりということが難しくなり、ひきこもりがちになってしまう場合もあります。

広場恐怖を伴わないパニック障害もありますが、大体が広場恐怖を伴います。また、うつ病を併発する場合もあります。

■パニック障害の原因は?かかる割合は?

今のところはっきりした原因は分かっていませんが、一説ではパニック障害の原因としては脳と脳の神経伝達物質の乱れが関わっていると考えられています。

特にセロトニンノルアドレナリンが深くかかわっていると言われています。

★パニック発作は生き延びるためのプログラム★


地震や火事など、生命の危機に直面したときに多くの人はパニック発作と同じ身体反応が生じます。心臓の鼓動が早くなり、血の気が引いてしまって冷静に物事を考えられなくなり、大声で叫びたいといった状況に陥ります。

これらの状態は生き延びるためには有利な反応で、身体に備わった自分の身を守るためのプログラムです。

パニック発作とは、脳が誤作動を起こしてこういった反応が起きた時のことを言います。

パニック障害になる割合は100人に1~2人と多く、男性より女性の方が発症しやすいです。

脳の伝達物質以外の要因としては過労、睡眠不足、ストレス、風邪などの心身の不調が考えられます。

そして、家族歴があると罹患率が高まるとも言われています。

■「過換気発作」とは?~過換気症候群との関係~

パニック発作の一つに「過呼吸」があります。

これは、不安や緊張に襲われたとき、突然息が苦しくなって、息をいくら吸っても酸素が入ってくる感覚がなく、そのうちに手や足がしびれてくるような苦しさに襲われるというものです。

胸の痛みやめまい、動悸などの症状を伴うこともあります。

中には痙攣をおこして意識を失ってしまう場合もありますが、大体は時間と共に治まっていきます。

★もち猫が抱える悩み★

実は、筆者も過呼吸がよくおきるのです。主に緊張感が高まったり、不安になったり、頭がオーバーヒートしたときなどに起こります。

今、筆者は就労継続支援A型事業所にてリモートワークと通所での仕事を交互に取り入れているのですが、家にいる時はまだしも、通所日前日や通所日はとても緊張します。

そのため、通所日の朝は必ずと言っていいほど緊張や不安によって過呼吸が起こります。そういった時のために、通っている精神科で過呼吸止めの頓服の薬を処方してもらっています。

パニック障害ではないのですが、過呼吸の苦しさは分かります。

何かプレッシャーがかかることによって緊張してしまい、動悸がしだし、呼吸が浅くなっていく。

深呼吸をしようと思っても呼吸は浅く、全然酸素が入ってこない感じ。

「このまま息ができなくなって倒れるのではないか」と思ってしまう。

そんな状態なので過呼吸止めを服用するのですが、すぐに効くわけではないので苦しい状態が続きます。

ひどいと意識が遠のいていくような感じがすることもあります。手にしびれを感じることもあります。

過呼吸止めが効くのにも錠剤なので10分以上はかかります。薬が効いてくるまではなんとか深い呼吸を意識し、苦しさに耐えるのみです。

こういった症状は心に抱えているストレスや不安や恐怖、緊張などが原因となって起こる他にも、マラソンなどのスポーツによる肉体疲労からも起こることがあります。

★過換気発作が起きるメカニズムは?★

強い不安や緊張、またはパニック障害の発作などで何度も息を激しく吸って吐く、つまり「過呼吸」の状態が続くと呼吸によって必要以上に二酸化炭素を吐き出してしまい、血液の中では炭酸ガス濃度が低くなってしまいます。

そのため、呼吸をつかさどる中枢神経は炭酸ガス濃度の低下を抑えるために(二酸化炭素を減らさないために)一生懸命呼吸を抑えようとします

そうすると、本人は「呼吸ができない!」とさらにパニックになり余計に呼吸をしようとしてしまいます。

そうなると血管の収縮が起こり手足のけいれんなどにもつながり(テタニーと呼ばれます)これらの症状と不安からさらに過呼吸が酷くなる、という悪循環に陥ってしまうのです。

■もしかして過換気症候群?

こういった「過呼吸」が起きる障害でパニック障害の他に「過換気症候群」というのがあります。

パニック発作と同じく不安や緊張が原因で過呼吸が起きることが多く

自覚症状には

・息苦しい(呼吸困難)
・呼吸が速い
・胸が痛い
・めまいや動悸

などがあります。


先ほども上げたテタニーと呼ばれる足のしびれや筋肉が痙攣したり、収縮して固まる(硬直)症状が出ることもあります。

トルーソー徴候と呼ばれる手のひらをすぼめて親指が中に入り、指がまっすぐ伸びたような特徴的な症状を呈することもあるのです。

この点がパニック障害の過呼吸と異なるところです。

重症の場合は、失神してしまったり、全身に痙攣が起きることもあります。

からだ(臓器など)に異常がないのにこういた症状が見られたら、過換気症候群の可能性もあります。

症状が起きたとしても、一般的には30分~1時間で症状が治まる場合が多く、命を落とすような危険性はありません。

★過換気症候群と心因性呼吸困難★

まず、過換気症候群の病態について見ていきます。

通常、血液中に酸素が不足する状態になると、脳の呼吸中枢が刺激されて過呼吸(通常より深く速い呼吸)になります

過呼吸は過換気を引き起こし、血液がアルカリ性に傾くため、脳の血管が収縮し、血流が低下して失神してしまったり意識が遠のくような感じがする場合があります

またカルシウム濃度の低下で手足のしびれや痙攣が起こることもあります。

「過呼吸」が起きている場合は、酸素の欠乏が起こっていると考え、応急処置をしますが「過換気症候群」の場合は呼吸が乱れる原因が「過呼吸」とは違ってきます。

ここで「過呼吸」と「過換気」の違いについて触れておきましょう。

過呼吸……通常より深く速い呼吸。
過換気……主に精神的な不安などの要因により呼吸中枢が亢進して、血液中に二酸化炭素の蓄積や酸素の不足もないのに過呼吸が起こるもの。

ここでの「換気」とは呼吸で体に酸素を取り込んで、二酸化炭素を吐き出すことを言います。

過換気」とは通常より激しい呼吸(換気)が起きている状態と言えます。

また、過換気症候群の中には過換気を起こしていないと思われるケースも見られ、これらは「心因性呼吸困難」と考え、過換気症候群とは区別するべきであるという意見もあります。

具体的にどう違うかというと、呼吸困難が現れ、血中カルシウム不足のサインの手足のしびれやテタニーが見られる場合は過換気症候群と考えていいでしょう。

パニック障害などの患者さんは換気の状態に大きな問題はないものの呼吸困難を示す心因性呼吸困難のケースである可能性が高いです。

★ペーパーバック法は本当に効くの?★

ペーパーバック法は、血中の二酸化炭素濃度を高めるために行われる治療法で、紙袋を鼻と口に当て、吐いた息を再び吸い込む方法を言います。

しかし、この方法では血中の酸素濃度が低くなりすぎたり、炭酸ガス濃度が過度に上昇しすぎたりして窒息する場合もあるため、現在は推奨されていません。

パニック障害や過換気症候群の他にも心筋梗塞、喘息発作、肺炎、肺水腫などがある人が病態悪化の症状として過呼吸を呈する場合もあります。

こういった場合にペーパーバック法を行うと危険なので、過呼吸状態で救急搬送された人には前述のような病気がないことを確認してから、安定剤などを使って落ち着かせることが多い傾向にあります。

■パニック障害&過換気症候群の治療

★パニック障害の治療★

パニック障害の治療には薬物療法と精神療法があります。

パニック障害の薬物治療の目的としては、まず第一にパニック発作を起こさないようにすること、第二に予期不安や広場恐怖の症状を軽減することとされています。

パニック障害に用いられる薬の効果には、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れを改善して、発作を抑えるというものがあります。

使用する薬には副作用が少ない反面、急に薬をやめてしまうと離脱症状のようなものが現れる場合があります(めまい、発汗、吐き気など)

薬の効果の現れ方は人によって違うため、医師と相談しながら量や種類などを決めていくことになります。

副作用が出ることもあるので、薬を飲んでいて「何かおかしいぞ」と思ったらすぐに医師や薬剤師に相談しましょう。そして、医師から薬を処方された場合は決められた量を決められた時に服用してください。

勝手に断薬したりOD(オーバードーズ/過剰服薬)をすると先ほど述べたような症状が現れたり、せっかく治りかけていたものがまたぶり返してしまう場合もあるので要注意です。

そして、もし発作がなくなってもその状態を維持するために半年から1年は服薬を継続することが必要となってくることが多いです。

これも再発を防ぐためです。パニック発作がなくなったからと言ってすぐにやめてしまうと再発のリスクが高くなってしまいます。

「自分はパニック障害(という病気)なのだ」という認識(病識と言います)をしっかり持ち、服薬の必要性への理解を深めていくことも治療をしていく上では必要なことです。

また、治療の一環として曝露療法や認知行動療法などの精神療法が用いられることも多いです。

薬が効き始め、精神療法の効果も出てきたら、少しずつ外に出たり、苦手だった場所に行ってみるのも治療の一環です。

★過換気症候群の治療法は?★

まず、過呼吸がからだの病気(心臓や肺の病気)が原因で起きているのかストレスなどのこころの病気が原因で起きているのかを調べます。

臓器に異常がある場合は、その病気に合った薬の処方や手術などを行い症状の改善を図ります。

こころに原因がある場合は、症状に合わせて抗うつ薬や抗不安薬、精神療法などを用いて治療していきます。

こころに原因があって過呼吸の状態にあるときは、発作が起きた時に意識的に呼吸をゆっくり、深いものにできるようにします。また断続的に息を止め、二酸化炭素を増やすことで改善することもあります。

深く息を吸って吐く腹式呼吸も有効だとされていますが、発作を起こしている本人はパニック状態にあり、そのようなことを行うことは難しいです。そのため、まずは周りの人が声 かけをするなどして患者本人を落ち着かせることが第一です。

気持ちを安定させたあと、ゆっくり呼吸できるよう指示をして呼吸が落ち着くまで待ちます。

このときに患者が安心できるような声掛けをしたりからだをさするなどすることも患者を落ち着かせる方法の一つです。

以前はペーパーバック法も推奨されていましたが、前述したように今は呼吸困難を引き起こす可能性があるとしてあまり使われることはありません。

■自分でできる予防法・対処法

リラックスできる時間を作ったり、ストレスを上手に発散していくことも発作の予防に繋がります。

仕事や家庭環境でのストレスだけでなく、睡眠不足や過労などもなるべく避けて、こころにもからだにも負担がかからないようにするのが大切です。

仕事がある日は多忙だとしても、休日にはゆっくりと休養する、静かな音楽の流れるカフェに行く、趣味に没頭するなどして「自分のための」時間を作り、ゆとりをもって生活できると良いですね。

これはパニック障害のみならず他の精神疾患がある方や、健常者の方にも言えることです。こころにスペースを作っておくことはとても大切なことなのです。

そのためには「自分が何をすればリラックスできるのか」を知っておくことも必要です。

例えば筆者は、好きなアーティストの音楽を聴きながら読書をしたり、服が好きなので服屋さんに行って、色々な服を見て目の保養をします。

またイライラすることがあったりしたら、それを紙に書きだしてぐちゃぐちゃにし、最後はビリビリと破いてしまいます。

そうすれば人に見られても何が書いているのかわからないですし、イライラしたことをアウトプットすることによってこころも少しスッキリします。

そして筆者はTwitterをやっているので、嫌なことがあったりしたときはそこにツイートすることもあります。鍵垢にしてあり、またツイート内容も特定されないような範囲内です。

しかし、それをやることによってフォロワーさんから共感を得たり「私は○○と対応したよ」などとアドバイスをもらえることもあります。

リアルな世界でのコミュニケーションが苦手な筆者にとっては、Twitterは大事なアウトプットツールなのです。

そんな風に自分なりに話せる友達(ネットの世界でもOKです)や、いざ相談したいことができたときに頼れる人を見つけておく、というのも大事ですね。

話すこと・SNSを活用することなどによって嫌な気持ちを吐き出し、こころにゴミ(ストレス・負の感情など)を溜めておかない様に日ごろから心がけましょう。

それがこころの健康を保つための秘訣です。とにかく、ストレスが「溜まる前に」対処していくことが必要です。

■まとめ

パニック障害や過換気症候群について症状や対処法を見てきました。

パニック発作はいつ起こるかわかりませんし、一度起きると「また起きるのではないか」「今度こそ死んでしまうのではないか」と不安になってしまうと思います。

しかし、適切な治療をすることによって症状を和らげることはできます。

薬を投与されたら医師の指示を守って服用し、精神療法を行うことになったら自分から「病気を治そう」という姿勢で積極的に取り組んでいくことが大切です。

病気を治療していくことももちろん必要ですが、自分の気持ちの持ち方や行動によっても症状の重さ・治療の効果は随分違ってきます。

前述しましたがこころにストレスが「溜まる前に」対処していくことが、こころの健康を保つ秘訣と言えます。

誰かに話を聞いてもらう、紙に書き出す、SNSを活用する等して負の感情はこころの外に出してしまいましょう。

そしてこころに余裕を持ち、なるべくストレスに悩まされることなくゆったりと生活していけると良いですね。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。