自立支援医療制度で経済的負担軽減!~治療に専念するために~

自立支援医療

みなさんは「自立支援医療制度」という言葉を聞いたことはありますか?


自立支援医療には3つ種類があり精神通院医療・更生医療・育成医療障害の種類によってわけられています。

いずれも、障害の治療を続けていく上で経済的負担を減らしてくれるとても役に立つ制度です。

筆者も統合失調症を患っているので、自立支援医療を利用しています。そのため、精神科での診療費・精神科訪問看護費・薬剤費は0円です。

経済的な不安があると、病気の治療費も気になってしまうと思います。ですから、自立支援医療を利用して経済的な負担を減らせれば、治療に専念できるようになると思います。

今回は精神通院医療をメインに、更生医療や育成医療についても解説していきます。

■自立支援医療って?~精神通院医療編~

自立支援医療には、前述のように

・精神通院医療
・更生医療
・育成医療

の3つがあります。精神通院医療は精神障害がある人、更生医療は身体障害の治療などをしている人(18歳以上)育成医療は身体障害がある子ども(18歳未満)で治療を行っている人に対して負担額の軽減を行っていくものです。

今回は精神通院医療から詳細を説明していこうと思います。

精神通院医療の対象は精神障害がある人で、通院による継続的な治療が必要な人が申請・利用できる制度です。

対象者の例を挙げますと

・統合失調症
・気分障害
・薬物などの精神作用物質による急性中毒またはその依存症
・ストレス関連障害や不安障害(例:PTSD、パニック障害)
・知的障害、心理的発達の障害
・アルツハイマー型認知症、血管性認知症
・パーソナリティ障害
・摂食障害
・てんかん

などです。

普段、医療を受ける際は医療保険が適用され、3割負担となります。

それが自立支援医療を利用すると、原則1割負担にまで減額されるのです。

さらに、世帯収入によって‶実質負担なし月5,000円まで、月10,000円まで〟などというように負担額に上限が設けられます。

その上限額を超える医療を受けた場合であっても、上限額以上は負担する必要はありません。

また統合失調症など、長期にわたって高額の治療を受けなければならない人(所得の低い人以外にも)は「重度かつ継続」という区分が適用されます。

要件には以下のようなものがあります。

1.医療保険の「多数該当」(1年間に4回以上高額医療費に該当)している世帯
2.以下の疾患の人

・認知症などの脳機能障害
・精神作用物質使用による精神および行動の障害(依存症など)
・統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
・気分障害(躁うつ病、うつ病など)
・てんかん

3.3年以上の精神医療の経験を有する医師により、以下の精神障害のため計画的集中的な
 通院医療(状態の維持、悪化の防止のための医療を含む)を継続的に要すると診断された
 方として、認定を受けた方

・情動及び行動の障害/不安及び不穏状態

このような要件を満たした場合「重度かつ継続」に当てはまる場合があります(自立支援でいう「世帯」とは、同じ医療保険に加入している人のことをいいます)

このように、世帯収入が低い方や高額医療を継続的に受けている方には医療費の減免措置が取られるので、経済的な不安も減るのではと思います。

制度の対象となる医療としては、外来診療・外来での投薬・デイケア・精神科訪問看護などがあります。

自立支援医療は、あくまでも「外来通院による精神疾患の治療のため」の制度ですので、入院や精神疾患以外の治療には適用とならないのが注意点です。

また、精神科以外の治療で薬を処方された場合は自立支援の適用外となりますので、こちらもご注意ください。

ただ‶精神科の薬〟の副作用で吐き気や便秘が生じている場合などは、医師の判断の下、自立支援の適用となる場合があります。

★自立支援医療(精神通院医療)の申請方法★
1.まずは主治医に「自分が自立支援医療の対象になるか」を確認します。
2.市区町村役場で申請を行います(窓口の名前は地域によって違いますが、障害福祉課と呼ばれることが多いです)

<持ち物>
・申請書(自立支援医療支給認定申請書)
・医師の診断書
・同意書(自立支援医療の支給認定申請にあたり、所得及び課税の状況等を調査することについて同意するための書類)
・健康保険証
・マイナンバー(地域によっては家族全員分が必要な場合があります )
・その他申請に必要なもの(地域によって異なります)

などです。

申請が認められると「自立支援医療受給者証」が交付されます。自己負担がある人には「自己負担上限額管理票」も一緒に支給されます。

申請が終わって自立支援医療受給者証が交付されたら、受診する医療機関に受給者証と自己負担上限額管理票を提示することによって、医療費が軽減されます。

自己負担上限額管理票」を提示すると、受診の際にかかった額と病院名などが記録されていきます。そして、上限額に達した場合、もうそれ以上の医療費を支払う必要はなくなるのです。

なお、受給者証が届くまでにかかった医療費は遡って返金してもらうことができるので、医療にかかった領収証などはとっておくことをお勧めします

受給者証は1年間の更新制です。

更新する時に必要な書類などは申請時とあまり変わりませんが、2年に1度は医師の診断書が必要となるので更新期限に合わせて主治医に診断書を書いてもらいましょう。

(新型コロナウイルス感染症の関係により、場合によっては有効期限が延長されます。県などのホームページをご覧ください)

■自立支援医療って?~更生医療編~

更生医療の概要としては、厚生労働省

‶身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できるものに対して提供される、更生のために必要な自立支援費の給付を行うもの

としています。

また、対象者は18歳以上で身体障害者手帳所持者とされています。

具体的な障害としては

1.視覚障害
2.聴覚・平衡機能障害
3.音声障害・言語障害・咀嚼障害
4.肢体不自由
5.内部障害(心臓・腎臓・小腸又は肝機能障害)
6.ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害

が挙げられます。

こういった障害に対して「確実な治療の効果が期待できるもの」に限られてくるのです。

例えば視覚障害の場合、角膜移植術・網膜剥離に対する手術であったり、腎臓機能の障害の場合、慢性透析療法・腎臓移植術・移植後の抗免疫療法などがあてはまります。

すべて書き出すと長くなってしまいますので一例だけにとどめますが、「手術を行うことによってしっかりと治療の効果が見られるもの」にしか適応されないのが更生医療です。

こちらも精神通院医療と同じで、申請が通れば自己負担額は1割となります。そして、ひと月当たりの負担額は世帯の所得水準に応じて上限額が決められるのです。

更生医療の「重度かつ継続」の要件は以下のようなものです。

1.疾病、症状から対象となる者

・腎臓機能障害、小腸機能障害、免疫機能障害、心臓機能障害(心臓移植後の抗免疫療法に限る)
・肝臓機能障害(肝臓移植後の抗免疫療法に限る)の者

2.疾病等に関わらず、高額な費用負担が継続することから対象となる者

・医療保険の多数該当者(申請前の12ヶ月間において、申請者の所属する世帯が3回以上、医療機関の高額療養費の支給を受けた月がある)

これらを満たすと「重度かつ継続」の対象となります。

★更生医療の申請方法★

〈持ち物〉
・更生医療支給認定申請書
・医師の意見書
・身体障害者手帳
・世帯の収入状況が分かる書類
・健康保険証
・特定疾病療養受領証(腎臓機能障害による人工透析療法の場合)
・「重度かつ継続」に該当する場合、高額療養費の支給を証明する書類
・マイナンバー
・費用明細書


などです(地域によって必要な書類は異なってきます)

これらを市区町村役場の障害福祉課(地域によって呼び名は異なります)に提出することによって、申請は完了します。

原則は1割負担となりますが、世帯の所得に応じて上限額が設けられることもあります。

医療を受ける時に、支給された「自己負担額上限管理票」を窓口に提示し、自己負担額の記入を受けてください。

上限額に達してから医療を受けた場合は、その上限額以上を負担する必要はありません。

また、障害の程度などによって本人が窓口に申請に行けない場合は代理人が申請することもできます。

代理人が申請に行く際の持ち物としては

・代理権を確認できる書類(委任状など)
・代理人の身元確認書類マイナンバーカードや運転免許証などの顔写真つき書類1点、
もしくは代理人の健康保険証、年金証書などの顔写真なし書類2点)
・申請者及び申請者と同一保険に加入している世帯員のマイナンバー(マイナンバーカード
など)

などが必要です(地域によって異なる場合があります)

また、必要な書類を揃えれば郵送でも受け付けてくれるところもあります。

受給者証の有効期限については2022年現在、新型コロナウイルスの問題により一部有効期限の延長がありますので、県や市町村のホームページなどでご確認ください。

■自立支援医療って?~育成医療編~

育成医療の概要としては、厚生労働省

児童福祉法第4条第2項に規定する障害児(障害に係る医療を行わないときは将来障害を残すと認められる疾患がある児童を含む)で、その身体障害を除去、軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる者に対して提供される、生活の能力を得るために必要な自立支援医療費の支給を行うもの

と定めています。

更生医療と違うのは年齢が18歳未満で、身体に障害があることが条件となることです。

対象となる障害や病気を挙げますと

1.肢体不自由
2.視覚障害
3.聴覚、平衡機能障害
4.音声、言語、咀嚼機能障害
5.心臓機能障害
6.腎臓機能障害
7.小腸機能障害
8.肝臓機能障害
9.その他の先天性内臓障害
10.免疫機能障害

などがあります。

こういった障害・病気のうち、例えば視覚障害であれば白内障・先天性緑内障手術、腎臓機能障害ならば人工透析療法・腎臓移植術(抗免疫療法を含む)などが対象となるのです。

育成医療で言う「重度かつ継続」とは以下のようなものです。

1.腎臓機能障害(慢性腎不全・腎移植を要するもの)、小腸機能障害、心臓機能障害(心臓移植後の抗免疫療法によるものに限る)、免疫機能障害の病気に罹患している児童

2.疾病に関わらず、高額な医療費負担が継続する世帯
  (申請前の1年以内に医療保険の高額療養費を3回以上受けた世帯)に属する児童

これらを満たすと「重度かつ継続」の対象となります。こういった制度の申請は、原則治療を受ける前にすることとされていますので注意してください。

しかし、緊急手術などで事前申請ができないときには、事後申請も特例として受けいれてもらえる場合もあります。

また、現在(2022年)は新型コロナウイルスによる影響で育成医療意見書が取得できない場合も事後申請が受け付けてもらえる場合もあります

しかし、こういった対応は市区町村によって異なってくる場合もあるので、詳しくはお住まいの市区町村役場などに問い合わせてみてください。

★育成医療の申請方法★
必要な書類は以下の通りです(お住まいの地域によって異なる場合もあります)

<持ち物>
・自立支援医療(育成医療)支給認定申請書
・自立支援医療(育成医療)意見書
・印鑑
・マイナンバー
・世帯調書
・住民税(非)課税証明書等
・(代理の場合)申請に行く人の身分証明書


などが挙げられますが、お住まいの地域によって異なる場合があります。

こういった書類を、医療を受ける前に市区町村役場に提出し申請が通れば、自立支援医療(育成医療)の支給を受けることができるようになります。

そして、医療費が原則1割となり、所得に応じて月々の上限額が設けられます。

育成医療について詳しく知りたい、という方は病院のワーカーさんや主治医に尋ねるか、市区町村役場などに相談してみてください。

■自立支援医療(精神通院医療)のメリット・デメリット

★自立支援医療(精神通院医療)のメリット★

自立支援医療は、心身に障害がある人への「医療費の自己負担額」を軽減するための制度です。

メンタルやからだの障害のケアには長い期間かかりますし、もちろんその治療には莫大なお金がかかります。

そういった障害を負った人を経済的に助け、治療に専念できるように配慮したのが「自立支援制度」なのです。

筆者も統合失調症を患っているため、自立支援医療制度を利用しており「重度かつ継続」の対象となっています。

筆者が統合失調症になったのは10代の時で、今も治療を受け続けています。今は30代なので、15年以上の治療歴があります。

早いうちにワーカーさんから自立支援医療制度について説明を受け、申請したことから経済的にもだいぶ助かりました。

もし今自立支援医療制度のことを知らなかったら、今までにとてつもない医療費がかかっていただろうな、と思います。

今、病院でかかる負担としては、精神科訪問看護の交通費、診断書代、何らかの検査を受けた時にかかる費用、医師の意見書にかかる費用くらいです。

診療費やカウンセリングの費用、精神科訪問看護にかかる費用は「重度かつ継続」により免除されています(保険適用外のカウンセリングは費用が掛かります)

精神障害は一度かかると治癒するまでには長い期間が必要なことが多いです。闘病生活の間もお金のことが不安になってくると思います。

ですから、自立支援医療制度は心身に障害のある方にぜひ利用して頂きたい制度です。

筆者は精神障害者ですので更生医療や育成医療については詳しくはありませんが、身体に障害がある方でも治療にはたくさんの時間やお金が必要となってくると思います。

このコラムには最低限のことしか書けませんでしたが、そういった「治療にかかる費用を助ける制度がある」ということだけでも知って頂きたいです。

市区町村役場の障害者窓口に行けば、詳しい説明が受けられると思いますし、病院のワーカーさんや主治医などにも説明してもらえるでしょう。

そのため、自立支援について気になる方は是非一度相談してみてください。経済的な負担が減れば、治療にも専念しやすくなることと思います。

★自立支援医療(精神通院医療)のデメリット★

自立支援医療のデメリットとしては、まずこの制度についての知識がないと利用することができないということです。

良い主治医やワーカーさんなら治療を始めてすぐ教えてくれる場合もあると思いますが、自分から説明を求めなければ解説してくれない医師やワーカーさんもいます。

筆者は割と早い段階でワーカーさんに「こういう制度がありますよ」と教えて頂けたので幸運でしたが、ワーカーさんから説明を受けるまではそんな制度があるということは全く知りませんでした。

そのため、もし治療費のことが気になるなら早い段階で主治医やワーカーさんに相談してみるのがいいと思います。

自立支援医療は申請日から適用されるため、さかのぼって医療費を請求することはできません。

ですから、自分が何らかの疾患にかかったときは、自分の疾患や障害についてだけでなく医療費の制度のことも含めて説明を受けることをお勧めします

2つ目のデメリットとしては「申請するための書類が多い」ということです。

精神通院医療に必要な書類は前述しましたが、例えばうつ病になって何もやる気が出ない、というときに市区町村役場や病院を何度も訪れて書類を揃え、それに記入していくとなると、それだけで苦しい作業になってしまいます。

もし頼めるのならば家族に頼むのも一つの手ですが、一人暮らしだったり親が高齢で難しい等の場合は全部自分でやらなければなりませんよね。

そういった時の精神的な負担も自分の病気を悪化させる原因になりかねません。だからこそ、早いうちに制度のことを知り、対策を立てておかなくてはなりません。

3つ目のデメリットとしては、自立支援医療は毎年更新申請が必要ということです。

1年ごとの更新制ですので、更新日が近づいたら必要な書類を揃え、更新に備えなければなりません。

また、精神通院医療では2年に1回は医師の診断書が必要となってきます。これを忘れたり更新自体を忘れてしまうと、再申請の手続きが必要になります。

再申請をする場合は医師の診断書が必ず必要です。しっかり更新を行っていれば2年に1回提出すればよいのですが、更新を忘れてしまうと毎年診断書が必要となってしまいます。

診断書代も決して安くはないので、更新は忘れないようにしたいですね。また、病状や治療方針が変わった場合も診断書が必要となるので、ご注意を。

自立支援医療(精神通院医療)の更新手続きは期間終了の3ヶ月前から行うことができるので、早めに行動したいものです。

■自立支援医療についてまとめ

以上、精神通院医療・更生医療・育成医療についてまとめましたが、いかがでしたでしょうか?

重度かつ継続」などややこしい部分もあると思いますが、自立支援医療受給者証を取得することで医療費の減免が受けられるので、治療に取り組んでいくにはぜひ活用して頂きたい制度です。

闘病を続けていく上で経済的な面が気になっていては、治療に専念できませんからね。

自立支援について気になることあれば、市区町村役場や病院のワーカーさんに尋ねれば詳しく教えて頂けますので、気軽に相談してみてください。

自立支援医療を活用することによって、少しでも治療に対して不安が減ることを願います。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。