「いじめ」というと、「無視をする」「暴力をふるう」といったものから、「SNS上に悪口をアップする」などといったものまで、多様な種類のいじめが存在します。今回はそんな「現代のいじめ」についてや、対応策はなどについて触れていきたいと思います。
■いじめとは?~多様化するいじめ、どうする?~
平成25年に「いじめ防止対策推進法」が施工され、以前とはいじめの定義が変わりました。
文部科学省では、
〝「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう〟
と定義しました。簡単に言いますと以下の通りとなります。
① 加害者側・被害者側に一定の人間関係にあって
② 被害者側が苦痛を感じているもの
この「いじめ」の定義の中には、学校裏サイト等のインターネット上のいじめも含まれています。その他の代表的ないじめとしては、
・暴力を加える
・集団で無視をする
・悪口、陰口を本人に聞こえるように言う
・物を隠す
・当事者の所持品を奪う・壊す
など多様なものがあります。いじめられていることを教師や親に相談できればまだ対策を立てることはできます。
しかし、SOSのサインを出せない児童はとても辛い状況に陥ってしまいます。最近では、いじめを理由とした自殺も増加しているという報道も多く、早期の対応が求められます。
次の章では、当時いじめられっ子だった私の体験を綴りたいと思います。
■いじめられっ子だった私~地獄の中学校生活~
中学時代、私はいじめられっ子でした。性格がおとなしく、いじりやすかったのもあると思いますが、容姿のことをからかわれたり、またクラスの生徒ほとんどから無視をされ、孤独な思いをしました。
しかし、「心配はかけたくない」という思いから、両親にはいじめを受けていることを内緒にしていました。
しかし、学校に行けば無視をされる、悪口を言われる、笑いものにされるなど嫌な思いをすることばかりでした。
ある時、思い切って担任の先生に相談しました。しかし、そのことがいじめっ子にばれて、いじめはより一層ひどいものとなり、また先生は見て見ぬふりで、地獄でした。
そんなことが続き、とうとう学校に行けなくなりました。「行かなきゃ」とは思うのですが、気持ち悪くなったり、頭が痛くなったり、からだに症状が出てきてしまったのです。
親にはいじめのことを内緒にしていたので、「大したことじゃないのに学校を休むんじゃない!」と怒られましたが、いじめっ子の顔が浮かぶと、どうしても行くことができませんでした。
しかし、休み始めてから何日か経った後、担任の先生から直接親に連絡があり、ついに親にいじめられていることがわかってしまいました。
その後、クラス替えがあり、親と教師との協議の上、いじめっ子とは別のクラスにしてもらいました。
その結果、「いじめが消える」ということはありませんでしたが、一番ひどかった時よりはましな状態になりました。
しかし、クラス替えがあってからしばらくしていざ登校してみるも、教室に入ろうとすると、足が動かないのです。「怖い、また笑われる、みんなが無視する」という恐怖感からです。
そのため、別室登校を選択し、当時通っていた中学校に設置されていた相談室に通うようになりました。
相談室には当時はまだ珍しかったスクールソーシャルワーカーも配置されており、私は中学校の3年間をその教室で過ごしました。
30代になった今でも、時にいじめられていたことをふと思い出し、不快な気持ちになることがあります。10代のころ受けたいじめの記憶が30代になってまで残っているのですから、いじめによって受けるこころの傷はとてつもなく大きなものなのだな、と感じます。
■どう対応したらいいの?~当事者・保護者の対応は?~
まず、いじめられている本人は、勇気をもって周囲へSOSサインを出しましょう。とにかく「自分はこんなに辛い思いをしているんだ」ということを周囲に知ってもらうことが必要です。
自分一人で抱え込むことは、自分を追い詰めてしまうことになります。そうすると最悪な事態を招くことになりかねません。
とにかく、周囲に自分が苦しんでいることを知ってもらい、対策を一緒に考えていくことも大切です。
保護者の方は、もし自分の子どもがいじめられていると訴えてきたときには、子どもの保護を優先させてください。
子どもが勇気を振り絞って訴えてきたSOSサインを、見過ごさないでください。休ませる必要があると思われればしばらく学校を休ませ、こころの安定を図ることが大切です。
しばらく休んでみて、子どもが「学校に行ってみようかな」と言い出したら、まずは別室登校や短時間登校もおすすめです。
無理をすると、また不登校の状態に戻ってしまうこともありますし、大人の都合にあわせようとしすぎたりすると、大人に対する不信感にもつながりますので要注意です。
保護者が学校側に求める対応としては、被害者側の話、加害者側双方の言い分をしっかり聴いてもらうことです。
被害者側の話を聴くのだけではなく、加害者側の話も聴くことによって、加害者がどうしてそういう行動に至ったのかはっきりしますし、原因がわかれば和解できる可能性も高くなります。
子どもに関わっている皆さん、今いじめにあっている児童・子どもの小さなSOSに気づいてあげてください。あなたの「大丈夫?」の一言で、彼らが救われるかもしれません。
■いじめ体験を通じて~大人の気づきの大切さ~
いかがでしょうか?私の体験談なども織り交ぜながら書かせていただきました。いじめは、本当に残酷なものです。その体験はトラウマとなり被害者のこころに生き続けます。
そんな辛い思いに耐えられなくなって、いのちを絶つ子どももいます。そのような事態にならないためにも、大人は常に子どもを見守り、ちょっと様子がおかしいな、と思ったら「大丈夫?」の一言をかけてあげてください。
また一人ひとりの子どもをかけがえのない存在として尊重し、どれだけあなたが子どものことを大切に思っているかを教えてあげてください。
いじめの根絶と、いのちを絶つ子どもが一人でも減ることを心から願います。
著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。