私の子どもは発達障害!?~子どもが自分らしく成長するための関わり方~

発達障害
Gerd AltmannによるPixabayからの画像

今回は、もしあなたの子どもが「発達障害」だったらどうする?という事がテーマです。想像してみてください。あなたの子どもが発達障害と診断されたら、その事実を受け入れられますか?症状や特徴等を紹介しながら、周囲の対応法やサポート体制についてまとめました。

■発達障害って何?~障害の特徴や考え方~

まず、発達障害と呼ばれているADHD等の障害の特徴について、いくつか書かせていただきました。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)の特徴は、

年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、およびまたは衝動性、多動性を特徴とする行
 動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもの

とされています。

例えば、注意力が散漫だったり、多動性の強さの為、じっと座っていることが難しい事もあります。

また、教室の中をウロウロ歩き回ってしまったり、あれこれと他ごとに手を出してしまい、何をやるにも中途半端になってしまう事が多い傾向にあります。

次にLD(学習障害)の特徴は、

基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く・話す・書く・計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す

とされています。

知的の遅れはない場合が多いのですが、ある特定の分野だけが苦手で、そこを周りの大人や仲間が補ってあげないと、学校生活を送るのが難しい場合もあります。

最後にASD(自閉症スペクトラム障害)についてです。

このASDというのは、アスペルガー症候群や自閉症、広汎性発達障害と呼ばれていた発達障害の呼び名を一纏め(ひとまとめ)にしたものです。2013年以降、呼び方や診断名もASDと統一されています。

ASDの特徴は、

1.臨機応変な対人関係を築くことが出来ない
2.コミュニケーション能力に障害がある
3.こだわりがあり、興味・関心ごとの幅が狭い

とされています。

こちらも知的な遅れはないものの、コミュケーション障害やこだわり、周りの空気を読めずに孤立してしまうなどの特性の為、社会生活にうまく適応できない場合もあります。

これまでに挙げたようないくつかの発達障害は、知的障害を伴わない事が多いのはもちろん、成績優秀な子もいます。

また見た目も健常児と変わらない為、学校等では「多少遅れはあるかもしれないが、勉強にはついていける普通の子」というイメージを持たれてしまう時もあります。しかし、障害の特性によって様々な生きづらさがあるのも事実です。

■なぜ気づかれない?~発達障害=個性?~

発達障害の中でも、ADHD・アスペルガー症候群・LD等は知的障害を伴う事が少なく、小学校くらいなら他の子と同じくらいには勉強にはついていけます。しかし、コミュニケーション障害や、周りの空気が読めないといった特性から、いじめに遭う事もあります

それなのになぜ気づかれないのかというと、小さいうちは問題行動があっても、周囲の環境や周りの大人等にカバーされていたことが原因であった、という事が多いです。学習面でも特に問題は見られないので、周りの子と接するのが苦手だったりしても、「大人しい子」という印象だけで、障害だと気づかれない可能性は高いです。

しかし、社会に出るとそうはいきません。仕事をすれば人と接する機会も増えますし、色々な仕事を任される事もあり、臨機応変に対応することが必要です。

そして、社会人になってから独特の「生きづらさ」を感じるようになり、専門家のもとを訪れてみたら〝発達障害〟と診断された、というケースもあります。

確かに、独特の行動等が見られても、それがその子の個性だと理解してしまえば、それで終わってしまいます。しかし、それを「個性」で終わらせるのではなく、周りの大人はその子の背後の問題にも目を向ける事が必要です。その為にも、発達障害についての知識を多少は持っておくべきです。

さらに、場合によっては二次障害と言われる発達障害に付随した障害が起きる事があります。二次障害を発症してからでは、問題への対応の難しさに対しても影響が出てくると思います。それを防ぐ為にも、発達障害の早期発見・早期治療が必要なのです。

■起こり得る二次障害とは?~表れる様々な症状~

もし、発達障害を早期に気づけなかった場合、ストレス等によってうつ病や不安障害等の〝二次障害〟が起こる可能性があります。それは身体症状や精神症状など、症状は様々です。

身体症状だと

・チック(自分の意志に関係なく、筋肉が反射的に動いたり声が出たりする症状)
・抜毛癖、(自分の毛を抜く、ぬいぐるみの毛を抜く、動物の毛を抜く)
・爪かみ
・貧乏ゆすり

等があります。

精神症状だと

・無気力
・自己評価の低下
・うつ状態

等が見られると言われています。

発達障害がある人は思っていることを言葉にして相手に伝えるのが苦手な傾向にあり、悩みやストレスがあってもうまく他の人に相談することが出来ず、その結果ストレスが溜まってしまい、上の様な症状が起きてしまう事もあるのです。

例えば、学校で

「友人関係で悩んでいる」
「クラスに馴染(なじ)めず、寂しい」
「先生に注意されてばかりで辛い(発達障害の特性の為)」

等という事を感じていても、その苦しみや辛さを自分の口から周囲に伝えることがなかなか難しいのです。その為、親や教師等周りの大人の〝気づき〟が大切です。子どもの元気がなかったり、学校に行くことを渋る様であれば、「学校で何かあった?」「何か困っていることはない?」等、一声かけてあげるだけでも、悩みを話すきっかけになると思います。子どもが悩みを抱えたままだと、酷い場合には小児うつやうつ状態、また思春期頃になると、非行や不登校につながる場合もあります。

学校に行くのを渋るようになると、それは不登校の始まりかもしれません。1日休んだのが3日、1週間という風にズルズルと長引き、不登校になってしまうという場合もあります。更には不登校が長引くと、ひきこもりに移行してしまう場合もあるので要注意です。

その子が問題行動を起こしたりした場合に叱りすぎたり、注意しすぎたりするのもその子の問題行動が酷くなる原因の一つです。あまりに子どもを責めすぎると、子どもはイライラやストレスが溜まっていき、そのはけ口として次第に反抗的な態度や、挑戦的な態度をとる様になってきます。こうした態度から家庭内暴力や非行等に繋がる場合もあります。

こういった行動(暴力行為)は、「反抗挑戦性障害」と呼ばれる一種の障害である可能性もあります。この障害はADHDと深い関わりがあるとされており、特徴としては、最初は目上の者や親に当たり散らしていたのが、クラスメイト等にも暴力的な態度をとる様になり、日常生活や学校生活に様々な支障が生じるようになる、というものです。

そのような行動に陥ってしまう前に、子どもをあまりにも叱責しすぎないようにし、なおかつ見守りと、声掛けが大切です。普段から子どもが何について悩んでいそうか、イライラしていないかなどを見て、一言、二言でも声掛けをすることが大切です。返事は返ってこなくても、「いつもあなたを見守っているよ」というメッセージを発信することが大切です

■どう対応する?子どもの問題~ありのままを受け入れて~

ADHDやアスペルガー症候群等は「軽度発達障害(知的に遅れはなく、IQ70以上である事)と呼ばれることもあるので、「軽度」という言葉から「障害の程度が軽い」と考え、〝厳しくしつければ普通の子どもに戻れるかもしれない〟と勘違いしてしまい、注意や叱責を繰り返してしまう場合もあります。

すると、子どもの自己肯定感は低下し、新たな事に挑戦する意欲も失ってしまうのです。そんなことにならない為にも、まずは「ありのままの自分の子どもを受け入れる」事が大切です。他の子と比べて「あれができない、これができない」と怒ってばかりいても、子どもはどんどん劣等感を抱いてしまいます。発達障害は、叱責や注意で治るものではありません。むしろ、そういった態度を親がとってしまうと、先ほど述べた「二次障害」が発症する恐れもあります。

「整理整頓が苦手でも仕方がない」
「忘れ物が多くても、なるべくきつく叱らないようにしよう」
「ちょっとくらい勉強ができていなくても、他の面でカバーできればいい」

とその子の特性を受け入れる事が大切です。発達障害は親のしつけのせいでも子どもの努力不足のせいでもありません。誰が悪い訳でもないのです。「この子なりのペースがあるんだ」と成長をゆっくり見守ってあげてください。

大人にだって苦手な事やできない事はありますよね。それは子どもでも同じです。障害の特性によって出来ない事を責めても、急に出来るようにはなりません。ゆっくり、その子のペースで身についていくものだと思うことが出来れば、親もその子を応援する気持ちが生まれると思います。

しかし、無理強いは禁物です。苦手な事を押し付けるよりも、出来たことを褒めてあげたり、自己肯定感が上がるような声かけをし、次のステップへ挑戦する力を身に付けられるように一歩ずつ進んでいきましょう。

発達障害を持った子は学校等では叱責、注意をよくされる事から、いつも自信がなく自己評価も低くなりがちです。その為、一番身近な大人である親がたっぷり愛情を注いであげることによって、その子は安心感を感じられます

すると、落ち込み気味だった自己肯定感も回復していきます。親や家庭が、子どもの「安全基地」になってあげる事が大切です。「ありのままのその子」を受け入れてあげてください

■学校ではどう対応する?~子どもが学校生活を楽しむために~

そして、学校においては担任の先生や養護教諭に特性を理解してもらえるよう協力をお願いするのも大切です。

「この子には○○という特性があるので、見守ってやってください」
「もしパニックを起こしたら、静かな場所に連れて行ってください」
「この薬は欠かせないので、必ず飲ませてください」

等伝える事で、子どもの学校生活が過ごしやすいものになり、親も安心できると思います。

しかし、その子ばかりに目をかけていると、その子だけが特別扱いをされていると不満に思う他の生徒も出てくるでしょう。その為、親と教師が話し合いの場を持ち、障害をクラスメイトにオープンにするのか、またオープンにするならどの程度まで話すのか、といった事を決めておく事も大切です。

もしクラス全員に障害について話して、色々手伝ってくれる子がいればいいですが、いじめやからかいの原因になってしまったら元も子もありません。


その点については親と教師、また発達障害がある子本人もできれば参加して慎重に話し合いを進め、決めていくべきです。その子にとって学校生活が苦痛にならない様に見守りの体制を作っていけば、不登校や引きこもりを防ぐこともできると思います

また、発達障害は心配な面ばかり強調されますが、中には、記憶力がずば抜けてよかったり、こだわっていることに関しては膨大な知識を持っていたりもします。そういった‶その子の良い所を伸ばす教育〟を行っていく事で、その子の自尊心や自己肯定感は上がると言えます。

できない事を無理やりやらせるより、その子の長所を伸ばしていき、可能性を広げていくような教育を行うことが大切です。

その子がちょっとずつでも成長できるよう、温かい目で見守ってあげてください。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。