最近いじめなどを理由とする「不登校児」が増えています。不登校とは、登校しない状況、あるいは登校したくてもできない状況を言います。 いざ学校に行くとなったとき、おなかが痛い、気持ち悪いなど体の不調を訴えだし、結局休んでしまう子などのことです。そんな不登校児を、周囲の人達はどのように支援していくのがよいのでしょうか。
■不登校だった私の事例
かくいう私も、小学校6年生から不登校で、中学3年間は相談室登校をしていました。
私の場合、不登校の原因は「いじめ」でした。外見のことをからかわれたり、悪口を言われたりして、学校は地獄そのものでした。
しかし昭和世代の母親にとっては、学校は「行って当然」のものです。毎日のように学校に行くように怒られましたが、学校に行こうと思うとどうしても体調が悪くなりました。
「学校に行ったら嫌なことを言われる」「どうして周りはわかってくれないんだろう」そんな思いでいっぱいでした。
そんなとき、不登校状態から私を救ってくれたのが「相談室登校」という手段でした。相談室には、今でいう「スクールソーシャルワーカー」が配置されていました。
相談室では、スクールソーシャルワーカーが日常の悩みを聞いてくれたり、時には相談室に通う仲間と卓球やバドミントンをして過ごすなど、楽しいこともたくさんありました。
勉強面では各教科の担任が個別に指導してくださり、宿題を出してもらいそれを相談室でこなす、というスタイルをとっていました。
相談室で学んだことは、「自分を理解してくれる人は絶対いる」「同じ悩みを持つ仲間はいる。一人じゃない」ということでした。
それでは、不登校の現状を見るとともに、どうやって支援していけば私のような不登校児は回復していくのか、ということを述べたいと思います。
■どうして不登校は起こるのか
一般的に不登校とはどのような状態のことを言うのでしょうか。文部科学省では、
「連続又は断続して年間30日以上欠席し、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況である(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)」
と定義しています。
小学校・中学校・高校の中で一番不登校の発生が顕著なのが中学校です。平成27年度の文部科学省の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」の統計によると、中学校では約40人に1人が不登校という状況となっています。 特に中学3年間の中で2年生で一番不登校が起こりやすいとされています。
中学2年生というと、思春期を迎える頃です。思春期になると、自分の意見や生き方がはっきりし始め、大人に逆らいたくなったり、素直に従えなくなることもあります。
不登校になる子は、まじめな子が多いです。そんな「大人(先生など)に逆らいたい」などという意思を持ってしまったことの罪悪感と「自分は正しいのだ」という心の葛藤などから、心は弱り、疲弊してしまいます。
また、最近問題になっている「いじめ」も不登校の原因の一つです。最近の小中高生はスマートフォンを持っている子も多く、いわゆる学校裏サイトやSNS上での陰湿ないじめを受けている可能性もあります。
そのような様々な要因が入り混じった中で、子供はだんだん「学校」という場所に自分の居場所を見つけられなくなります。そして最終的には、学校へ行けなくなってしまうのです。
では、こういった不登校になってしまった子にはどういう対応が望まれるのでしょうか。
■不登校児への対応~本人主体の支援~
「不登校になる」ということは、「心が休む必要を感じている」ということです。この時に無理に学校に行かせようとすると、かえってこじらせ、ひきこもりに発展してしまうこともあります。
子供が「学校に行きたくない」と言い出した時には、その背景に目を配り、無理に登校させないことが求められます。
不登校になった時の対応としては、まずは「十分な休養をとらせてあげること」です。友人関係だったり、先生との関係、また思春期に起こる様々な症状から、本人は心身ともに疲れ切っています。
そんな時は、無理に学校に行かせようとするよりも、体や心の休養を取らせてあげることが必要です。
学校にいけない子供たちは、そんな自分を責めてしまう傾向にあります。「なぜみんなのように学校にいけないのだろう」「こんな弱い自分は嫌だ」などと、心の中で悶々と悩んでいる場合もあります。
親の側としても、「近所の目が気になる」「恥ずかしいからきちんと学校に行ってほしい」という思いもあると思います。しかし、それを押し付けてしまえば元も子もありません。
親から見て子供の調子がよさそうだな、というときに「これからのことをどう考えているのか」「どのようなことから始めていきたいのか」といったことを話し合うのも一つの手です。
この時に、子供を責める言葉や、叱責するようなことはあってはなりません。あくまでも、「本人の考えを聴く」という態度で接することが大切です。
そしてある程度子供のこころが回復してきたら「別室登校」からでも登校の練習を始めてもいいと思います。
今では学校によって「相談室」など通常教室に入れない子のための別室を設けているところもあり、保健室や相談室などに通うことから登校の練習が始められます。
もちろん、学校の担任や養護教諭、スクールソーシャルワーカーなどとの連携も大切です。「学校にいけない」状態からスタートするのですから、最初は本人もかなりの疲労を感じるでしょう。そういったときに、サポート体制が万全でないと逆戻りしてしまいます。
親や学校が連携したうえで、子供のペースやこころの状態を第一に考えつつ、ゆっくり確実に段階を踏んでいくのが大事です。
まずは短時間登校からスタートし、最終的には通常教室でみんなと一緒に授業を受けられるようになる、そのゴールを目指して一歩ずつ前進できることを願います。
■不登校児の対応まとめ
いかがでしたでしょうか?「不登校」は決して「怠け」ではありません。子供本人も悩んでいるのです。無理に学校に行かせるよりも、本人の「今のありのままの状態」を受け入れてあげることが重要です。
そのうえで、学校や関連施設などと連携を取りながら、本人のペースに合わせて対応していくことが大切です。登校を無理強いすることは、かえって遠回りになります。
親の価値観や世間体などを気にして焦ると本人にとってはデメリットしかありません。あくまでも、「本人のペースを大切に」力を合わせて前進していきましょう。
こちらのコラムでは不登校から生じる二次障害などについてまとめております♪⇩
著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。