統合失調症患者の社会参加~発症から回復まで~

統合失調症
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皆さんは、「統合失調症」という病気にどのようなイメージをお持ちですか?「何をするかわからないから怖い」「かかったら治らないのではないか」など、否定的なイメージも多いかもしれません。しかし、実際は早期に治療をすることによって、皆さんと同じように生活を送ることもできるのです。今回は統合失調症の4つのステージと社会参加までの過程について触れていきたいと思います。

■統合失調症の経過~4つのステージ~

統合失調症には、発症から回復までに以下のような4つのステージがあります。

1.前兆期
2.急性期
3.休息期
4.回復期

の4つに分けられます。

1の前兆期では、寝つきが悪い、寝ている途中に目が覚める(中途覚醒)が増える、また光や音に敏感になるなど健常者でも体験しうる症状が中心となりますので、本人や周囲もあまり「統合失調症の前兆である」とは気づきにくいと思います。

2の急性期では、「陽性症状」というものが目立つようになります。陽性症状では、幻覚や妄想が主症状として見られます。幻覚の中で最も多くみられるのが幻聴です。頭の中が幻聴に支配されたり、また自分の世界に入ってしまい独り言をつぶやいている場合などもあります。

幻聴がひどい時期には、「○○しろと言われている」「あの車は私の後をつけてきている」など健常者には理解しがたい内容のものも多くみられます。

そういった幻聴や幻覚に頭の中が支配され、それに従って行動してしまうこともあるため生活のリズムが乱れ、昼夜逆転の生活になってしまうという人も少なくありません。

3の休息期の時期には、2でみられる陽性症状とは反対の「陰性症状」といわれるものが顕著になってきます。例えば意欲が持てなくなったりやる気がなくなる過眠気味になる体がだるいなどです。

この時期は精神的にとても不安定なため、ちょっとした刺激で急性期に逆戻りしてしまうことがあります

この時期には、就寝時間・起床時間を決めるなど規則正しい生活リズムを心がけ焦らずゆっくり休息することが必要です。

4の回復期の時期は、徐々に症状が治まり周囲への関心が戻ってくる時期と言えます。少しずつ3の状態から抜け出しはじめ、気力もだんだん戻ってきます。

以前好きだったテレビを観たり、読書や音楽鑑賞をしたりもできるようになります。ただこの時期に無理をしてしまうとまた症状の悪化につながりかねませんので「少しずつ」できることを増やしていくことが大切です。

■当事者自身ができる回復への対策法

統合失調症では、当事者が自身でできる対処法も多くあります。例えば、

病識をしっかり持つ
規則正しい生活をする
処方された薬はしっかり医師の指示通りに服薬する
通院を勝手に中断しない

などです。

まずは、「病識をしっかり持つ」ことが大切です。「病識を持つ=自分が統合失調症であることを理解し受け入れる」ということです。

自分が病気であることを受け入れるのは大変苦痛なことかもしれませんが、そこが治療の第一歩なのです。

自分が自分をしっかり理解し、何に困っているかなどを周りに伝えることによって、周囲の適切なサポートにつながります。

そして規則正しい生活を送るのも症状の改善には必須の要素です。決まった時間に起き、就寝し、食事はバランスのとれたものを3食しっかりとります。

もし時間があれば軽く散歩をしてみたりスポーツで体を動かすと、さらに気分もいいものになると思います。

健常者の方にも言えますが、規則正しい生活を送ることはとても大切なことです。決まった時間に起き、バランスの良い食事をとり、決まった時間に就寝することを心がけるだけでも体調は次第に整ってきます。

統合失調症の主な治療方法は、一般的には薬物療法を中心に行うとされています。医師は、その患者の状態や家族の話を聴いて、症状に合った薬を処方してくれます。

特に急性期には薬物療法が有効とされており、症状回復の為にはなるべく早く抗精神病薬の治療を確実に行うことが大切です。それだけ症状が回復する可能性も大きいといえます。

統合失調症は、適切な薬物療法がとても重要です。その為、勝手に断薬をしてしまったり通院をやめてしまう、などということは決してしないでください

自己判断ほど危険なものはありません。必ず医師の指示に従いながら、治療を進めていきましょう。

■社会参加のために~社会資源を活用しよう~

統合失調症の症状が回復してきたら、社会参加のための準備をします。「社会参加」といっても、難しく考えることはありません。

統合失調症の患者は幻聴や思考の障害から常に「生きづらさ」を感じています。前章で述べたような「散歩」なども、外の世界に触れる立派な社会参加なのです。

まずは体力作りから、そして慣れてきたら買い物に行ってみる、友人とお茶をしてみる、そんな他愛ないことでも、社会参加と言えるのではないかと思います。自分の「できること」を大切にし徐々にできることを増やしていくことが大切です。

できることが増えていけば、病院などに併設されている精神科デイケアなどを利用してみるのも社会参加へのステップアップにつながります。

精神科デイケアとは、こころの病をもった患者さんがグループ活動などに参加しながら社会参加への足慣らしができる「居場所」でもあります。

病院以外に「出かけていける場所」があるというのは、当事者にとってはとても大きなことで、家族以外の人と話をする良いきっかけにもなります。

精神科デイケアではスポーツ料理生活技能訓練(SST)など場所によって様々なプログラムが用意されており、自分に合ったプログラムに参加することができます。

そこで仲間とともにプログラムを楽しんだり、悩みを共有する経験から、統合失調症患者の多くの方が苦手とする〝対人関係″を学んでいくこともできます。

その中でも生活技能訓練(SST)について触れてみたいと思います。SSTは、精神科デイケアで行われるプログラムとしても中心的なものです。

SSTとは、具体的な日常生活での場面を想定して、その時々の話し方や振る舞い方をSSTに参加しているメンバーで評価し合い、技能を高めていくというようなものです。

また、コミュニケーション以外にも、料理や掃除など毎日の基本的なことについても練習する場合もあります。料理をする、買い物をする、掃除・洗濯をする、といった普段日常生活でしていることすべてが練習の対象となります。

プログラムで身につけたことを日常生活で活用することによって、統合失調症の患者特有の「生きづらさ」を徐々に減らしていくことが目標です。

しかし、無理は禁物です。無理をしてしまうと、また症状がぶり返してしまう場合もあります。あくまでも自分のペースを大切に、社会参加に向けて歩んでいきましょう

■統合失調症患者の歩みまとめ

いかがでしたでしょうか?統合失調症の症状から、順を追って社会参加への道のりを綴らせていただきました。

統合失調症の予後をよくするには、

病識をもって、医師の指示に従いながら積極的に治療をすること
自己判断で服薬や通院を辞めないこと
規則正しいリズムの生活を送ること
自分のペースで、社会参加へのステップを踏んでいくこと

などがあげられます。

これらを守ったからといってすべてが良くなるとは言えませんが、症状軽減のお手伝いになればと思います。

少しでも生活のしづらさがなくなり、よりよい生活を送ることができるよう願っています。

こちらのコラムでは精神科への入院とはどんなものか、など解説しております♪⇩

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。