精神科デイケアとは? 利用方法や様々なプログラムを紹介!

精神科デイケア
Sebastian ŠoškaによるPixabayからの画像

精神科リハビリテーションの中に、退院したばかりの精神障害者や長い間家にこもっていた人などが利用する、「精神科デイケア」というものがあります。これは精神障害者などが社会復帰をするにあたって、生活リズムを整えたり、仲間との交流によって人間関係の作り方を学んだりするものです。今回は精神科デイケアとはどんなものか、解説したいと思います。

■精神科デイケアとは? どんな人が利用する?

精神科デイケアは、精神科リハビリテーションの中に含まれる、精神障害者の自立を支援していくプログラムです。

精神科リハビリテーションの中には、精神科デイケアを含め、通所リハビリテーションとして4つの種類があります。

デイケア(午前から午後にかけての6時間。昼食をはさむ。)
ショートケア(午前または午後の3時間のみ。食事はなし。)
ナイトケア(夜のみの4時間。間に食事をはさむ。)
デイナイトケア(朝から夜までの10時間。朝昼晩3食あり。)

これらは、一般的には精神科病院などに併設された施設で行われます。しかし、デイケア施設を併設していない場合は、ほかの病院などのデイケア施設を利用する場合もあります。

食事の提供体系や料金については、各施設で異なってくる場合があるので、事前にその施設に確認するとよいでしょう。

デイケアなどを利用する人としては、

人づきあいが苦手で対人関係の作り方を学びたい
ほかの人と交流する機会がないので、仲間を作りたい
生活リズムを整えたい
社会復帰に向けてスキルを身に付けたい

などの目的を持った人たちが利用されることが多いです。病院を退院したばかりの頃や、長い間家にこもっていた人が外に一歩踏み出すことはとても勇気が必要なことになります。

そこで、リハビリテーション施設としてのデイケアなどを利用することによって、段階を踏んで社会復帰への道筋を見つけていきます。

■デイケアを利用するには? 申請までの流れから利用開始への道

利用までの流れは施設によって異なる場合がありますが、多くの場合は以下のような流れとなっています。

1,主治医に相談する
2.実際に見学や体験をしてみる
3.利用についての手続きをする

<1.主治医に相談
まず、デイケアを利用したいことを主治医に相談します。相談者の症状にもよりますが、ある程度症状が安定していれば利用が認められる可能性が高いと思われます。

また、デイケアを行っていない病院であれば、主治医からほかの病院のデイケア施設を紹介してもらえることもあるので、利用したいと思ったときはぜひ相談してみましょう。

<2.見学~面接
気になるデイケア施設を見つけたら、まずは見学に行きましょう。そこでは、利用者とスタッフの雰囲気、施設の環境、交通アクセス、食事の提供についてなど「自分がもしここに通うことになったら」ということを想定して見学をしましょう。

また、体験をすることによってそこでの利用者の様子なども窺うことができますし、スタッフの雰囲気なども、何となくではありますが、わかってくると思います。

そこに自分が馴染んでいけるかも考える必要がありますし、また自分が望んでいるプログラム内容があるかどうかも要確認です。

<3.利用手続き
正式に、「ここのデイケアに通いたい!」となったら、利用手続きに入ります。主治医が勤務している病院とは違った施設でデイケアを利用する際、主治医の意見書などの書類が必要となる場合もありますので、利用を開始する前に確認しておきましょう。

デイケア施設で「利用可能」と判定されれば、その施設でデイケアに参加することができます。

デイケアを利用するにあたって、気になるのが利用料です。精神科デイケアは治療の一環ですので、健康保険が適用されます

また、自立支援医療を利用すれば、地域や施設によって異なりますが、自立支援で1割負担の方はだいたい1日800円程度で利用することができます

また、自立支援医療の対象の方は上限負担額以上は支払わなくても大丈夫です。上限額としては、市町村民税非課税で本人所得が80万円以下なら5000円(月額)です。

市町村民税額(所得割)が一定の所得以上(23万5000円以上)でも、上限額は2万円(月額)となります。

交通費は基本自己負担となっていますが、交通費が助成される地域もありますので、こちらも確認しておくとよいでしょう。

■具体的にはどんなプログラムがあるの?

精神科デイケアのプログラムはそれぞれの病院によって特色があります。映画、音楽、園芸、料理などの鑑賞・創作を主にしたプログラムから、ストレッチ、ヨガ、卓球、バレーボールなどのスポーツ系のプログラムまで幅広い種類のプログラムが用意されています。

しかし、各デイケア施設では、上に挙げたプログラムがすべて用意されているある訳ではありませんので、ご注意ください。

鑑賞・創作系のプログラムでは頭や手を動かすことによって集中力の向上につながりますし、利用者同士の会話も弾みます。

料理などでは、一緒に作り、一緒に食べることによって、美味しさだけでなく「皆で食べる」楽しみも味わえます。

また、決まった時間に食事をとることにより、生活リズムの構築にもつながります。スポーツ系のプログラムでは体力づくりや体調面を良好に保つことに役立ちます。

団体スポーツでは、チーム内で声を掛け合ったりすることから、結束力が生まれ、自然と参加者と打ち解けられるのではないかと思います。気の合った仲間ができればデイケアに通うことも楽しくなってくるでしょう。

そして、SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)といったプログラムが行われている施設もあります

SSTは、生活技能訓練・社会生活技能訓練とも呼ばれます。例えば、ロールプレイ(役割演技)などを通して対人関係における悩みなどを参加者全員で考えたり、ゲームなどで「ルールを守る」「順番を守る」などといったスキルを身に付けていくものもあります。

ロールプレイでは、例えば、「主治医に薬についての相談をする場面」や「友達が遊びに誘ってくれたが断りたい場面」などを想定して、利用者それぞれが自分ならどんな対応をするかを皆で考えます。

そして、実際その場面を再現して参加者それぞれが「自分がもしその場にいたらどうするか」について演じたり、人形を使って表現していきます。

大人数で考えることによって、様々な案がでてきますし、利用者の生活場面でも、「あ、こういう場面SSTでやったな」と思い出すことがあるでしょう。

このように、SSTでやったことを日常生活に生かすことを般化(はんか)と言います。SST内だけでやるのではなく、実際の生活に活用していくことが大切です。

SSTでは利用者皆でいろいろなゲームを行うこともあります。ゲームを行うことによって、利用者皆と打ち解けられることもあるでしょう。

そして、「順番を守る」「ルールを守る」「仲間と協力する」などといった社会性を習得するのにも向いているプログラムだと言えます。

上に挙げた例のように、様々なプログラムに参加していくことによって、自分に必要なスキルを身に付けられますし、また仲間との交流を通じて、「人と関わることの楽しさ」を知ることができます。

デイケアを利用するにあたって、自分はデイケアで何を身に付けたいのか、どんな目的でデイケアを利用するのか、最終目標は何なのかなどを具体的に頭に浮かべながら利用することが大切です。

生活リズムを整えるためにも、利用可能と決められた日数はきちんとデイケアに通い、様々なプログラムに参加し、自分に必要なスキルを身に付けられれば、と思います。

社会復帰の一つとして、一般就労にチャレンジしたり、「まだ一般就労のステップではないけど働きたい!」という方は就労継続支援などの福祉的就労を利用されるのも有効的だと思います。

社会に出る為の第一歩として、精神科デイケアを有効活用し、自分の目標に向かって歩みを進めていけることを願います。

■精神科デイケアについてまとめ

精神科デイケア」と一口に言っても、そのプログラムや支援体制は施設によってそれぞれ特色があります

その為、「自分はどんなスキルを身に付けるためにデイケアに通うのか」「最終目標は何なのかなどを考えながら、利用する施設を選ぶ必要があります。

対人スキルを上げ、仲間づくりをしたいという人もいれば、SSTなどのプログラムにおいて社会性を身に付けたいという人もいると思います。

また、生活リズムを整えたい方も、毎日(医師に決められた日数によって異なる)デイケアに通うことによって、良いリズムができてくるでしょう。

自分の必要とするスキルを見極めつつ、社会復帰という大きな目標に向かって一歩ずつ歩んでいってください。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。