みなさんは「HSP」という言葉をご存じですか?このHSPという特性を持つ人々は、他人の些細な一言や出来事に傷つきやすい、とても敏感な神経を持っています。また普通の人は気にならないような音や光にも敏感で、とても〝生きづらい″日々を送っています。そんなHSPの人々の特徴から対策まで綴ってみたいと思います。
■5人に1人はHSP?そもそもHSPとは?
「HSP」とは、「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の略語で、〝人一倍繊細な人″という意味を持っています。
HSPを提唱したアメリカの心理学者、エレイン・N・アーロン博士はHSPは人口の約15~20%、つまり5人に1人がこのHSP特性を持っているといいます。
こういった特性を持つ人は
・普通の人なら平気な匂いや音、光に敏感である
・他人からの些細な一言に過剰なほど傷ついてしまう
・他人の顔色を窺って行動してしまう
・外出から帰ると、どっと気疲れする
・心身ともに疲れやすく、疲れが溜まり身体的な病気につながりやすい
等の特性を持ち合わせています。
これらの特性は後天的でなく「生まれ持った気質」であり、HSPはいわば「非常に感度が高い人」のことを指すといえます。
神経が過敏な人では頭痛やめまい、腹痛など体調不良を訴えることもあります。疲れやすい傾向も顕著で、ちょっと知り合いと出かけただけで2、3日寝込んでしまう、という方もいらっしゃいます。
また他人の些細な一言に傷つきやすいという特性もあります。つまり「心のバリア」がとても薄いため、ほかの人なら気にならないようなことを敏感にキャッチし気にしてしまうのです。
そして自己肯定感が低いため、何かちょっとしたトラブルが起こると「全て自分が悪い」と思い込んでしまい、憂鬱な気分になります。しかし、すべては自分のせいだと思っている為、周りの人をとがめたりすることはほとんどないと言われています。。
人のことを気遣い、常に人の求めることを先回りして行動できる「良い人」なのですが、その「優しさ・気遣い」によって、自分の神経をすり減らし〝生きづらい″人生を送っているとも言えるでしょう。
それでは、HSPの特性を持った方の〝生きづらさ″とはどういったものなのでしょうか?
■「HSP」の生きづらさ 原因は脳?
人とうまく関係が作れなかったり、ほかの人が気にならないようなことが刺激になったりと、神経が人より過敏なHSPの人はとても〝生きづらい“状況にあります。
では、なぜHSPの人は過敏になりやすいのでしょうか?それは脳の視床(ししょう)という領域にある「視床フィルター」という情報をろ過してくれるフィルターの働きが弱いためと言われています。。
視床フィルターには、脳に入ってくる情報の余分な部分をカットしてくれる働きがあります。
そのフィルターが弱いということは、自分を取り巻く環境にある情報すべてが脳に入ってくるため、脳がパンパンの風船のような状態になっていると言えます。
この時の脳は「これ以上情報は入らない!」という緊急信号を出しています。そのため、一度静かなところに行って休む、自分の安心できる場所に行くなど脳をクールダウンさせてあげてください。
HSPはうつ病や不安障害、睡眠障害など二次障害を起こすこともあります。その原因の一つとしては、「生きづらいのは自分が弱い人間だから」「周りで起こるトラブルはすべて自分のせい」という思い込みがあります。
HSPの人は、何かあると自分を責め、罪悪感にとらわれがちになり、「自分がミスをしたこと」「うまくいかなかったこと」などを他の人以上に気にしがちです。
そのためそれが気になって夜眠れなくなったり、憂鬱な気分が続くなど精神的にも追いつめられることもあります。
それが自分で解決できればいいのですが、HSPの人は自分一人で抱え込んでしまいがちな傾向があるので、誰にも相談せず思い詰めてしまった結果、うつ病などの精神病を併発する恐れがあるのです。
もしも「1日中気分が落ち込んでいる」「眠れない」「やる気が出ない」などの症状が2週間以上続くようであれば、HSPの二次障害として生じたうつ病などの可能性もありますので、一度心療内科や精神科などを訪れてみたほうがいいかもしれません。
ただ、やはりこういった症状にも個人差がありますので、一概に「こころの病である」と言うことはできません。ただ、やはり本人が「辛いな」と感じたら専門医を訪れてみるのも一つの手かもしれません。
■イヤホンが効果あり?HSPの生きづらさへの対処法
HSP特有の〝生きづらさ″を少しでも減らすには、どうすればよいのでしょうか?例えば、刺激量を減らすだけでも、少しは日常生活を送るうえで楽になるのではないでしょうか。。
音に敏感な人は、防音イヤホンをするのがおすすめです。筆者である私も、聴覚過敏の特性を持っているため常に防音イヤホンは携帯しています。
イヤホンをしていても他の人の話す声はちゃんと聞こえるため、聞きたくない雑音などだけがシャットアウトされ、余分な刺激から聴覚を守ってくれるので、筆者にとってはお守りのようなものです。
また、光に敏感な人は部屋の照明の色を優しい色など自分にとって刺激にならない色に変えてみるのもいいと思います。仕事や勉強などや神経を使うことも長時間続けてやることは避け、こまめに休憩をしながら進めていきます。
そして、何かトラブルが起きた時「全て自分のせいだ」と考えてしまうことはやめるようにすることが必要です。
何か他の人が起こしたミスがトラブルの原因かもしれないし、機械などの不具合があって起きたトラブルかもしれません。
全て自分に結び付けて「自分が悪い」とネガティブに考えてしまうのはやめるように努めましょう。
ネガティブなことだけを考えてしまうのではなく、ポジティブな考え方に変換する方法を身に付けるのも大切です。
例えば「人の顔色ばかりうかがってしまう」というマイナスの認知を「人の気持ちを考えて行動できる」というプラスの認知に変えます。
そうやって自分の認知の方向を変えていけば、自然と自己肯定感も高まり、HSPの人が抱えがちなネガティブな認知から脱出し、HSP克服に一歩近づけるかもしれません。
また周りの人に「私はこういう特性があるんだよ」と知ってもらうことも大切です。そうすれば、周りの人が本人を見ていて「休憩が必要そうだな」と思ったら「少し休んだら?」という声をかけてもらえるかもしれません。
そして自分からも「少しクールダウンしたいので休ませてください」と言いやすくなります。理解者が周りにいることで、HSPの人特有の〝生きづらさ″は多少なりとも減る可能性が高くなります。
「自分を理解してくれている人」がそばにいることは、何より心強いです。何か心配事があったら相談に乗ってもらったり、話を聞いてもらうだけでも「自分は一人ではないんだ」と感じることができ、安心につながります。
こういったネットワークを築いていくことも、HSP克服に向けて大切な要素となってきます。自分の理解者がいてくれたほうが、〝生きづらさ″を解消するうえではメリットが多いのではないでしょうか。
「自分がHSPである」ということを周りに言うことは勇気がいるかもしれません。しかし、〝生きづらさ“を解消するうえでは非常に重要です。
そのためにも、たとえ一人でもいいので、自分のことを理解してくれる人を探してみてください。
■HSPについてまとめ
HSPの人は、人一倍敏感で繊細なこころを持っています。そのため、HSP特有の〝生きづらさ“も抱えながら苦しんでいる方も多いと思います。対策として、
・自分の苦手とする刺激量をできる限り減らすこと
・トラブルなど悪いことすべてを自分に結び付けて考えるのをやめること
・自分の特性を理解してくれる人を一人でもつくること
などがあげられます。
また、周りの方々には「特有の敏感さ・繊細さ」を持った人も存在するのだということを理解していただくとともに、できる限りの配慮を一人ひとりが行うことで、そういった方々が〝生きやすい″世の中になれば、と思います。
人は一人では生きていくことはできません。HSPの人もそうでない人も、お互い支えあって笑顔でいられる社会が来ることをこころから願います。
著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。