「うつ」かもしれない?~症状や対処法について解説~

うつ病
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「憂鬱な気分がつづくな」「朝起きられない」「夜眠れない」などといった症状はありませんか?

その原因は「うつ病」かもしれません。


一時‶うつ病はこころの風邪〟などと言われたこともありましたが、それにも表されているようにうつ病は誰でもかかり得るこころの病なのです。
しかし「やる気の問題だろう」「疲れているだけだ」などと言って放っておくと、症状は悪化し、風邪が肺炎になるように、どんどん事態は深刻なものになってしまいます。
このコラムではうつ病になりやすい性格傾向や、治療する際の心構え、もち猫が情報収集して作った   ‶うつ病チェック表〟なども掲載しましたので、興味のある方は読んでみてください。

■うつ病ってどんな病気?うつ病自己チェックも!


うつ病とは

言葉では表現しようがないつらい沈んだ気分または興味・喜びの喪失が、ほとんど一日中、
 ほぼ毎日、2週間以上続き、仕事や日常生活の困りごとが出てきてしまうもの

とされています。

からだの症状としては
・食欲がない
・眠りが取れない
・疲労感、倦怠感
・からだが重い

などが挙げられます。

こころの症状としては
・抑うつ気分
・焦り、不安
・希死念慮(死んでしまいたい、消えてしまいたい)
・意欲の低下
・自責感

などが主な症状となってきます。

★日内変動って?★
うつ病の場合‶日内変動〟といって、朝になると気分が沈み、学校や会社にも行きたくなくなる事が多いです。布団から出られずにお昼頃まで過ごすこともあります。

しかし、午後になるにつれて朝の憂鬱感がなくなって気分は晴れ、ごく普通にテレビを見たり、人によっては夜になると人が変わったように仕事に励む、と言う場合もあるようです。

このように、朝調子が悪く夕方にかけて調子が良くなることが「日内変動」というものです。

★睡眠障害が出たら要注意!★
そして「うつ」の患者さんに必ずと言っていいほど見られるのが睡眠障害です。朝早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」や、夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」時間は寝ていてもぐっすり眠った気がしない「熟眠障害」などです。

特に多く見られると言われているのが「早朝覚醒」です。朝早く目が覚めるものの、もう一度寝付くことはできず、その内ストレスとなっていることなどについて悶々と考えてしまい、どんどん憂鬱な気分になる……。

起床時間が来てなんとか起きてみるも、目覚めはかなり悪い朝から沈んだ気持ちで過ごすことになってしまう。布団から出られない事もある。

うつ病がある人はそんな辛い思いで朝を迎えることが多いのです。(睡眠のリズムなどについてはコラム「睡眠障害とは?~きもちのいい眠り、出来ていますか?~」を読んで頂けると幸いです!)

そのように質の悪い睡眠ですので当然前日の疲れも取れず、食欲もなく朝ごはんも食べられません。

それらからストレスにつながることで食欲減退が起きてくる場合もあります。「無理やり何かを食べても砂利を噛んでいるようでまったく美味しくない」と表現する人もいます。(味覚障害)

★ストレスが大きな原因★
そしてうつ病発症の原因の多くを占めているのが「ストレス
ストレス社会と言われる現代、会社で仕事に追われ、上司に叱責され、毎日のように残業……。

また学生の場合も勉強と部活、また友人関係を良く保つためにいろいろなストレスに追われる日々。主婦だって大変です。毎日の家事と子育て、あるいは仕事を両立している人もいるかもしれません。とにかく、今の日本にはストレスが蔓延しているのです。

その「ストレス」を上手に発散できればまだ発症のリスクは低くなりますが、忙しすぎてストレスを発散する時間がなかったり、自分の時間をとれなかったりして、どんどんこころにストレスが溜まっていくこともあります。そこが要注意です。

うまくストレスを発散できないと、こころにゴミがたまっていき、パンパンになってしまいますそれがはじけた時、ストレスでこころやからだに異変が起こります。前述のような症状が起きるようになり、やがてその人を「うつ病」にしてしまうのです。

また、本来ならば喜ばしいこともストレスのリスクになる場合があります。

子どもの自立、結婚、出産など嬉しいことのように見えても「自分の役割(子育て)は終わったんだ」という力がふと抜けてしまったような空虚な思いから、うつ病に至ることもあるのです。これを「空の巣症候群」といいます。
この空の巣症候群に陥った女性は、抑うつ気分などからうつ状態になり、そのままうつ病に移行してしまう可能性もあるので注意が必要です。

他にも、様々なことが理由でうつ病になる人がいます。「うつ傾向」を知る為に、自己チェック表を作ってみたので気になる方はやってみてください。

★うつ病自己チェック表★
・気分が落ち込み気味で憂鬱である
・夜よく眠れない
・朝早く目が覚めてしまう
・疲れやすくなった
・食欲がない
・自分は価値のない人間だと思う
・死にたい、消えたいという思いがよぎることがある
・特に朝、気分が憂鬱
・普段よりイライラしている
・今まで興味があったこともやる気にならない
・将来に悲観的である

どうですか?これはもち猫がうつ病の症状をランダムに書いただけなので、これにたくさん当てはまるからと言って必ず「うつ病である」というわけではありません。あくまでも「傾向がある」という風に思っていてください。もし気になるようでしたら、お近くの精神科や心療内科を訪れてみてください。

■うつ病になりやすい性格傾向~執着性格とメランコリー親和型~

うつ病になりやすい性格傾向としては「執着性格」と「メランコリー親和型」といったものがあげられます。まず、執着性格から見ていきましょう。

★執着性格★
執着性格は、精神医学の大学教授下田光造によって分類されたもので、「几帳面、真面目、仕事熱心、凝り性、強い義務感と責任感、正直、律儀」という特性を持ちます。
仕事などにこだわりを持ち、「執着している」といわれるくらい熱心に取り組みます。しかし完璧主義で手を抜けないという負の面もあります。
何事も完璧にやらなければならない」という一生懸命な思いから無理をしてしまい、結果的に心身ともに疲労困憊してしまい、うつ病に至ってしまうのです。

★メランコリー親和型性格★
メランコリー親和型性格は、ドイツのテレンバッハが提唱した性格傾向です。
秩序を愛し、他人との円満な関係を尊重する性格」と表現されています。
几帳面、律儀、正直、綿密、小心、生真面目、仕事好き、献身的、強い責任感、融通性の欠如、人に頼まれると嫌と言えない」などです。

こういった性格の人達は仕事を的確・丁寧に仕上げます。上に挙げたようにかなり几帳面なため、妥協するということを知らないのです。

上に挙げた2つの性格特性を持つ人たちは、仕事熱心なのが功を奏して会社では高評価をうけます。しかし、その評価を買われて「自分には負担が大きすぎる!」と思える仕事を頼まれたとしても、「ノー」と言えない傾向にあります。そして、どうしようもなくなり、自分が潰れてしまうのです。

「自分もそういう傾向があるな」「頼まれて断るのは悪い気がして嫌だな」と言う人は、きっと真面目な人たちでしょう。真面目なのはいいことですが、自分のキャパシティをしっかり把握し、無理のない計画を立てることで自分が潰れるのを防いでほしいと思います。

■うつ病になるとどんな症状が現れる?

うつ病の代表的な症状として「抑うつ気分」があげられます。

・気分が憂鬱である
・ひどく落ち込む
・特に理由もないのにイライラする
・表情が暗い
・朝が辛い

などといった症状が、ほぼ1日中続いている状態です。


前述のように意欲もなくなります。今まで夢中になって取り組んでいた趣味や、毎回のように見ていたテレビドラマも見る気にならないなど、とにかく「何もしたくない」のです。

一日中ぼーっと部屋で過ごしたり、下手をすると一日布団にくるまったまま、という場合もあります。食事もおろそかになり、ダイエットなどを行っているわけでもないのに体重が減少する、といった場合もあります。もし食べられたとしても「美味しいと感じられない」と言う人がほとんどです。食欲も「欲」の一つですから、なくなってもおかしくはありません。

また、身だしなみもだらしなくなります。歯磨きや着替えを怠るようになったり、部屋の片づけをしなくなってしまいます。とにかく「やる気が起きない」ので、普段やっていたことでもとても億劫に感じてしまうのです。

★「やる気」のコントロール★
「やる気」も「うつ」のバロメーターです。人は「やる気がない」とよく口にしますが、案外取り掛かってみるとこなせてしまうもの。しかし、うつ病の「やる気がない」というと「やる気」はあっても‶全く手が出ない〟という状態が起こるからです。

朝早く調子が悪く夕方になると調子が良くなるという日内変動が加わると、朝や午前中は本人に「やる気」があっても、からだのほうが億劫で活力が出てきません。

ところが、午後になると本人の意思とは関係なく「やる気」が出てきて何かやりたくてうずうずします。こんな風に「やる気があるのに行動に移せない」時があったり「自分の意思とは関係なくやる気が出てくる」など「やる気」にも波があるので、本人も自分自身のことがよくわからなくなり、困惑してしまう場合があります。

自分で「やる気」をコントロールしようとしているうちに「うつ」は進行していってしまうのです。「自分がやりたい事なのにやる気が出ない」などの症状が見られたら、一度自分のこころが疲れていないか、無理はしていないか、睡眠はとれているか、などセルフチェックしてみてください。

■躁うつ病(双極性障害)についても知ろう

現在は元来の「うつ病」とは切り離されて考えられていますが、以前はうつ病の一種とされていたのが躁うつ病です。今では「双極性障害」といいます。
双極性障害は、以前「躁うつ病」と呼ばれていた気分障害の一つです。双極性障害では、気分がハイテンションで高揚している躁状態と、無気力・意欲の低下などが顕著になるうつ状態が交互に表れます
躁状態になると眠らなくても行動し続けたり、気が大きくなって高い買い物をしてしまったりといったことがみられます。躁状態では本人は気分がいいので「病気である」という自覚はないことが多いようです。こういった気分が高揚したとき、気が大きくなった時などの行動を躁病エピソード〟といいます。

反対に、うつ状態が酷い時は気分の落ち込みが続き意欲の低下や不眠、また逆に過眠が見られることもあります。こういったうつ状態の時のことを‶うつ病エピソード〟といいます。

同じ双極性障害でもⅠ型とⅡ型があり、治療法も異なってきます。
Ⅰ型では激しい躁状態とうつ状態が見られ、Ⅱ型では軽躁状態と長引くうつ状態が見られるのが特徴です。

Ⅱ型うつ状態が長く見られるため「双極性障害である」と気づかれるのが遅くなってしまう事もあります。

長いうつ状態を経て、軽躁状態が見られた時に初めて双極性障害であると気づかれるのです。うつ状態が長引くため‶治りにくいうつ〟と間違えられることもあります。そして双極性障害であると気づかれるまできちんとした治療がなされなかったため、病気が長引いてしまうこともあります。

双極性障害では、うつ状態が先にみられることが多く、躁病エピソードが表れるまで時間がかかるときちんとした診断が下りるまでに10年ほどかかる、と言うこともあり得ます。

ここで双極性障害の自己チェックをしてみましょう。

・気分が高揚していつもより清々しい
・短時間しか眠らなくても意欲的に行動できる
・いつもより高い買い物でも今ならしてしまいそうだ
・「死にたい」などと自分を責める気持ちになる
・休日は一人で過ごしたい
・出かけたりするのが億劫

どうでしょうか?躁病エピソードとうつ病エピソードを織り交ぜたものなので、真逆の項目もあります。もし多数当てはまったら「傾向があるかもしれない」と自分の生活スタイルやこころの状態などを見直してみるといいと思います。酷いようなら、早めに専門医のもとを訪れてください。

■もしうつ病になったら?~セルフケアと周りの対策~

やる気が出ない、意欲が出ないなどの症状が続き、精神科や心療内科でうつ病である」と診断された場合にまず必要なのは「休養」です。

★職場へのお願い★
もし社会人で働いており、仕事を続けるのが苦しい、と言う人は主治医に診断書を書いてもらい、休職の手続きを取りましょう。休むのが難しい場合は、部署の異動や、残業を減らしてもらうなど「環境調整」が必要となってきます。主婦の場合は家事を家族みんなで分担するなど、とにかく‶ストレスとなる源〟を減らすことが必須条件となってきます。本人がゆっくりと休養できる環境を作りましょう。

★規則正しい、ゆったりとした休息を★
また食欲不振や睡眠障害から、規則正しい生活を送るのが難しくなってきますが、生活リズムを整えるのはうつ病の治療の基本中の基本。自分だけでは難しいという人は家族などにも協力してもらい、就寝時間と起床時間を決め、三食バランスの摂れた食事を心がけるといいと思います。場合によっては、主治医と相談して入院治療となることもあります。

うつ病にかかる人は責任感も強く真面目な人も多い傾向にあるので「休むなんてとんでもない!」などと思うかも知れませんが「ゆっくり休む」ことこそが今のあなたの仕事なのです。

焦りを感じたりする必要もありません。しっかりと休養をとって、また元の自分に戻ったらバリバリ仕事が出来る様になります。うつ病はしっかりした治療を受けていれば治る病気です。休む時はとことん休みましょう。

★セルフケアも大切★
また、自分の気が楽になることを生活に取り入れていくことも必要です。音楽を聴く、読書をする、散歩をしてみる……。
「ゆううつな気分」が晴れるならどんなことでもいいです。

自分が「気持ちいいな」「スッキリするな」といったことを見つけてみてください。


朝布団から出るのが憂鬱でも、日光を浴びれば幸せホルモンと呼ばれるセロトニンがからだに入ってきて、良い気持ちになります。朝、日光を浴びるというのもお勧めですよ。

そして、うつ病の場合薬物療法を行うこともあります。その場合は、医師の指示の下適量を服薬してください。

★薬物療法★
うつ病の症状が顕著に表れる期間はだいたい3か月くらいと言われています。その後はだんだん落ち着いてきますが、何か刺激があればまた再発してしまうリスクもあります。そういったことを防ぐためにも、医師から薬を処方された場合は自己判断で断薬や減薬はしないでください。症状が悪化します。また、服薬を続けることは再発を防止するのにも一役買います。医師の指示に従ってください。

■うつ病まとめ

医師がうつ病を治療する際は長い目で見て投薬などを行いますので、患者さんからすれば「早く治したいのに!」とじれったい気持ちもあるかもしれません。しかし、うつ病「無理をしすぎてしまった、また自分一人で頑張りすぎてしまって起きた病」であるとも言えます。

元来真面目な人が多いうつ病の患者さんは、仕事や家事を休むことによって自分の存在価値を見出せなくなりがちです。しかし、うつ病は「治る病気」です。周りも当事者も長い目で見て「ちょっと食事が食べられるようになった」「少しだけどテレビが見られるようになった」などという‶ちょっとした喜び〟を感じつつ、回復に向けて歩んでいてほしいと思います。

そして、前述しましたが薬が処方された場合は服薬もきちんと医師の指示の下行っていってください。それが健康なこころを取り戻す一番の近道です。早く良くなりたいと思ったら‶焦らない〟こと。ゆっくり一歩ずつ歩んでいきましょう。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。