ストレスが及ぼす影響~からだやこころへの影響~

ストレス

ストレス社会と言われる現代、人々は様々な「ストレス」を抱えながら生きています。
家族の問題、会社や学校での人間関係、経済的な問題、健康上の問題……。日常生活を送る上で様々なことがストレスになるのです。

‶ストレスを感じない日〟などない、という人もいらっしゃるのではないでしょうか?

そんな「ストレス」は、上手に発散していかないとからだやこころの病気につながってしまうことがあります。

そんなストレスの原因や、ストレスが原因となって起きる病気の代表的なもの、またどうやったら上手くストレスを解消できるかなどについてまとめましたので、興味のある方はどうぞご覧ください。

■そもそもストレスとは?

ストレスとは

外部からの刺激などによって体の内部に生じる反応のこと。その原因となる刺激(ストレッサー)とそれに対するからだやこころの反応(ストレス反応)と合わせてストレスのことを指す〟

とされています。

この「外部からの刺激」には天気や騒音などの環境的要因、からだの病気や過労、睡眠不足などの身体的要因、こころの病気や不安や悩みなどの心理的要因、仕事や対人関係での悩みなどの社会的要因があります。

日常生活を送っていく上で、人は様々なストレスにさらされているわけです。小さな‶嫌なこと〟でもストレスとなり、それが積み重なっていって爆発すると、心身の不調や病気となって私たちを苦しめる、それがストレスなのです。

また、最近(2022現在)ではコロナウイルス自粛生活を余儀なくされています。外に遊びに行けない子どもたち、一緒にランチを楽しめない母親たち、夜みんなで一緒にストレス発散の飲み会などを行えない父親たち……。

今までの日常が変わってしまい、ストレスを発散できる場や機会も減ってしまいましたね。

さらに、お互いストレスが溜まっているので家族間でギスギスしてしまっている家庭もあるのではないでしょうか?

ストレスの形も、だんだん変化しつつあるようです。


‶コロナウイルスによる生活様式の変化〟のように、ストレスは何かの‶変化〟によって起こる場合もあるのです。

ですから、結婚や出産、就職や進学など、本来ならばうれしいことであってもストレスになる可能性があります。

大きいことばかりではありません。台風が来て気圧が変化した、仕事が前より少し忙しくなった、もうすぐ受験で勉強の量が増えたなど、何か‶ちょっとした変化〟でも人間はストレスを感じやすいのです。

そこで、自分のストレスサインを知っておくことが必要です。


自分がストレスを感じている時は、何かサインが出ているはずです。

おなかが痛くなる、イライラしやすくなった、眠れなくなった、など。


自分のストレスサインを知っておけば「あぁ、今自分はストレスが溜まって疲れているんだな、少し休憩しよう」と休憩を取り入れることもできます。

そのためにも「自分はストレスを受けるとどんな状態になるのか」ということを把握しておくことはとても大切なのです。

■こころの病気になる可能性も?ストレスの影響

ストレスをうまく発散できないと、こころの病になってしまったり、からだの不調として症状が出てくる場合があります。

例えば、こういったことがこころの不調のサインです。

・気分がふさぎ込む、落ち込む
・いつもイライラしている
・動悸がする、胸が苦しい
・食欲が落ちる、体重が減る
・なかなか寝付けない、朝早く目が覚める
・理由もないのに不安になる

などといった症状です。

こういった症状が続くようでしたら、精神科や心療内科などを訪れてみることをお勧めします。こころがストレスでいっぱいになって、SOSのサインをあげているからです。

ストレスが原因でなってしまう病気としては、

・うつ病
・自律神経失調症
・適応障害
・パニック障害
・PTSD

などがあります。

今回は「自律神経失調症」について解説していきたいと思います。

■自律神経失調症とは?

まず、自律神経失調症のサインについて触れておきます。

・朝起きてもだるさが残っており、なかなか布団から出られない
・耳鳴りやめまいがする
・いつもイライラしていたり、泣きたくなったりと情緒不安定
・寝付きにくい、朝起きられない
・頭痛や肩こりなどに悩まされている

こんな症状が現れ、続くようならあなたは自律神経失調症かもしれません。


ストレスにより、自律神経である交感神経と副交感神経の機能が不安定になっている状態です。

バランスが崩れる原因としては、人間関係や仕事などの精神的ストレスや、不規則な生活による自律神経の乱れなど人によって様々です。

その中で共通する原因としては「ストレスによって自律神経が正常に機能しないこと」ではないかと言われています。また、体質的に自律神経が乱れやすいという方もいらっしゃいます。

交感神経は活動的に、副交感神経は安静的に働きます。

つまり、交感神経はからだを活発に動かす時に働き、副交感神経はからだを休める時に働くということができます。

これら2つはバランスをとりながら身体の状態を調整しているのですが、不規則な生活やストレスなどでバランスが崩れると、様々なからだ・こころの症状が現れ、日常生活に支障を来たすようになります

例えばからだの面では

・倦怠感、疲労感
・めまいや耳鳴り
・頭痛や肩こり
・下痢や便秘
・からだが火照る、多汗

など。

こころの面では

・気持ちの落ち込み
・意欲の低下
・憂鬱感、不安感
・イライラする

など。

これらの症状が現れるため、日常生活を送っていく上でも支障が出るようになるのです。

朝からだが重くて起きることができず仕事に行けなかったり、やる気の低下のために家事ができなくなったり……。

しかも自律神経失調症は‶自律神経自体は働いてはいるがバランスが悪い状態〟ですので、内科で内臓などの検査をしても異常が見つからない、というのが特徴です。

何軒も病院を回っても「異常なし」とされてきた理由がわかったのではないでしょうか?

そしてこうした症状は、精神障害である「うつ病」とも似ています。そこで違いについて解説していきます。

★うつ病と自律神経失調症の違いは?★
うつ病も、ストレスが原因で発症しやすい病気であるという部分では自律神経失調症と似ています。

また身体症状も、からだが重くなったり、食欲がなくなったりと類似する部分があります。

しかし、うつ病では自律神経失調症より精神症状が強く現れるのが特徴です。

自律神経失調症では現れないような、自分を傷つけたい(自傷)という気持ちや、希死念慮(死にたい・消えたいという気持ち)も長期的に重く現れる場合があります。

そして、うつ病は自律神経失調症に比べ診断基準が明確です。そういった部分でも、両者には違いがあると言えます。

うつ病と自律神経失調症は違う病気だ、と述べてきましたが自律神経失調症からうつ病へ移行することもあるので注意してください。

自己判断は危険なので、もし自律神経失調症の患者さんで「自分はうつ病かもしれない」と思ったら、心療内科や精神科を訪れてみることをおすすめします。

うつ病の場合と自律神経失調症の場合の治療はまたそれぞれ違ってきますので、自己判断だけはしないようにしましょう。

また内臓に異常はないけれど理由が知りたい、と思った場合も心療内科や精神科を訪れるといいと思います。

確かに身体症状は出ますが内臓の病気ではないので、内科に行っても前述のように「異常なし」とされてしまう可能性があるからです。

お勧めとしては、こころの面を重視する精神科よりも、からだもこころも診てくれる心療内科がいいでしょう。

心理的なきっかけやストレスでからだの調子を崩した時は、心療内科の方が専門となります。

■ストレス軽減のために

自律神経失調症や、その他ストレスからくる身体症状を改善するにはストレスを上手に発散していくことが大切です。

しかし、多忙な現代なかなかまとまった休みも取れませんし、コロナウイルスの関係もあり、遠出をしてストレス発散!というのも難しいです。

そこで簡単に誰でもできるストレス発散法を5つ紹介していきたいと思います。

★甘いものを食べる★
「ストレスがたまると甘いものが食べたくなる」という方も多いのではないのでしょうか?

「甘いものを食べる」ことでストレスが減るという説もあります。精神の安定や安心感をもたらすホルモンの「セロトニン」の分泌には血糖値をあげる「インスリン」が必要となります。

インスリンが血液中の「トリプトファン」という物質を脳内に運ぶことによってセロトニンが作られます。

そのため、血糖値を上げようと思ったら甘いものを摂取し、トリプトファンを働かせることによって「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンをつくる、というわけです。

そのセロトニンの働きによってストレスが減少する、ということですね。

また「ブドウ糖」は脳が働くエネルギー源となるので、ブドウ糖の摂取もおすすめします。

★めいっぱい眠ろう!★
平日は仕事や学校で忙しかったりして「夜更かし気味かも……」という方も多いのではないでしょうか。睡眠は、からだだけでなく脳も休ませる機能を持っているのです。

睡眠不足が続くと脳が疲れてしまい、からだの機能調整をしてくれる自律神経やホルモンのバランスまでもが崩れてしまうのです。

特に睡眠時間に決まりはありませんが、6時間以上8時間未満がちょうどいいと言われています。

また、寝具選びも大切となってきます。


「やわらかくて沈むような気持ちいいマットレスが気持ちいい!」という人も多いかもしれませんが、ちょうどいいマットレスとしては背骨のS字カーブにフィットするくらいの固さがいいと思います。

なぜなら、やわらかすぎるマットレスは眠るときの姿勢が悪くなってしまうからです。枕は人それぞれ高さや固さなど好きなものもあると思います。

寝る時の服装も、やわらかめの着心地の良い生地のものを選べばよりよい眠りにつくことができるでしょう。

それぞれ「自分に合った」寝具選びをしてみてくださいね。

★嫌だったことなどをアウトプットする★
これは筆者も上司に勧められてやっていることなのですが、何か嫌なことが溜まってきたりしたときに、バーッと紙にそのことを書き出すのです。殴り書きでいいです。

とにかく思いつくままに嫌に感じることを書き出していきます。

アウトプットすることで、頭の中に溜まっていたモヤモヤがどんどん外に出ていく感じがします。

TwitterなどのSNSでも、鍵垢にしてしまえば自分が許可した人以外見れませんので、ネットを使ってアウトプットする、というのもアリだと思います。

紙に書き出したとしたら、次はそれをビリビリ破る。そして、ゴミ箱へポイ。


破ってしまえばあとから誰かが見ても何が書いてあるか分かりませんしね。

これだけでも少しは気分がすっとした感じになると思います。


自分の中に負の感情を溜め込むのではなく、アウトプットすることによって負の感情をこころの外に押し出してしまう。これも有効な手段です。

また「泣いたり笑ったりする」ことも感情のアウトプットになります。

笑いたい時は思いっきり笑う、泣きたい時は思いっきり泣く。感情を押し殺すのではなく、遠慮することなく外にだす。

ただ、ここで注意したいのが自分に起こった出来事について泣いたりするのは、エネルギーを消耗してしまうのでやめたほうがいいということです。

泣きたい時には泣ける映画を観たり、笑いたい時にはバラエティー番組を観て思いっきり笑うなどして「感情のアウトプット」を図ってほしいと思います。

★同じリズムを反復するような運動★
スポーツは苦手、という方もいらっしゃるかもしれませんが、何か特別な競技という訳ではありませんのでご安心ください。
同じリズムを反復するような運動をすることが効果的なのです。例えば、ウォーキング、サイクリング、ジョギングなどが当てはまります。


どれも自分のペースで自分の空いている時間にできる運動ですね。こういった運動をしていると、こころを安定させてくれる「セロトニン」が分泌されるといわれています。

セロトニンが分泌されると、脳が活発に働き、精神の安定に繋がったり、こころが穏やかになるそうです。

また、こういった運動を‶太陽の光の下で〟やると効果大!

日光を浴びることによってもセロトニンが分泌されるので、天気のいい日に上に挙げたような運動をすることは、こころにとっては嬉しい作用をもたらすものとなります。

★自分の時間を作ろう★
今はコロナウイルスの問題で自粛ムードが広がっています。「ただ家にいる」のではなく家で「一人になる(自分だけの)時間」をつくることも、こころの安定には必要です。

自分の趣味、例えば読書や音楽鑑賞をしたり、ゲームや映画などの娯楽に触れること、またからだを動かしたりすることなど、自分の好きなことをやる時間を作るのです。

日々のストレスを忘れ、自分の好きなことに没頭する。そんな時間があってもいいのではないでしょうか。

その他にも、美味しいものを食べたり、アロマを焚いたり、からだを労わるためにマッサージをしてもらうなど‶自分のために〟なることをしてあげてください。

■ストレスについてまとめ

以上、ストレスの原因からストレスに関連する病気、またストレス解消法について見てきましたがいかがでしたでしょうか。

ストレスがたまると辛いのは、パンパンに膨らませた風船を指で圧迫しているようなものだからです

いつ破裂するかわからない。だけど外部からの刺激は防げない。だからSOSを発している。そんな状態です。

そうならないようにも、適度にガス抜きをしてあげることがこころにとっても大切なことなのです。

前述のように自分の時間を作ったり、たっぷり睡眠をとる、また甘いものを摂ったりしてストレスを発散させてあげましょう。こころが元気になれば、からだも元気になります。

膨らんだ風船がはじける前にいろいろなリラックス方法を試して、自分のこころを健康な状態に保てると良いですね。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。