自己肯定感って何?~自分を『認める』ということ~

自己肯定感

みなさんも、今までで一度は「自己肯定感」という言葉を聞いたことがあると思います。


自己肯定感について簡単に説明しますと

自分には存在の価値がある

自分という存在を認めることができる

自身を肯定できる感情のことです。


自分という存在をきちんと認められているか、または自分には存在価値がないと思っているかで自己肯定感の高低が違ってきます。

自己肯定感が高い人は自分のことを好きになれますし、自分に自信が持てます。


しかし、自己肯定感の低い人は自分に自信がありませんし、自分には価値がないと思っている場合が多いです。

そんな‶自己肯定感〟を低めてしまう「考え方の癖」や、自己肯定感を上げるにはどうしたらいいかをまとめました。

■自己肯定感って何?~自己肯定感が高い人の特徴~

自己肯定感とは、旧来の意味では「自尊心」に近いものだと言えます。


もともと1965年に広がった「self-esteem」という概念を、日本の学者たちが自尊感情と日本語訳したのです。

海外では、自分の悪いところも含めて「自尊感情」と呼んでいました。

しかし日本人は何かミスをしたりすると「もう自分はダメだ」という風に思いこんでしまう傾向にあります。そこで、それを肯定的に受け止めようということで「自己肯定感」とされました。

その「自己肯定感」というのは、簡単に言うと‶ありのままの自分を肯定する、好意的に受け止めることができる感覚〟のことです。

他人と比べることなく、ありのままの自分を認め、それを肯定的に受け止める。それが自己肯定感なのではないかと思います。

★自己肯定感が高い人★


自己肯定感が高い人は、自分に自信を持っています。なぜ自分に自信が持てるかというと、自分を肯定的に受け止め、ものごとをポジティブに受け容れられるからです。

ありのままの自分に自信を持っているため、相手と比較して「自分が劣っている」などと落ち込むことも少ない傾向にあります。

そして、自分を大切に思っているので、相手のことも大切にできます。相手の良いところ探し」をして、相手のことも肯定的に受け止めることができます。

また他人の目を気にすることもなく「自分はこうやっていくんだ」という芯のようなものを持っています。

そのため、自分の行動に自信をもって積極的に動くことができます。誰かからの評価を気にして動くのではなく‶自分から〟やりたいと思ったことを主体的に行うことができるのです。

そして自分の強みと苦手な所をきちんとわかっているので、強みとなるところはきちんと伸ばし、苦手とするところも「自分の一部」として受け容れられます(海外のself -esteemのようなものです)

このように「自分」というものをしっかり分かっているので、他人と自分を比べて「自分は劣っている」とくよくよ悩んだりせず、堂々と生きていくことができます。

しかも「苦手なところ」も自分の一部としてしっかり分かっているので、そのような部分は相手の良いところを取り入れたり、他人の意見を参考にして自分というものをさらに高めようとします。

そういった「探究心」も自己肯定感の高い人の良いところでしょう。

■自己肯定感が低くなるのは何故?

では、逆に‶自己肯定感の低い人〟の特徴とはどのようなものでしょうか?


自己肯定感の低い人は、よく人と自分を比べて「自分はこんなにも劣っている」とネガティブ思考になりがちです。

そのため、いつも自分に自信がありません

自己肯定感の高い人とは違い、新しいことにチャレンジするときも「どうせ自分には無理だろう」と最初からあきらめ半分になっていることもあります。

もしチャレンジできても、積極的に取り組もうとはしていないので失敗することもあります。

そうすると「やっぱり自分はダメなやつだ」と‶自己否定の無限ループ〟に入ってしまうのです。

そうなると何もかもうまくいかなくなり「何で自分はこんなにダメなんだろう」と抑うつ状態になってしまう危険性もあります。

また、他人への嫉妬や劣等感から精神的に不安定な状況になってしまうと思います。

筆者も自己肯定感は低い方だと言われます。

前述したように「なんであの人はあれができるのに私はできないんだろう」「どうせこんなことやったって失敗する」というネガティブな気持ちによく陥ります。

言って見れば‶ないものねだり〟なのですが‶私にはない〟ことを持っている人に対して嫉妬してしまいます。


では、なぜ自己肯定感の低い人は自分に自信がないのでしょうか?

★子どもの褒めかたにも注意★


例えば子ども時代「条件付きの褒め」をされていたことです。子どもがテストで100点を取ったり、かけっこで一番になったりしたとき、その「結果を」褒めることです。

・テストでいい点が取れて頑張ったね
・かけっこで一番になってすごいね
・他の子より計算が早くてすごいね

などです。

「頑張った過程も含めて褒める」のではなく「頑張って〝いい結果が出たので〟褒める」というものです。こういった褒め方では自己肯定感は高まりません。

例えば「テストで100点をとったら親が喜んだ」というのを例に挙げましょう。これは、やはり‶結果〟を褒めているのであって、子どもが100点をとるまでの努力はあまり評価の対象にはなっていません。

■無意識の思考傾向、マインドセットとは?

★マインドセットとは?★


「○○すると親が嬉しそうだった」などという幼少期の体験は、いつまでもこころに残り続けます。

また、それ以外にも生まれ育った環境、時代背景、先天的な性質によって形成される物事の見方や考え方を心理学では「マインドセット」といいます。

このマインドセット子どもが成長し大人になった時の‶考え方の癖〟となって表れます。「価値観」「倫理観」「信念」と言い換えてもいいでしょう。つまり、無意識の思考傾向のことです。

これは

・何かをするときにどんな気持ちで取り組むか(例:失敗を恐れないなど) 
・そもそもその行為に取り組む勇気はあるか

などに影響してきます。

自己肯定感の高い人は、自分の行動に自信を持っている人が多いため、恐れずに挑戦することができます。

しかし、自己肯定感の低い人「どうせ失敗する」「上手くいかない」などとなかなか積極的に取り組むことができません。

前述した‶自己否定の無限ループが邪魔をするのです。ここが、自己肯定感が高い人・低い人の考え方の違いです。

★自己肯定感が高い人の成長過程★


では、自己肯定感が高い人はどうしてそうなるのでしょうか?

前述のような‶テストで100点を取った〟という受け身な行動を褒めてもらうよりも「自分から家の前を掃除した」など自発的な行動を褒められるほうが、自己肯定感は上がると言われています


‶自分が率先してやった行動を褒められる〟ことが、子どもの自己肯定感のアップには一番つながりやすいのです。

また子どもが失敗したときも「頑張ったんだから良いんだよ」「あれだけ努力してたんだから大丈夫」と、決して子どもを否定しないことです。

やってはいけないことをした時も、頭ごなしに怒るのではなく「今度から気を付けようね」などといった優しい言葉かけをします。

できないことがあっても、何かいけないことをしてしまっても「あなたはあなたでいいんだ」というメッセージを伝え続けることが大切です。それが子どもの自信・自己肯定感アップにつながります。

‶頑張っていい結果が出たから〟ではなく子どもの存在価値を認め〝子どもという存在そのもの〟を認めることです。


「生まれてきてくれてありがとう」「大好きだよ」といったように、子どもを尊い存在として受け容れ、温かな言葉で包み込んであげる感じです。


そうやって親から十分な愛情を注がれてきた子どもは自分に自信を持ち、堂々とした大人へと成長していきます。

そして何事にも積極的にチャレンジできる力と、物事を前向きに受け入れる力を手に入れることができるのです。

■自己肯定感を高めるには?

★ありのままの自分を受け容れよう★


自己肯定感を高めるには、まず「ありのままの自分を受け容れる」ことから始まります。

例えば「○○ができないからダメな奴だ」「人より劣っている」という思い込みも、そう考えてしまう思考回路も、すべて受け容れるのです。

自己肯定感が低い人にいきなり「前向きになれ」と言っても、思考回路がネガティブになっているから無理な話です。

まずは自分が「ダメな奴」と思っている自分も「自分はこうなんだ」という風に受け止めましょう。決して自分を責めるようなことはしてはいけません。

自分の考え方の癖に気づくだけで「ダメな自分」ではなくその考え方の癖をどう直そうかという風に考え方が変わります。

そして、その考え方の癖や自分がダメだと思っていることをアウトプットしてみましょう。

頭の中だけで自分の事を考えるだけで終わらせるのではなく、実際にメモやノートに書き出してみるのです。またはスマートフォンやパソコンに打ち出してみてもいいでしょう。

・自分に自信がない
・消えたい
・働きたくない
・自分の○○というところが嫌だ
・もっとポジティブになりたい

なんでもいいです。

思いついたことから片っ端に書き出してみてください。誰に見せるわけでもありませんから、どれだけネガティブなことでも構いません。

どんどん書き出してみましょう。同じ言葉が出て来ても、もう1度書いてください。自分が思いつかなくなるまで書き出してください。

もしネガティブなことばかりでも、それを出し尽くしてしまえばこころの浄化につながります。いずれネガティブな言葉が浮かばなくなって、自然とポジティブな方に思考が向き始めます。

「書くこと」によって、普段はあまり意識しない「潜在意識」の中から‶自己肯定感を高めるのを邪魔しているもの〟をひっぱりだすのです。

そして、それを思いつかなくなるまで書いて、最後は紙を破って捨ててしまいましょう。自分のネガティブな部分とのお別れです。

★自分責めはやめる★


自己肯定感が低い人は、自分の悪いところを見つけるのが大得意


「自分は○○もできなくてダメな奴だ」
「なんでいつも上手くいかないんだろう」


と自分のネガティブな部分にだけ目が行ってしまいがちです。

それは、視野狭窄に陥っているとも言えます。視野が狭くなると、一旦悪いところを見つけてしまうと芋づる式に自分の‶ネガティブな部分〟を連想してしまいかねないのです。

でも、どんな人でも「良いところが1つもない人」なんていません。もっと視野を広げて、自分の「良いところ」を探してみましょう。どんな小さなことでもいいです。

・対人関係は苦手だけど、あいさつはきちんとできる
・○○という仕事は苦手だけど、他の仕事で人よりできる部分がある
・困っている人を見ると放っておけない

これは筆者が思いついたことですので、他にもあなたの「良いところ」はいっぱいあるはずです。わざわざ悪いところばかりを掘り返さなくてもいいのです。

「自分責め」はやめましょう。自分が苦しくなるだけです。

自分のことを「前向きに」とらえてみてはいかがでしょうか?

たとえば何かにチャレンジしなければならないとき「自分にはできない」と最初から逃げ腰になるのではなく「やってみればできるかも」と‶肯定的な言葉〟に置き換え、思い切って取り組んでみるのです。


「自分にはできない」と思っているとその不安で頭がいっぱいになり、本来のあなたならできることでも不安や恐怖のせいでミスを犯してしまうかも知れません。

でも「やってみればできるかも」と肯定的に取り組めば、自然とポジティブな気持ちになり、やる気が出て結果的にうまくいく、ということもあるでしょう。

「自分には無理」と最初からあきらめてしまうのではなく「チャレンジしてみよう」と前向きな姿勢で取り組めば、きっと結果はいいものになるはずです。

そして、その成功体験がもとになって自分に自信が付きます。自信がつけば自分のことを肯定的に見られるようになり、さらにプラスの効果が期待されます。

どんどん「何かに挑戦しよう」という気持ちがわいてくることでしょう。

「自分を肯定的に見る」「自分責めをしない」というのは、自分に自信がつく第一歩。

今までのように狭い視野で「自分の悪いところ」ばかり見ていたら、このように「成し遂げる力がある自分」には目が向かないでしょう。もっと、広い視野で自分のことを見つめ直してみてください。

★ストレスを上手に発散する★

あなたには誰に気を遣うこともなく、リラックスして過ごせる場や会うと元気をもらえる人、持っていると安心できる物がありますか?

例えば、静かでゆったりとした音楽の流れているカフェや、一人でくつろげる部屋など。物で言うと、いい香りのするアロマオイルやふかふかの毛布、肌触りのいいブランケットなど。

自己肯定感の低い人はどうしてもネガティブに物事をとらえてしまう傾向にあるので、ストレスもたまりやすいのです。そのため、その日に受けたストレスはその日のうちに発散してしまうことが必要となってきます。

そこで「自分なりのストレス発散法」を見つけておくことがポイントです。前述したように静かな音楽の流れるカフェに行って温かいミルクティーを飲んだり、ふかふかの毛布にもぐりこんで癒されたりと ‶セルフケア〟を行っていくことです。

肩書や役割から解き放たれる、自分だけのリラックスできる時間を持つこともこころに余裕を持つために大事な要素となります。こころに余裕があれば次の日を前向きに過ごせる糧となってくるのです。

セルフケアを積極的に行っていけば、精神的にも安定し、毎日が楽しく過ごせるようになります。日々のストレスを上手に発散していけば、思考回路も自然とポジティブな方向へ向かっていきます。

また睡眠をたっぷりとることや、運動、趣味に没頭することも大切なことです。セルフケアを通して自分をいたわり、自分という存在を大切にしていくことによって、自己肯定感も高まると思います。

★1日の終わりに「できたこと」を思い出す★


自己肯定感は、成功体験を重ねることによって高まっていきます。そのため、1日の終わりに「その日に自分ができた(成功した)こと」を思い浮かべたり、手帳などに書き出したりすることで、自分の成長が目に見えるようになります。

自己肯定感の低い人は「できたことなんてあるだろうか」とネガティブにとらえてしまうかも知れませんが、大抵の人は1日に1つは何らかのことで成功しているのです。

例えば
・明日までにまとめて、と言われた資料を今日中に終わらせた
・いつも親任せだった朝ご飯を作ることができた
・休日だったが早起きして、溜まっていた洗濯ができた

などちょっとしたことでいいのです。

・今まで○○を苦手としていたけれど、今日はそれができた
・普段話さない同僚にもきちんとあいさつができた
・人と話すのは苦手だけど、今日は会話の輪に入れた

など自分自身が勇気を出してやったことでももちろんOKです。

それを毎日寝る前に思い出して書き出しているうちに「自分はこんなにもたくさん成功体験をしているじゃないか!」と自分でもびっくりするくらいの量になると思います。

そして、それを繰り返し見直しているうちに「自分にもこんな良いところがあるんだな」「ここはこれからも続けていきたいな」などといったものが見つかり、そこを評価していくことによって自己肯定感のアップにもつながるでしょう。

■自己肯定感まとめ

自己肯定感はものごとに対してポジティブに受け止めるか、ネガティブにとらえるかによっても高い、低いが決まってきます。

肯定的にとらえられれば自己肯定感は高くなる傾向にありますし、否定的にとらえれば低くなる可能性もあります。

その人の‶考え方の癖〟によって変わってくることもあると思います。自己肯定感を高めたかったら、今までの「ネガティブな自分」にお別れをして、何事もポジティブに、前向きにとらえられるよう、セルフケアをしっかり行いつつ、徐々に‶自己肯定感の高い人〟を目指してほしいと思います。

筆者も自己肯定感が低い方ですので、工夫を凝らしつつ何事もポジティブにとらえられるように頑張っていきたいと思います。筆者と同じような方も「自己肯定感の高い人」になれるよう、一緒に頑張りましょう!

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。