今回のテーマは「感情のリセットの仕方」について!
仕事であまりうまくいかなくて、イライラや焦りを覚える。人間関係が上手くいかなくてなんだか嫌になってくる。上司の顔を見るのも嫌になってくる。
そんなネガティブな要素を取り除きたい!と思ったときに使えるのが感情を「リセット」することです。考え方をネガティブなものからポジティブなものに切り替える、ちょっと考え方の方向を変えてみる。自分の思い込みに気づく。
そんなことを繰り返しているうちに、感情が「リセット」できて、気持ちよい社会生活を送れるようになります。そんな感情を「リセット」するためのちょっとしたポイントを紹介していきたいと思います。
■「苦しい」をリセットする~脳内物質が関連⁉~
「苦しい」と「楽しい」正反対の感覚ですね。この正体は何でしょうか?
近年の脳科学の研究で、「苦しい」「楽しい」といった感情は心の変化であると思われていたのが、実は脳内物質やホルモンの増減と関係するとわかってきました。
言い換えると「感情は脳内物質、ホルモンの変化だ」ということです。
「苦しい」状態では‶ノルアドレナリン/アドレナリン/コルチゾール〟といった3つのホルモンが、逆に「楽しい」状態では‶ドーパミン/エンドルフィン/セロトニン〟の3つが分泌されるのです。
このうちドーパミンは「幸福物質」とも呼ばれ、目標を達成したときや願望が叶った時などに分泌されます。
また「これから楽しいことがある!」というときにも分泌されているのです。
そして「楽しい」に関連するもう一つのホルモンが「エンドルフィン」です。
「エンドルフィン」の語源は「endo(内側)」+「morphine(モルヒネ)」です。
エンドルフィンは「体内で分泌されるモルヒネ」を指し、苦痛も和らげてくれるため、この名がつけられました。本来のモルヒネの6.5倍の鎮痛効果があるとされています。
そして、これが分泌されると気分が高揚したり多幸感を味わえるという効果もあります。
ドーパミンやエンドルフィンは「興奮するような楽しさ」に関係していますが、セロトニンは「気持ちがいい」「リラックスできる」といった「落ち着いた楽しさ」を感じるときに分泌されるといわれています。
また感動して泣いてしまった時にも分泌される物質です。
このようにさまざまな脳内物質が「感情」や「気分」を決定づけているのです。これを知っておくことが、感情を「リセット」することへの最初の一歩です。
■ストレスとは?~変えられないものは「過去」と「他人」~
「ストレスとは?」と言われても、それが適度ならばからだには良い効果をもたらし、あまりに溜まるとからだに悪いものとなってしまうとはわかっていても、その正体はなかなかうまく説明できませんよね。
厚生労働省の定義を見てみると
‶外部からの刺激などによって体の内部に生じる反応のこと。その原因となる刺激
(ストレッサー)とそれに対する私たちの心身の反応(ストレス反応)とを合わせて
ストレスと呼ばれることもある〟
とされています。
ストレスを感じる状況の例を挙げてみますと
・上司の○○課長が嫌味でストレス
・職場の人間関係がうまくいかなくてストレス
・もうすぐテストで勉強ばかりしなくてはいけなくてストレス
など人は様々な状況でストレスを感じます。
ストレスによる反応を問題別にわけると
・行動の問題……暴飲暴食、ギャンブルなど
・体の問題……めまいや頭痛など
・心の問題……抑うつや不安、イライラなど
の3つにわけることができます。この3つのうち、どの問題が自分に起きているかを把握しておくと「この症状が出ているということは自分はストレスを感じているのだ」と早く気付くことができます。
それにより、自分なりのストレス解消法を用いて健康な心身でいることができます。
★「変えられない」ストレス★
「ストレス」の中で最も大きな割合を占めるのが「変えられないものを変えようとする」ことです。
今あなたが悩んでいることは、解決可能なものですか?そしてそれは何らかの力で‶変えられること〟ですか?
もし‶変えられない〟ことを‶変えよう〟としているのなら、残念ながらそれは無駄に体力や気力を使っているだけで、大抵のものは変わりません。
‶変えられない悩み〟とは「過去」と「他人」です。
今までに起きてしまったこと(過去)は上書きなどできませんし、他人の考え方や性格を変えようとしても本人が「変わろう」と思わない限りなかなか難しいものです。
しかし、過去は変えられませんが、「未来」は自分の努力次第で変えることができます。「他人」は変えられない可能性が高いですが「自分が」変わることはできます。
変えられないものに縛られて立ち止まってしまうより、変えられる問題をどのように解決していくかを考えることが有効な時間の使い方です。
■仕事のミスでも感情をリセット!
もし、あなたが今自分の仕事でミスをして、パニックになっているとしましょう。
人間、ミスをしてしまうと少し落ち着けばすぐ解決できる問題でも、大騒ぎしてしまいがちなところがあります。でも、起きてしまった「過去」は変えられません。
そこで感情を「リセット」するのです。
「この程度のこと大したことじゃない」「死ぬほどのミスじゃないんだから大丈夫」
とまずは自分のこころを落ち着かせましょう。まず、その問題が自分自身だけで解決できる問題かどうか分析します。
もし今までの経験や知識で対応できそうなことなら、気持ちを落ち着かせて、もう一度手順を確認しつつ、最初からやり直してみましょう。
ここでの心構えとしては「また失敗したらどうしよう」と悪い方向へ考えるのではなく、「なんとかなる」と信じること。負の感情を「リセット」です。
「また失敗したら」などと考えていたら、自分の本来の力の半分も出ないと思います。「自分ならきっとできる」と信じることです。つまり「動じない自分」でいること。
動じない人はこころの器が大きいです。ちょっとしたことでは騒いだりしません。
「今回はミスをしてしまったけど、落ち着いてやれば次こそはきっとうまくいく」
という精神で「いま、出来ることに集中する」のです。もし、自分一人では解決できそうになかったら、上司や同僚にアドバイスをしてもらいましょう。
ここで
「できない奴と思われるんだろうな」
などというネガティブな感情を抱く必要はありません。ここでも、そんな思い込みを「リセット」しましょう。
「何でも完璧にできる」人間なんてこの世に存在しません。それよりも、曖昧な知識で一人でやり直し、また失敗する方がよほど恥ずかしいですし、それこそ「できない奴」「迷惑な奴」と負のレッテルを貼られることになります。
聞くは一時の恥。
挽回するためには、一人でできなかったら、同僚や上司の手を借りてでも質のいい結果になるよう一生懸命取り組む姿勢が大切です。
■人間関係を「リセット」する
先ほど「他人」は変えられないと言いましたが「人間関係」は変えていくことができます。人間関係をよりよいものにするには、まず〝相手を肯定する〟ことです。
初対面の相手の印象が悪かったとしても「この人は嫌な人だ」などと負のラベリングをしないことです。なぜならそれは「先入観」だからです。
話してみると意外といい人だったり、自分と波長が合う、なんてこともあり得ます。第一印象だけで決めつけてはいけません。
★初頭効果とは?★
しかし、人は他人を「好き」「嫌い」で判断しがちです。人間の「快」「不快」は脳の偏桃体というところで判断されます。
しかも、瞬間的に。そのため、初対面の人が自分と合わなさそうだな、と思った瞬間に「嫌い」と判別されてしまうのです。これを心理学用語で「初頭(しょとう)効果」といいます。
初対面の影響がそれほど大きいということです。相手の内面を深く知ることもなく、瞬間的な印象でネガティブなラベリングをしてしまうのです。
でも「好きではない=嫌い」とは限りませんよね。
「嫌いではないけれど、好きでもない」いわゆる「ふつう」の人もいるのではないでしょうか?
そこで、人を「好き」と「嫌い」に分けてしまうのではなく「ふつう」というスペースも作ってみてはいかがでしょうか。
「好きとは言えないけど、特に害もないし、まぁふつうに入るかな」と思った人がいれば、それはあなたの脳が勝手に「嫌い」の方に分別してしまっただけであって、それは脳のエラーなので、たんなる勘違い!
「嫌い」と思っていた人をいきなり「ふつう」に変えるのは難しいかもしれませんが、思い込みに惑わされずその人のことをよく知ってみることによって、その人への印象が変わるかもしれませんよ。
★「嫌い」な人対策法★
上に挙げたように「嫌い」を「ふつう」に変えることで人間関係が好転する場合があっても、「どうしても好きになれない!」という人も何人かはいると思います。
嫌いな上司などの悪口や陰口を同僚と言い合うとスッキリするかもしれませんが、仲間同士で悪口を言い合っているうちに他の人から「こんなこともあったらしいよ」などとさらに悪い情報が入ってきて「嫌い!」がエスカレートする可能性もあるのです。
その場では「言いたいことを言ってスッキリした」となっても、悪口の対象であった人の印象は悪いものになる可能性が高いです。
そのため、どうせ人の事を言い合うのだったら「よいところ」を言い合おう、というのが筆者からの人間関係改善のための提案です。
嫌いな相手の「良いところ」「認められるところ」を探してみましょう。
「○○さんは仕事が遅くて困る!」というところは「仕事が丁寧」という風に言い換えれますね。
「上司の□□課長はいつも厳しい……でも仕事をやり遂げた時にはきちんと評価してくれる」というプラスの面を見つけることもできます。
そうすれば、自分の‶相手への印象〟も変わってくると思います。
「こんな嫌な面もあるけどまんざらじゃないな」と思えたのならば、少しは「嫌い!」という思いが「ふつう」に変化したのでしょう。
相手に「嫌い!」という感情を抱いていると、隠しているつもりでも自然とそれが伝わってしまうものです。
「嫌い!」と思いながら付き合っていれば、それが相手に伝わり、相手もあなたにマイナスのレッテルを貼ってしまうかも知れません。そうすると人間関係は泥沼になりますね。
それを防ぐためにも「嫌い!」と思ってしまう相手の良いところ探しをして、一つでもいいので相手の良いところを見つけ、無駄な嫌悪感でこころを汚さないようにすることです。
そうやっていれば、いずれ「嫌い!」と思っていた人とも上手くやっていける日が来ることでしょう。
人間関係は‶鏡〟です。
自分の良い面を見せていれば、相手も良い面を向けてくれるようになります。そうすれば、険悪な人間関係をリセットでき、お互い気持ちのよい付き合いを続けていけることと思います。
■感情をリセットまとめ
以上、様々な「リセット方法」を紹介してきましたが、あなたの参考になるものはありましたか?
少し考え方や物の見方を変える、自分のこころの持ちようを変えるだけで、物事がうまく進むことは多々あります。
何か負のスパイラルに入っているなぁと思ったら、ぜひ前述のリセット方法を試してみてください。
いきなり効果が出なくても、少しずつ自分のこころや周りの人、環境に変化が出てくるはずです。健康なこころとからだを維持する方法として、感情を「リセット」してみることをお勧めします。
著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。