「福祉的就労」というのをご存じですか?形態としては、主に「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」「就労移行支援事業」の3つに分類されます。これらは障害者の方が障害に対しての支援を受けながら、一般就労に向けての知識や能力の向上を目指していく施設です。今回はそれぞれの違いについてご説明したいと思います。
■3つの形態の主な違い
上にも書きましたように、「福祉的就労」の形態としては以下のとおり主に大きく3つに分けられます。
・就労移行支援事業
・就労継続支援A型事業所
・就労継続支援B型事業所
まずは、「就労移行支援事業」について説明します。
「就労移行支援事業」というのは、一般企業への就職を希望する人に向けて働く上でのスキルや就職サポートの提供、職場定着のための支援などを行う事業のことです。
ただし利用期間は原則2年と定められており、2年以内に企業に就職する必要があります。 期限が限られているため、ある程度障害の症状が落ち着いている方の利用がおすすめです。
次に「就労継続支援A型事業所」についてです。こちらでは、障害がある方が施設と雇用契約を結び給与をもらいながら一般就職にむけて訓練していきます。
こちらを利用するには障害者手帳または医師の意見書が必要となります。それに加えもう一つ必要なものとして「サービス受給者証」があります。市町村にサービスを利用する旨の申請をし、発行してもらいます。
働きたい事業所が決まったら、ハローワークに行き、紹介状と必要な書類をもらって面接を受けます。合格すると、次は「暫定期間」というお試し期間のような期間に入ります。
おおよそ2か月ほど経ち、問題がなければ晴れて正式採用です。
最後に「就労継続支援B型事業所」についてです。
B型事業所とは、通常事業所で雇用困難な障害者の方が施設と雇用契約を結ばず、自分のペースで働いていく場になります。
こちらで働く手順としてはまず市町村に申請をし、「どんなサービスをどのような形で利用するのか」というサービス等利用計画案を作成します。
その後はA型事業所で働くときと同様に、受給者証を発行してもらい、働きたい所の面接を受け、合格したらその事業所で訓練をする、という流れになります。
■それぞれ魅力、利用する際に頭に入れておきたい点
ここまで3つの就労形態について述べてきましたが、それぞれメリットやデメリットもあります。自分に合った就労形態を見つけるにはメリット・デメリットの見極めが重要なポイントとなってきます。
まずは「就労移行支援事業所」についてです。メリットとしては、ただ就職のためのスキルアップを図るだけでなく、自分の苦手な場面について学ぶことが出来たり、個別支援計画に基づいて専門職が個々の障害についての自己理解を助けてくれたりするという部分もあります。
事業所によっては「賃金が支払われない」ということや、雇用契約は結ばない、利用料があるなどのデメリットも存在することがあります。
そして利用期間が原則2年間と定められており、その間に一般企業などへの就職を目指す必要があります。
次に、「就労継続支援A型事業所」についてです。
A型事業所では、雇用契約を結んで働くため賃金が発生します。最低賃金が保障されるので、最低賃金またはそれ以上の収入を得ることができます。
こちらも事業所にサービス管理責任者や生活支援員などの専門職が配置されますので、悩みがあって相談したいことがあったり、体調を崩したときなどに臨機応変に対応してもらえる、そして利用期間の制限がないのが大きなメリットです。
デメリットとしては、最低賃金以上が保障されているため、B型事業所などより作業が複雑で難しい場合があること、また雇用契約によって就労日数なども決められているため、簡単に休むことができないということがあります。
最後に、「就労継続支援B型事業所」についてです。
B型事業所では雇用契約を結ばないため、賃金ではなく「工賃」として給料が支払われます。A型事業所ほど難しい作業はなく簡単な作業を短時間から自分のペースで始められるというメリットがあります。
また、A型事業所同様利用期間の制限がないというのも良い点です。自分のペースで働けるので、同じ事業所で安定して長く働く、ということも期待できます。
ただ、自分のペースで働けるというのはメリットですが、作業が単純であったりする分工賃がA型事業所より低いです。
■どういった人がそこで働くのか
3つある就労形態の中で、自分に一番合った就労形態を見つけることが大切です。
そこで、どの事業所にはどのような人が向いているかというのをご紹介します。
まず、「就労移行支援事業」です。
利用の対象としては、「精神、知的、身体障害のある方や一般企業等への就労の意思のある人」となります。また、利用者の中には病院のデイケアや生活支援を利用しながら通う方もいらっしゃいます
次に、「就労継続支援A型事業所」ではどういった方が働かれているのでしょうか。
対象としては、
・一般企業等へ就職することが難しく、雇用契約に基づき、継続的に就労することができる人
・就労移行支援事業を利用したけれど、雇用に結びつかなかった人
・特別支援学校を卒業したけれど、雇用に結びつかなかった人
・就労経験はあるが、現在無職である人
などとなります。
最後に、「就労継続支援B型事業所」ではどうでしょうか。
対象としては、次のいずれかを満たす人を雇用の条件としています。
・就労経験があり、年齢や体力の面で一般企業での就労が難しくなった人
・50歳に達している人
・障害基礎年金1級を受給している人
・就労移行支援事業所などによるアセスメントで、就労面の課題を把握されている人
などとなります。
B型事業所で働くには就労経験が必要となってきますが、就労経験がない方(50歳以上の人や障害年金1級受給者以外)には「就労アセスメント」というものが行われます。
ただ、これはB型事業所への合否を決めるアセスメントではなく、利用者と事業所のニーズを一致させるために行われるものです。
どの事業所で働く際も、精神・知的・身体障害に対する理解を持ったスタッフがきちんとサポートしてくれますので、自分に合った事業所の形態を選んでください。
■就労サービスのまとめ
3つの就労形態についてまとめましたが、いかがでしたでしょうか。自分の障害の特性、働くペース、働きたい職種などに合わせて事業所選びをするのも大切です。
実際に見学に行ってみたり、体験することによって長く安定して働き続けることができる事業所というのを見つけられるといいと思います。
いずれは「一般就労をする」という目標に向かって事業所のスタッフなどの力なども借りながら、一歩ずつ、確実に前に歩んでいきましょう。
著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。